03 神社本庁
 
                   参考:神社新報社発行「新編神社実務提要」
 
〈性格及び目的〉
 神社本庁といふ名称は、神社を包括する宗教団体の名称であり、且つ、その団体の中
央事務所の名称である。そしてその団体の基本的規範を「神社本庁憲章」といふ。
 神社本庁は、昭和二十一年二月三日に設立された宗教法人であって、同二十七年二月
二日に宗教法人法の規定に従って改めて設立された宗教法人法第二条第二号に該当する
宗教法人である。その法人の基本規則を「庁規」といふ。
 本庁は、宗教団体としては、憲法の保障する信教の自由の原則に基づいて、公共の福
祉に反しない限り自由に宗教的活動を行ふことができるのであるが、一般的に宗教活動
といふうちにも、神社を包括する団体として神社神道に基づく活動の範囲を逸脱すべき
でなとことはいふまでもない。
 同二十一年二月二日、神社の国家管理廃止と同時に宗教法人令の一部が改正され(勅
令第七十号)、神社が宗教法人として取扱はれることになった。神社本庁は、その前年
の十二月中に既にその受入態勢を整へ、法令改正の勅令が公布された場合、その翌日か
ら発足することになってゐた。その予定に従って二月三日をもって全国の神社を包括す
る所謂包括宗教団体として発足し、同月十四日に宗教法人設立の登記をしたのである。
そして同二十六年宗教法人法の施行に伴って、改めて宗教法人設立の手続きを経て、同
二十七年二月二日設立の登記を完了したのである。本庁が包括するものは、宗教法人で
ある神社であることを原則とし、現在包括する神社は約八万法人である。
 
 神社本庁は、神宮(伊勢神宮のこと。SYSOP)を本宗とし、神社神道に基づく宗教活動
をなし、又神宮及び神社を包括するために必要な業務を行ふことを目的とする。
 我が国の伝統的民族信念としては、「神宮」を最高至貴の神社として尊崇するのであ
る。本庁は、信仰的にはこの民族信念を骨子とし、神社神道に基づく宗教活動を行ひ、
一面包括団体として神宮その他単位団体即ち神社の興隆を図り、又これらの神社を包括
するために必要な活動をすることを主たる目的とする。
 神社を包括するために必要な活動を大別すれば、神社運営の事務的指導及び管理並び
に神社の社会的活動即ち教化活動の推進についての指導といふことができる。その教化
活動推進の意味において各神社庁には講師、教化委員、教誨師等が配置されている。
 
〈運営機関〉
 宗教法人「神社本庁」の運営機関は、総裁、統理の下にある執行機関、監査機関、事
務機関及び決議機関からなる。
 総裁は役員会で推薦し、評議員会の同意を得て推戴する本庁の象徴であって、表彰を
行ふ。統理は評議員会において選任し、神社本庁及び神社庁並びに神社の職員を統督す
る。
 執行機関としては、十七人の責任役員をもって組織する役員会がある。ここにいふ執
行機関とは、議決機関である評議員会に対して役員会を指すが、宗教法人法に則って厳
密に吟味すれば、代表役員である総長のみが執行機関であって、他の責任役員は役員の
一団中に在って議決する機能を行使するもので執行機関的議決機関である。これらの役
員は責任役員としては共同の責任を負ひ、本庁の事務を決定するものである。
 責任役員は理事が就任し、評議員会で神職及び総代等のうちから選任する。統理はそ
の役員会の議を経て理事のうちから総長一人を指名し、また総長の意見を聞いて副総長
を指名し、役員会は別に常務理事二人を互選するのであるが、それらの役員の任期は何
れも三年である。
 総長は代表役員であって対外的には本庁を代表し、対内的には本庁を統轄する。また
統理の命を受けて通常の庁務を総管し、統理に事故があるときは、その代理をする。
 副総長は、統理及び総長を補佐し、その命を受けて常務を掌理し、総長に事故あると
きは、その職務を代理する。
 常務理事は、常務を処理するについて総長の事務執行を補佐する。
 
 監査機関としては、評議員会で選任する任期三年の監事三人を置く。監事は民法の規
定に準じて本庁の財産の状況及び役員の業務執行の状況を監査し、監査した結果を評議
員会に報告し、又財産及び業務執行の状況について役員会に意見を述べることを職務と
する。本庁の財務及び業務執行については、役員会が全責任を負ふことは当然であるが、
評議員会に対しては第二次的に責任を負ふものは監事である。従って監事はしばしば財
産を監査する一方常に役員会に出席してゐる。
 
 事務機関は、一局二所の態勢で、事務総局として、本宗奉賛部、総務部、財政部、教
化部、渉外部の五部を、研修所として、教務室、研修室の二室を、教学研究所として、
研究室、調査室、資料室の三室を置き、各部(室)には部(室)長以下必要な職員を配
し、庁務を分担して処理させる。職員は参事、主事、録事その他に区分する。
 
 議決機関として評議員会といふ議会がある。評議員会は法定機関ではなく任意機関で
あって、定例会を毎年一回、必要に応じて臨時会を開く。神宮で選ばれた者、神社本庁、
神社庁で選ばれた神職、神職以外の神社の役員及び総代等定数約百六十八人、任期三年
の評議員をもって組織する。一神社庁で選出する評議員数は三人以上五人以内であるが、
四人以上を定数とする神社庁については、三年毎に統理がその数を指定する定であるの
で、予めは一定してゐない。
 評議員会で議決する事項は、原則として庁規の変更、規程の制定改廃、基本財産及び
特殊財産の設定及び処分、担保、借入、予算の決定、決算の認定、特別会計の設置その
外統理が必要と認めたことなどであるが、評議員は評議員会において本庁の事務につい
ては説明を求め又は意見を述べ、賛成評議員十人以上の賛成を得れば議案を提出するこ
とができるので、評議員会で討議する事項は相当広範囲であるといへる。通常の場合議
事は出席評議員の過半数で決し、庁規の変更及び評議員の除名については特に出席議員
の三分の二以上の賛成を得なければ議決することができない。
 評議員会の定例会は毎年一回であるので、審議未了の場合は会期を延長し、又その権
限に属する重要事案が発生した場合は、臨時評議員会を開かなければならない。併し、
通例の場合会期を延長し又は臨時会を召集する煩ひを避けるために、評議員会内に評議
員二十二人をもって組織する常任委員会を置き、或る事項については評議員会の権限を
これに委任し、或は統理において軽微又は緊急必要と認めたものを議決させる。但し、
常任委員会で議決した事項については次の評議員会に報告し承認を得なければならない
のである。
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