06 神職
 
                   参考:神社新報社発行「新編神社実務提要」
 
〈名称及び定数〉
 神職の名称は、宮司、権宮司、禰宜、権禰宜と一定し、職階もその順序に従ふ。
 特殊な場合に任命される宮司代務者といふ名称は、宮司のうちに包含される性質のも
のであり、権宮司は別表神社のうち特に統理の承認を受けた神社にのみ置くことができ
る特別の名称である。
 禰宜以上の神職の定数は、各々一社につき一人と限定され、権禰宜の定数はその神社
の宮司が、神社の実情を勘案して定めるのである。例外としては、特別の事由に基いて
特に統理の承認を受けた場合に、前記以外の名称を設け、又定数の特例を設けることが
できる。島根県の出雲大社において宮司と権宮司との間に教統を置き、大阪府の住吉大
社において権宮司と禰宜の間に正禰宜を置き又定数についても例外を認められてゐる若
干の神社がある。
 
 神社によっては、権禰宜の下に出仕等の名称で、雇員期間としての職名を置いてゐる
が、神職とはみなしてゐない。ただ、階位を有してゐれば、将来神職になった場合、神
職年数に加算する対応をしてゐる。
 永年神職として奉仕し、人格見識共にすぐれた功績顕著な者が六十一歳以上の年齢に
達してから神職を退いた場合、後任宮司の具申によって、特に最終奉仕神社の名誉宮司
の称号を授けられることがあるが、既に神職を退いた者であるので前述の神職の範囲に
含まれない。名誉宮司は要するに、一神社にだけ認められる功労者の優遇制度であって、
退職当時の身分に相応する服装を着用してその神社の祭祀に列することができる外、そ
の神社において終身特別な待遇を受け得るのである。
 
〈任務〉
 神職は神社といふ宗教団体の職員である。
 宮司は、職員の長として神社の宗教団体としての活動を総管し、宮司以外の職員は上
級職員の指揮を受け、宮司と共に奉務神社を根拠として神社神道に基く宗教活動を行ふ
ことを任務の第一義とする。又宮司は即ち宗教法人の代表役員であり、宮司以外の神職
は兼ねてその法人の職員である。従って宮司は法人運営の執行権者としての任務、他の
神職は法人の事務に従事するといふ任務を第二義とする。
 ここに第一義又は第二義と区別するのは、事の軽重又は前後を指すのではなく、楯の
各半面を指す謂に外ならない。即ち神職たる者の任務は神前の奉仕のみをもって事足る
としないことを表現したのである。神職が広汎な知識を備へなければならない理由の一
つはここにある。
 
〈資格〉
 神職に任命されるには一定の資格を要する。その資格を階位といふ。
 階位は浄階、明階、正階、権正階、直階の五階等に分れ、階位検定委員会で、候補者
の性行、経歴、試験の成績等により検定し適格者には統理が階位証を授ける。
 明階、正階及び権正階の検定試験は、筆記及び実地について行ひ、明階の試験は毎年
一回神社本庁において、正階と権正階の試験は毎年一回以上神社本庁と事前に定められ
た神社庁において実施する。
 明階、正階及び権正階の試験は、学科目毎に検定し、合格した学科目は五年間その効
力が保留され、第二回目以後の試験において免除され、又受験者の学歴によっては、最
初から試験を免除される学科目もある。
 浄階は資格要件を具備する者について、階位検定委員会で選考によって検定し、明階
以下の無試験検定は一定要件を備へた者について行ふ。
 試験は主として神職に適する学力を検定するのであるが、神職たる者の要件は学力を
有することのみをもって事足るとはいひ難い。即ち神明奉仕及び一社運営の実務体験を
併せ有することを要する。それ故に試験検定又は無試験検定で権正階以上に合格しても、
所定の神務実習に服したことが照明された場合に、本人の申請によって先に合格した階
位が授与されるのである。
 
 神職養成機関には、高等課程と普通課程の二種類がある。高等課程は、神道学科又は
神道学専攻科を置く大学(短期大学は除く。)に限り置くことができ、國學院大學と皇
學館大學の両大学がある。両大学で所定の課程を修了した者は、明階を無試験検定で授
与される。
 普通課程は、神社及び神社庁等が経営する神職養成機関又は大学に限り置くことがで
き、現在、全国に七ケ所ある。普通課程の神職養成機関には、一年制の予科を置くこと
ができるが、予科以外は二年制である。普通課程を終了した者は正階、第一学年を終了
した者は権正階、予科を終了した者は直階を夫々無試験検定で授与される。
 この他、正階については、高等課程を置く神職養成機関で行はれる階位検定講習会を
終了した者に対して、又権正階と直階については、神社庁又は神職養成機関で行はれる
階位検定講習会を終了した者、並びに神職養成通信教育実施機関において所定の課程を
修了した者に対して、夫々無試験検定で授与される。
 
〈身分〉
 神職には職階、資格とは別に身分の制度がある。
 神職身分は特級、一級、二級上、二級、三級、四級の六等級に分れ、本人の神職とし
ての経歴、地位、人格、功績等に基いて決定される。その概要は次の通り。
 統理、神宮の大宮司の職に在る者及び表彰規程第二条第二号の表彰を受けた者は特級
とし、神宮小宮司の職に在る者、表彰規程第二条第一号の表彰を受けた者及び浄階を有
する者で身分選考委員会を経た者は一級とし、神宮禰宜の職に在る者、別表神社の宮司
又は権宮司の職に在る者及び二級神職、以上の者から身分選考委員会の選考を経た者は
二級上とし、神宮禰宜の職に在る者、別表神社の宮司又は権宮司の職に在る者、及び三
級神職で身分選考委員会の選考を経た者は二級とし、神宮権禰宜又は宮掌の職に在る者、
及び権正階以上の階位を有する者は三級とし、その他の神職は四級の身分である。
 身分のうちには属人的身分と、属職的身分とがあり、特級の統理又は神宮大宮司、二
級のうち神宮禰宜又は別表神社の宮司及び権宮司等は後者に属し、その職を退いた場合
はその職に就く前の身分に降ることになる。但し例外として、条件によって退職当時の
身分を終身保有することも認められてゐる。
 
 身分と階位とは一応別個の制度であるが、一級以上は原則として浄階、二級上及び二
級は正階以上を有する者でなければその地位に任命又は選考されない。
 身分の表示は祭祀の服装による。その著しいものは、袍ホウ及び袴の色目に表はれ、正
装において男子神職の特級及び一級は黒袍、二級上及び二級は赤袍、三級及び四級は緑
袍を用ゐ、その袴についても特級は白固織有紋、一級は紫固織有紋、二級上は紫固織文
藤の丸共緯、二級は紫平絹無紋、三級以下は浅黄平絹無紋を着用する等種々の区別があ
る。女子神職の服制は男子のそれとは自ら相違するが、袴の色目については、男子の場
合と同様である。
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