10 神符
 
[神符]
神符は諸社より信徒に授与するものにして、或は之を神棚に安じ、或は之を門戸に貼し、
或は嚢に納れて身に帯び、以て災異を禳ひ福祉を招くものとす。故に御守オマモリの称あり。
また守札マモリフダと云ひ、御札オフダとも称す。
神符は其の神徳に因りて功験一ならず。乃ち福徳延命婚姻愛敬等の諸種の守札あるが如
し。牛王宝印は、熊野及び祇園等の社より出づる所なり。中古以来起請文は熊野の牛王
に写すを以て例とす。故に其の用甚だ多く、為めに牛王の札を売り歩くものあるに至れ
り。要するに神符の起原は詳ならざれども、恐くは道家の霊印等に傚ひて作り出せるも
のならんか。
 
大麻玉串巻数は並に祓の札なり。
巻数クワンジュ・クワンズは原来仏家に起り、大般若経仁王経等を読誦し、其の読誦せし巻数を
計へて之を記したるものなるを、神職の輩之に傚ひて、中臣の祓詞を読誦し、其の度数
を記し、之を祈祷の願主へ遺ることゝなれるなり。
大麻は祓具にして、祓札にはあらず。然れども伊勢神宮にては、祓札をば大麻と称し、
或は御祓オハラヒとも御祓箱オハラヒバコともまた玉串御祓とも称す。
玉串は木綿を著けたる榊の事にて、之も祓札にはあらざれど、祓式に玉串を用ゐるより、
祓札をば直ちに玉串とも云へるなり。祓箱に千度祓一万度祓と称するは、祓を修せし数
を挙げたるものなり。
凡そ足利氏の頃よりして、伊勢神宮を始め、其の他の大社より毎年恒例として、御祓の
札を幕府に進献することゝなり。
其の後毎歳人を諸国に遣はして之を配布し、普く参拝の人にも授与する異となれり。是
に於て毎戸之を家内に奉安し、即ち其の神の霊代として之を斎ひ奉ること起る。
御祓は罪穢を祓除するものにして、御守とは大に其の趣を異にすれども、諸民の之を尊
信し、其の神の霊代として神棚に奉安し、或は護身の用と為すに至りては、毫も異なる
所無きを以て祓札もまた此篇に収めたり。
 
神符
よとともになげきこりつむ身にしあれば なぞやまもりのあるかひもなき
             (後撰和歌集 十一恋 これひらの朝臣のむすめいまき)
 
巻数
千とせとも祈る験のことの葉を 結びやつくる住吉の松
                      (続千載和歌集 九神祇 藤原実氏)
 
神異
御代なれや古借銭も酉の年 どこの家にもおはらひがある(武江年表 三)

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