06a 神職
 
〈進退〉
 ここに進退といふのは、任免、給与の範囲とする。
 任免は統理の権限に属する。但し、別表神社の宮司及び権宮司以外の神職の任免に関
する事務の大部分は、神社庁長がその代行を委任されてゐる。
 神職に任命されるには、次の基本条件を充たした者でなければならない。
一、別表神社の宮司及び権宮司は明階以上、同禰宜は正階以上、一般神社の宮司及び別
 表神社の権禰宜は権正階以上、一般神社の禰宜以下は直階以上、宮司代務者は別表神
 社では正階以上、一般神社では権正階以上の階位を有すること。
 但し一般神社の宮司代務者にあっては、神社庁長において審査の上、特別の事情があ
 ると認めた時は、条件を付して直階を有する者を任命することができる。
二、神職は単なる職業でなく、その神社の氏子崇敬者の代表的、模範的信仰者として常
 時神前奉仕をする宗教的使命を持つ以上、異宗教信者であることは許されない。即ち
 純一な神社神道信奉者であること。従って異宗教信者である場合は、任命に先立って
 改宗の誓約を求めるのである。
三、神社本庁規程に定める各種の条件に抵触しないこと、また宗教法人としての社会的
 信用性において欠陥のないことを要する。特に宮司又は宮司代務者は、法人の代表機
 関となる関係上、法定の欠格条件にも抵触せず、その他規程で定める各種の条件に抵
 触しないことを要する。
 
 宮司の任命は、その神社の責任役員の具申によって行ふが、事情によっては神社の役
員の同意を得て行ふ。統理は、具申された候補者が適当でないと認めたときは、更に他
の候補者を具申することを求める。
 宮司が欠けたときは、三十日以内に後任の宮司若しくは宮司代務者の任命について具
申しなければならない。それにも拘らず特殊な事情のために長期に亘り後任者の具申を
せず、又統理が示す候補者について同意もしないとき、又は責任役員の意見によって所
定の具申ができない事情があるときは、統理は神社の責任役員の意向に拘らず、三年の
任期を附した宮司を特任することがある。宮司又は宮司代務者は何れも法人の代表者と
なるのであるが、宗教法人に代表者を欠くこと一年以上に亘ると法人法第八十一条の規
定によって、その法人に解散を命ずる事となり、又代表者即ち総管者を欠く神社はとか
く弊害が生じ易いので、それらの重大支障を防止する目的で、この特任の制度があるの
である。
 
 権宮司以下の神職は、宮司の指揮を受けて職務に従事する性格上、権宮司以下の神職
の任命は、宮司の具申に基いて行はれるのである。但し、権宮司については特にその身
分を尊重し、慎重を期する関係上、その具申には神社の役員の同意を必要とする。
 神職は法定原因その他の事情によって当然その職を失ひ、又は願出により或は宮司若
しくは統理が規程の条項に照らして必要と認めた場合に免職される。又事情によっては
休職を命ぜられることがある。休職者はその身分地位に変りはないが職務に従事するこ
とができない。従って宮司の休職期間中は、当然宮司代務者を置かなければならない。
休職者は状況によって復職を命ぜられるが、復職を命ぜられず満一年を経過すると当然
退職となる。
 免職又は休職についても具申又は同意を要することは任命の場合と同様で、任命の場
合と異なるところは、本人の願出によらない免職は、その本人にとって不利益であるの
で事情等について極めて慎重精細に審査し、事情によってはその具申を却下する場合も
予想されることである。神職の一身に付き軽率な決定を避けるためである。
 
 表彰は表彰委員会で審査し、総裁がこれを行ふ。神職の表彰は功績状を授与される者
と、表彰状を授与される者との二大別があり、細別すると七種別がある。
 功績状を授与された者は、その種別によって同時に、一級又は特級の身分を取得し、
表彰状を授与された者は、その後の階位又は身分の昇進について有力な条件となる等の
特典がある。又特級の身分を有し最高の功績状を授与された者は、特に「長老」の敬称
を贈られる。本庁は長老に対しては種々の特別待遇をするが、就中著しいものは、長老
が神職を退いた場合にはその在世中年金を贈与することである。
 懲戒は庁規第五条に規定する職員の外、長老、名誉宮司に及ぶ範囲に対し、懲戒委員
会の審査を経て統理が行ふ。職務上の義務に違背し、又は職務を怠り若しくは信用を失
ふ行為がある者について宮司或は神社庁長からの具申のあった場合に行はれ、その情状
によって一戒告、二免職、三敬称、称号又は階位の取消等の処分が附される。懲戒によ
って免職された者は、その後二年間は神職になることができず又階位を取消された者は、
五年を経過した後でなければ、再び階位検定の申請をすることができない。
 
 神職は神社で欠くことのできない宗教上の職員である。従って神社はその使命観から
いへば、宗教法人として必ずしもその生活給与を問題にしないといへる一面はあるが、
他面神社の職員として、すべてを捧げて職務に従事する本務とするので、そこに社会通
念としても、神社が神職に対して給与をすべき意義があるのである。
 生活を捧げて専念奉仕する神社を一般に本務神社といひ、本務神社においては、その
神職に対して毎月俸給を支給し、本務神社の外に兼ねて奉仕する神社を兼務神社といひ、
兼務神社においてはその神職に対し報酬又は手当を支給することになる。
 神社では神職に対し所謂本俸に当る俸給又は報酬或は手当の外に、奉務手当、家族手
当、賞与その他臨時の給与をするのが通例であるが、そのうち俸給については規程をも
ってその標準額が定められてゐる。併し一社の経済又は神職としての奉仕の状況等によ
って必ずしもその規程に準拠できない場合のあるのが現在の実情である。
 神職に対する給与額の決定は、役員会で議決された予算の範囲内において一社の長た
る宮司が決定することが本則であるが、ただ宮司自身に対する給与額は役員会の決定に
待つことが穏当であらう。
[次へ進む] [バック]