神名解説
 
 〈一 高天原タカマノハラの神カミ〉
 
 遥かに遠い昔、この世界の始まりのとき、天と地がまだ渾沌コントンとして混じり合い、
 その見分けが付かなかった頃のことである。
 天上の世界である高天原タカマノハラと云う処に、神々が次々と現れた。
 
天之御中主神アメノミナカヌシノカミ(N天御中主尊アメノミナカヌシノミコト)
あめのみなかぬしのかみ(独神ヒトリガミ)
 天の中心にあって、この宇宙を統一し主宰ツカサドる神と云う。
 
高御産巣日神タカミムスビノカミ(高木神タカギノカミ)(N高皇産霊尊タカミムスビノミコト)
たかみむすひのかみ(独神ヒトリガミ)
 この宇宙の、万物の生成を主宰ツカサドる神と云う。
 
神産巣日神カミムスビノカミ(N神皇産霊尊カムミムスビノミコト)
かみむすひのかみ(独神ヒトリガミ)
 この神も、宇宙の万物の生成を主宰ツカサドる神と云う。
 
宇麻志阿斯訶備比古遅神ウマシアシカビヒコヂノカミ(N可美葦牙彦舅尊ウマシアシカビヒコヂノミコト)
うましあしかびひこじのかみ(独神ヒトリガミ)
 葦の芽のような生命力を持った立派な神と云う。
 
天之常立神アメノトコタチノカミ(N天常立尊アメノトコタチノミコト)
あめのとこたちのかみ(独神ヒトリガミ)
 天上の世界が永遠に栄えるように留トドまっている神と云う。
 
 以上に挙げた神々は、この地上の神とは別であって、天の神(別天神)である。
 次にこの地上からも神々が現れた。
 
国之常立神クニノトコタチノカミ(N国常立尊クニノトコタチノミコト)
くにのとこたちのかみ(独神ヒトリガミ)
 この地上の国が永遠に栄えるように留まっている神と云う。
 
豊雲野神トヨクモヌノカミ(N豊斟渟尊トヨクムヌノミコト)
とよくもののかみ(独神ヒトリガミ)
 天と地の間に雲のように漂っているこの地上が、次第に固まってきて、広い原野にな
 って行く、と云う意味である。
 
宇比地邇神ウヒヂニノカミ(N泥土煮貧ウヒヂニノミコト)
うひじにのかみ(男神)
妹イモ須比智邇神スヒヂニノカミ(N沙土煮尊スヒヂニノミコト)
すひじにのかみ(女神)
 この二柱の神は、それぞれに泥と砂のことを現しており、初めは雲のように漂ってい
 たこの地上も、ようやく固まってきたことを意味している。
 
角杙神ツヌグヒノカミ
つのぐひのかみ(男神)
妹イモ活杙神イクグヒノカミ
いくぐひのかみ(女神)
 それぞれに角ツノと杙クイのことを現しており、この地上の泥や砂の中から、角や杙のよ
 うに万物の生命が生まれたことを意味している。
 
意富斗能地神オホトノヂノカミ(N大戸之道尊オホトノヂノミコト)
おおとのじのかみ(男神)
妹イモ大斗之弁神オホトノベノカミ(N大苫辺尊オホトマベノミコト)
おおとのべのかみ(女神)
 それぞれに、万物生命がこの地上に住めるようになったことを意味している。
 
淤母陀琉神オモダルノカミ(N面足尊オモタルノミコト)
おもだるのかみ(男神)
妹イモ阿夜訶志古泥神アヤカシコネノカミ(N惶根尊カシコネノミコト)
あやかしこねのかみ(女神)
 それぞれに、この地上に住めるようになった万物の生命の、驚きや喜びを意味してい
 る。
 
伊邪那岐神イザナギノカミ(N伊弉諾尊イザナギノミコト)
いざなきのかみ
妹イモ伊邪那美神イザナミノカミ(N伊弉冉尊イザナミノミコト)
いざなみのかみ
 この神の名ミナは、男の生命と女の生命が、お互いに誘い合って現れたと云う意味であ
 る。
 
 以上の地上に現れた神を「神代七代」と云う。
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