[神職奉務心得]
 
十八、社家制法
 
                 参考:神社本庁発行「神職奉務心得(資料集)」
 
               明治二年三月、京都府によって作成され、布達された
              もの。(『法規分類大全』第一編、社寺門 所収)
               維新政府は明治元年三月の祭政一致の布告で神祇行政
              の根本方針を明らかにした。「国家の宗祀」としての新
              しい神社制度は同四年五月に布告されるが、京都府の『
              社家制法』は、そこに至るまでの過渡的な性格を有する
              ものといへやう。
               尚、同年六月には民部官達により、他府県に於ても同
              様の社家制法や戸籍仕法書等を作成・整備するやう布達
              がなされてゐる。
 
一、御高札の旨、謹みて守るべきこと
一、神を敬ひ教を奉じ、つねに清浄を守り正直を宗とし非礼非法あるべからざること
一、神州の大義を明かにし、勤学怠らざること
一、祭祀礼典怠慢あるべからざること
   付、社頭の修補掃除等怠るべからざること
一、邪宗門ならびに怪異の教法厳禁は勿論なり。惣じて人道を守らずして神明の伽護カゴ
 あるべからず 祈祷呪詛ジュソをもって諸人を誑惑キョウワクするの類、堅く禁止のこと
   付、方位術数は神教の主意にあらず。心得違ひいたすべからざること
   付、不正誣妄フモウの講談停止のこと
一、みだりに供物クモツを貪り名聞利用を専とし神威を汚す等、もっとも相誡むべきこと
   付、神像の開帳は届なく取行ふべからざること
一、新儀に社宇の建立は停止なり 理リ至極シゴクの儀あらば願出の上免許すべきこと
一、社中の什宝、社納の物品、社領の地は、みだりに沽却分散を停止のこと
   付、古跡の森林社地の樹木はみだりに採り用ふべからざること
   付、社中の什物ジュウモツは願ひなく他国へ持参すべからざること
一、神職の者として百姓町人の公事クジ訴法にたづさはることは堅くこれを禁ず。境内借
 家等に差置く者といへども百姓町人は庄屋年寄の差配たるべきこと
   付、社人并に社家の家来下人にても百姓町人名前の地に住居するにおいては、年
   貢軒役ケンエキその他村内町内一統の諸役違背なく差出すべきこと
一、社内自宅とも不審のもの留め置くまじきこと
   付、法度にそむき逃げかくる者これあらば、速かに訴へ出づべきこと
   付、他国の社人その他にても、来宿する時は届出づること
   付、他国へ出る時は願ひいで免許を請ひ、往来券を持参すべし。家来下人も同断
 のこと
一、末社人は本社人の掟を守るべし。もし本社人に不法あるにおいては、末社人中より
 届け出づるべきこと
  右の条々これ社家永世の制法たり
  いささかも違背すべからざるものなり
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