15a 太占・亀卜・雑占
 
[雑占]
太占亀卜の外に雑占あり。琴占、巫鳥占、竃輪占、米占、飯占、夕占、辻占、石占、足
占、橋占、歌占、三角柏占の如き是なり。
而して、神前にて籤を探ることも、また一種の占なれば、此尾に附載し、此余の雑占は
皆方技部に挙げたり。
 
米占
きねがとるそのくましねに思事 見つてふかずをたのむばかりぞ
(権中納言俊忠卿集)
 
夕占
夕卜ユフケにも 占ウラにも告ノレる 今夜コヨヒだに 来まさぬ君を 何時イツとか待たむ
                               (萬葉集 十一)
 
事霊コトダマの 八十ヤソの衢チマタに 夕卜ユフケ問ふ 占ウラ正マサに謂ノれ 妹に相アはむよし
玉桙タマボコの 路ミチ往き占ウラに 占相ウラナへば 妹に逢はむと 我れに謂ノりつる
相はなくに 夕卜を問ふと 幣ヌサに置くに 吾が衣手は 又ぞ続ツぐべき
夜占ユフケ問ふ 吾が袖に置く 白露を きみに視せむと 取れば消ケにつゝ
                               (萬葉集 十一)
 
木の国の 浜によると云フ 鰒珠アハビタマ 拾ヒりはむと云ひて 妹の山 勢セの山越えて 
行きし君 何時イツ来まさむと 玉桙の 道に出で立ち 夕卜ユフウラを 吾が問ひしかば 
夕卜の 吾れに告ノるらく 吾妹児や 汝ナガ待つ君は 奥浪オキツナミ 来キよる白珠シラタマ
辺浪ヘツナミの よする白珠 求むとぞ 君が来まさぬ 拾ヒりふとぞ きみは来まさぬ 久
ヒサならば 今七日ばかり 早からば 今二日フツカばかり 有らむとぞ 君は聞こしし な
恋ひそ 吾妹ワギモ
反歌
杖衝くも 衝ツかずも吾れは 行ユかめども 公キミが来まさむ 道の知らなく
                               (萬葉集 十三)
 
さにつらふ 君がみことと 玉梓の 使ひも来コねば 憶オモひ病む 吾が身一つぞ 千盤
破チハヤブル 神にもなおほす 卜部ウラベ座スゑ 亀もな焼きそ 恋しくに 痛き吾が身ぞ 
いちじろく 身に染シみとほり 村肝ムラキモの 心砕クダけて 死なむ命イノチ にはかに成り
ぬ 今さらに 君が吾ワを喚ヨぶ 足千根タラチネの 母の御事ミコトか 百モモ足らず 八十ヤソの
衢に 夕千ユフケにも 卜ウラにもぞ問ふ 死ぬべき吾が故
反歌
卜部をも 八十の衢チマタも 占ウラ問へど 君を相ひ身む 多時タドキ知らずも
                         (萬葉集 十六有由縁并雑歌)
 
妹も吾れも こゝろはおやじ たぐへれど(中略)した恋に おもひうらぶれ かどに
たち ゆふけとひつつ 吾ワをまつと なすらむ妹を あひて早ハヤ見む(萬葉集 十七)
 
こぬまでもまたなし物をなかなかに たのむかたなきこのゆふけかな
                      (後拾遺和歌集 十二恋 読人不知)
 
あふことをとふやゆふけのうらまさに つげのをぐしのしるしみせなん
                               (新撰六帖 五)
 
辻占
辻や辻四辻がうらの市四辻 うら正しかれ辻うらの神(本津草 地)
 
石占
名湯竹ナヤタケの 十縁トヲヨル皇子ミコ(中略)天地の 至れるまでに 杖つきも 衝かずもゆ
きて 夕衢占ユフケ問ひ 石占イシウラ以ちて 吾が屋戸に 御諸ミモロを立てて(下略)
                              (萬葉集 三挽歌)
 
石神のうらにをとはん此くれに 山ほとゝぎす聞やきかずや
                    (久安六年御百首 中納言右衛門督公能)
 
あふことをとふ石神のつれなさに わがこゝろのみうごきぬるかな
                       (金葉和歌集 八恋 前斎院六条)
 
足占
月夜ツクヨには 門カドに出で立ち 夕占問ひ 足卜アウラをぞせし 行ユかまくをほり
                              (萬葉集 四相聞)
 
月夜好ヨみ 門に出で立ち 足占して 往く時さへや 妹に相はざらむ(萬葉集 十二)
 
歌占
つゝめどもかくれぬ物は夏虫の 身よりあまれる思ひ成けり(春日権現験記 八)
 
三角柏占
みわそゝぐみつのがしはのしだりはの ながながしよをいはひきにけり
                       (夫木和歌抄 二十九雑 鴨長明)

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