05 新嘗祭・相嘗祭
 
にひなへやに おひだてる もゝだる つきがえは(中略)
にひなへやに おひだてる はびろ ゆつまつつき(中略)(古事記 下雄略)
 
契りあれや神のすごもを打はえて にひなめまつるむかしおもへば
                            (倭訓栞 前編二十爾)
 
いぬる秋納しいなほ手向るぞ 年豊なるはじめなりける(年中行事歌合 頓乗)
 
豊明節会
袖かへす天つ乙女もおもひ出よ 吉野の宮の昔がたりを
かへしなば天とやふらむ哀しる 天つ乙女の袖のけしきも(吉野拾遺 上)
 
五節会起原
をとめども をとめさびすも からたまを たもとにまきて をとめさびすも
                           (年中行事秘抄 十一月)
 
献舞姫
思きや雲井の月をよそにみて 心のやみにまどふべしとは(続世継 四宇治の川瀬)
 
童女御覧
あしわけのさはるをぶねに紅の ふかき心をよするとをしれ
返し
あしわけて心よせける小舟とも 紅ふかき色にてぞしる(建礼門院右京大夫集)
 
おほかりしとよのみや人さしわけて しるき日かげをあはれとぞみし
                             (栄花物語 八初花)
 
雑載
あし引の山ゐの水はこほれるを いかなるひものとくるなるらん
うすごほりあわにむすべるひもなれば かざす日かげにゆるぶばかりを(枕草子 五)
 
天地とあひさかえむと大宮を つかへまつれば貴くうれしき
天にはも五百イホつ綱はふ万代ヨロヅヨに 国知らさむと五百つつなはふ
天地と久しきまでに万代に つかへまつらむ黒酒クロキ白酒シロキを
島山に照れる橘うづにさし 仕へ奉るは卿大夫マヘツギミたち
袖垂れていざ吾が苑ソノにうぐひすの 木伝コヅタひちらす梅の花見に
足ひきのやました日影かづらける うへにやさらに梅をしぬばむ(萬葉集 十九)
 
天つ風くもの通ひぢふきとぢよ をとめの姿しばしとゞめむ
                   (古今和歌集 十七雑 よしみねの宗さだ)
 
くやしくぞあまつをとめと成にける 雲ぢたづぬる人もなき世に
                   (後撰和歌集 十五雑 藤原滋包がむすめ)
 
日かげにはなき名たちけりせみ衣 きてみよとこそいふべかりけれ
                        (金葉和歌集 九雑 源光綱母)
 
たち出る乙女の姿あらはれて 月にたどらぬ雲のかよひぢ(経賢僧都)
返
新嘗や昨日のはつほ納置て 今日御酒給ふ雲のうへ人(薀堅)(年中行事歌合)
 
日影さす雲の上人こざりせば とよの明りをいかでしらまし(続古事談 一王道后宮)
 
もゝしきにさふるをとめの袖のいろも きみしそめねばいかゞとぞみる
ひとしほもそむべきものかむらさきの 雲よりふれるをとめなりとも
いろふかくすれる衣をきる時は みぬ人さへもおもほゆるかな
あだ人のさはにつみつゝすれる色に なにゝあやなくおもひいづらむ
                             (空穂物語 菊の宴)
 
[相嘗祭]
相嘗アヒナメは、相新嘗アヒニヒナメの略語なり。
新嘗祭に先ちて新穀を神祇に供せらるゝ祭儀にして、大神宮の神嘗に同じ。神嘗をも相
嘗と云ふにて知るべし。
祭神は京中及び山城大和河内摂津紀伊の五国に在る所の七十一社なり。
十一月上の卯日、神祇官人諸社の祝に幣帛を頒ちて、各々其の社に奉ぜしむ。
而して祭祀の料は、各々其の国の正税及び其の社の神税を用ゐしむ。
此祭の始めて史をに見えしは天武天皇の五年に在れども、朝綱の弛廃と共に、此祭祀の
礼典も早く衰へしにや。
後世は僅に賀茂社、斎院及び日前国県、住吉等の諸社にて行はれし事の見えたるのみ。
斎院の相嘗は少しく異なる所あり、翌日御神楽を行ひ、公卿殿上人参集して饗饌賜禄等
の事あり。

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