05a 総社・官衙神・第宅神・神棚
 
[神棚]
神棚カミダナとは、屋内に棚を架して以て神祇を奉祀するものを云ふ。
抑も神祇を棚上に奉祀せし事は、遠く太古の時に在れども、之を庶民の屋内に設けしは、
蓋し伊勢両宮の神職若くは社僧等が、私に其の神符を天下に配付せし頃にあるべし、当
時之を称して大神宮の棚と云へり。
恵比須棚は、常に恵比須大国の神影を安置せるを以て其の名と為したるものにして、猶
荒神を奉安せる棚を称して荒神棚と云へるが如し。
此等の神棚は、多く之を室内に設くるものにして、また別に厨に設くるものあり、之を
荒神棚と云ふ。
荒神棚は、荒神即ち竃神を祀る所なり。世俗常に之に献ずるに松枝を以てし、時に或は
画鶏を貼して以て祈請の料に供することあり。
 
歳徳棚は、一に之を兄方エハウ棚とも称す。毎年正月暦家の謂ゆる明アキの方に向ひて高く棚
を架し、注連を引き、松竹を立て、供物燈火を献じて以て之を祀る所のものなり。
凡そ神棚は、触穢の時には必ず先づ之が戸を閉し、若くは白紙を貼して以て之を掩オホふ
を例とせり。
 
恵比須棚
めでたいをかけてぞ思ふ戎棚 つつた所がおもしろいとは(後撰夷曲集 一春 元信)
 
荒神棚
浅草の市のにはとりしめ縄を 荒神棚にかけろとやなく(千紅万紫)
 
年徳棚
としとくの棚をもかりにしつらへば 宿茶に似たるけふの大ふく(後撰夷曲集 之時)
 
家ごとに注連シメかざり縄くるとしの 徳隣ある神の棚かな(雅筵酔狂集 春)
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