12a 奉幣・幣帛・神馬
 
衣服為幣
しろたへのころもはかみにゆづりてん へだてぬ中にかへしなすべく
から衣なれにしつまをうちかへし わがしたがひになすよしもなし
なつ衣たつやとぞ見るちはやぶる かみをひとへにたのむみなれば
                             (蜻蛉日記 下之下)
 
兵器為幣 鉾
よも山の 人のまもりに するほこを 紙のみまへに いはひつるかな いはひたてた
る(神楽歌 採物)
 
玉串
ぬれてほす玉串の葉の露霜に あまてるひかりいく代経ぬらむ
                 (新古今和歌集 七賀 摂政太政大臣藤原良経)
 
おのづから猶ゆふかけて神山の 玉ぐしの葉にのこるしらゆき
                     (風雅和歌集 十五雑 前大納言為家)
 
あきらけき玉ぐしのはの白妙に したつ枝までぬさかけてけり
                     (風雅和歌集 十十九 前大僧正慈勝)
 
神風やのどかなる世と白露の 玉ぐしのはの枝もならさず
                     (新葉和歌集 九神祇 前中納言為忠)
 
幣串
五十串イクシ立て 神酒ミワすひ奉る 神主部ハフリベの うずの玉蔭タマカゲ 見ればともしも
                             (萬葉集 十三雑歌)
 
初苗にうずの玉かず取そへて いくしまつらんたちつくりえに
                          (堀河院御時百首和歌 春)
 
ますらをがこなでの道にいぐしたて 水口まつるほどはきにけり
                         (夫木和歌抄 五春 源師光)
奴佐袋
あさからぬ契むすべるこゝろばは たむけの神ぞしるべかりける
                        (拾遺和歌集 八雑 よしのぶ)
 
行舟のさき玉まつるぬさなれば はやちひがたもふかじとぞおもふ(兼道神道百首)
 
はるばると峯のしら雪立のきて またかへりあはん程のはるけさ(落窪物語 六)
 
幣帛書和歌
春山に霞たち出ていつしかと 時のしるしやありけんとみん(相模集)
 
かはらむとおもふいのちはをしからで さてもわかれんことぞかなしき
たのみてはひさしくなりぬすみよしの まつこのたびのしるしみせなん
ちとせよとまだみどりごにありしより たゞすみよしのまつをいのりき(袋草子 四)
 
天川なはしろ水にせきくだせ あまくだります神ならば神(俊頼口伝集 上)
 
[神馬]
神馬ジンメ・カミノコマは、神の馳乗に供する馬の意なり。是は神社に参詣する時供進するもの
あり、祈請の為に供進するものあり、祈雨に黒毛馬を献じ、祈晴に赤毛馬を献ずるが如
き其の一例なり。
而して神馬には永く神厩に飼養するものと、一旦進献し、畢りて馬形は、木又は神にて
作れるものにて、見馬に代用するものなり。
 
絵馬エマは、板面に馬形を画き、扁額として神社に献ずるものなり。
後世に至り、人物鳥獣の類を画くものもまた称して絵馬と云ふ。蓋し此に起因せるなり。
 
千はやぶるいづしの宮の神のこま ゆめなのりそよたゝりもぞする(重之集 下)
 
神馬進献
我君の手向の駒を引つれて 行末遠きしるしあらはせ(吾妻鏡 十五)
 
度会の宮のみむまや改て 駒迎するみやこびとかな(詠大神宮二所神祇百首和歌)

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