02a 神拝詞集 第一輯シュウ
 
十 六根清浄大祓
 
天照坐皇大神アマテラシマススメオホンカミの宣ノタマはく 人は即ち天下メノシタの神物ミタマモノなり 須スベカ
らく静め謐シヅまることを掌ツカサドるべし 心は即ち神明カミトカミトの本主モトノアルジたり 心神
ワガタマシヒを傷イタましむる莫ナかれ 是の故に 目に諸モロモの不浄を見て 心に諸の不浄を見
ず 耳に諸の不浄を聞いて 心に諸の不浄を聞かず 鼻に諸の不浄を嗅カいで 心に諸の
不浄を嗅がず 口に諸の不浄を言ひて 心に諸の不浄を言はず 身に諸の不浄を触れて 
心に諸の不浄を触れず 意ココロに諸の不浄を思ひて 心に諸の不浄を想はず 是の時に清
く潔イサギよき偈コトあり
 諸の法ノリは影と像カタチの如く
 清く浄イサギよければ仮カリにも穢ケがるることなし
 説コトを取らば得べからず
 皆ミナ因ハナよりして業コノミとは生ナる
我が身は即ち六根清浄なり 六根清浄なるが故に 五臓の神君安寧なり 五臓の神君安
寧なるが故に 天地の神と同根なり 天地の神と同根なるが故に 万物の霊と同根なり 
万物の霊と同根なるが故に 為す所 願として成就せずと云ふことなし
 無上の霊宝 神道加持
 
十一 新撰禊祓詞
 
高天原に事始め賜ひし皇大神等は 幽事カミゴトの根元ミモトを知ろし食メす泉津下方ヨモツシタヘに
坐します神等は 荒び来たらむ悪事マガコトを知ろし食す祓戸ハラヘドに坐す皇神等は 其の
悪マガを祓へ退ソけ賜ふ事を 始め賜ひき 故カレ 世間ヨノナカに生オひ出づる人と云ふ人は 
天津御法ミノリの随マニマに 国津御法の随に 神習ひに習ひ 神祝ホサぎに祝ぎ仕へ奉るべき
を 祥サガ無き人草に相雑マジはり 相口会アひて 過ち犯せる罪咎は子産み・交合マグハヒ
・疫病エヤミ・月経ツキノサハリ・死亡マカル穢ワザハヒに立ち触れ 或は物食ひする随に 不慮ハカラザル
・穢はしき火水にい行き障サハらひ 家にも身にも 汚ケガらへ過アヤまてらむを 由々しみ
畏こみて 赤膚に水掻き清め 斎衣イミゴロモ取り装ヨソほひ 斎帯イミオビ取り垂らし 稜威イツ
の斎床ユドコに慄進ウズスまり 打ち鳴らせる手も 樛亮ナラウに言コト揚げ仕へ奉れば 遺ノコれ
る枉マガは彼方カナタの野辺ノベに 枯れ臥フさむ燃草刈り集めて 玄(火偏+玄)彦カガヒコの
御荒びに 風の共ムタ 焼き払ふ事の如く 速川の瀬に居る魚ウヲに網アミ張り渡し い漁トり
きためて 海ワダ中に持ち出だし 大魚オホウヲが咽喉ノミドに 加々呑ません事の如く 祓へ
申し清め申す事の由を 皇神等の御諾ミアナナひ 相ひ聞こし食メして 某ソレガシが赤き真心
を 深く悠トホく憐アハれみ賜ひ 愛メグみ賜ひて 朝に異ケに疎ウトび荒び来む悪事マガゴトの 
上より来らば 天の衢チマタに注連シメ引き延ハえて 青雲の退ソき立つ極キハみに遂オひやらひ 
下より来らば 伊夫耶イブヤが堺に 千曳チビき岩曳き塞サえて 片隅の国辺ベに遂オひ退け
払ひ給ひて 夜の守マモリ日の守マモリに幸サキはへ給へと 恐み恐みも白す
 
十二 大道奉仰詞
 
掛けまくも畏き 天祖トホツミオヤの大御神 此の国中クヌチに生アれましてより 御子を産ウみ給
ひ 孫ウマゴを生ましめ給ひ 曾孫ヒマゴを生ましめ給ひ 玄孫イヤヒマゴを生ましめ給ひ 尚
ほ其の末の御血統ミチスヂの長く連続ツヅきて 当代イマノヨに我が祖父オホヂに及び 我が祖母
オホバに及び 我が父に及び 我が母に及び 今や吾れにぞ及びたる 父母チチハキ吾れを生
み給ひ 御身オンミを劬ヤましめ給ひけむ 御心を労イタましめ給ひけむ 父吾れを養ひ 吾
れを育て 吾れを愛メでては 烏羽玉ウバタマの夜とだになく昼ともあらず 我が頂頭イタダキ
を撫で給ひけむ 母吾れを抱イダき 吾れを負ひ 吾れを顧み 介添カイゾひし 夜は夜も
すがら 腹裡フトコロにして寝イを安くし給はず 汚キタナきをも穢ケガラヒとし給はず その血脈
ミチスヂの乳を呑みては 父の恩メグミの高きを知らず 母の恵の深きを知らず 漸ヤウヤく長タ
け来たりて 是れを覚シりて 恩恵メグミに報い奉らむとすると雖も 仰げば高き久方の 
天津虚空ミソラの弥遠イヤトホに 限りもあらぬ荒金の 大地オホチの底のそれとだに 量ハカりも
敢アへぬ尊恩恵ミメグミに報い奉らむ事難カタかるべし
尚ほ我が父チチにも父母在り 我が母にも父母在り その父母にも父母在り 尚ほその以
前サキの往古イニシヘの 上ノボりたる代の 神代の天祖トホツミオヤの神達の その本モト繁き千早振
る 幾許イクソの数と磐隠イハガクれます 千々の柱の祖ミオヤの神の 其の御血統ミチスヂの子孫
ウマゴの末を愛メで慈しみ給はむ事 言コトの葉草に掛けまくも 最イトも畏き事になむ
此の由縁ユエを以て異国コトグニの 異コトなる教の異神コトガミの 異なる道に往惑マドふべから
ず 唯タダ天祖トホツミオヤの神達の尊タフトき苗胤(みすゑ)に生れし身の 其の御血統ミチスヂの
祖神ミオヤノカミの他に 祈らむ道を知らず 尊むべく 畏むべく 唯只管ヒタスラに祈るべし 
祈る心も永久トコシヘに 常磐堅磐の神祭ミマツリをも絶えせで祭り奉らむ
誓ひ願はくば 天祖トホツミオヤの大神と仰ぎ奉る 宇宙アメツチの元神霊モトツミタマ 皇スメ大御神の
恩頼ミタマノフユを弥イヤ益々に戴き奉り 大神旨オホミムネを畏み奉りて 遠津御祖の神達の践フみ
伝へませる大道オホヂの跡を 只管ヒタスラに慕ひ奉り 臣オミの正道マサミチ只タダ一筋に仕へ奉
り 踏み行ひ 垂乳根タラチネの親に従ふ御国風ミクニブリの随マニマに 同胞ハラカラ睦びて序タダし
く 友に交りて信タダしく 家を守りて質タダしく 我が事業コトワザを誠タダしくせむ 伏
し願はくば 心にも図ハカらで 犯せし罪科ツミトガを容赦ユルさせ給ひて 天祖トホツミオヤの神達
の苗裔(みすゑ)の 吾れの我が裔(すゑ)の子孫ウマゴの末に到るまで 家をも身をも
守護マモり給ひ 幸サきはへ給ひ 弥イヤ永久トコシヘに常磐トキハ木の弥イヤ繁りに茂らしめ給ひ 
弥栄えに栄えしめ給へと申す事を 聞こし食せと 恐こみ恐こみも白す
 
十三 神道大意詞
 
夫れ神とは 天地に先立ちて 而シカも天地を定め 陰陽を超コえて 而も陰陽を成す 天
地に在りては神と云ひ 万物に在りては霊と云ひ 人に在りては心と云ふ 心とは神な
り 故に神は天地の根元 万物の霊性 人倫の運命なり 当マサに知る 心は即ち神明の
舎ミアラカ 形は天地と同根たる事を
 
十四 明光照頂詞
 
凡オヨそ 神は正直を以て先サキとなす 正直は清浄を以て本となす 清浄は心に正タダシさ
を失はず 物を穢さず 大道を守り定準を専らにす 是ココを以て 明光頂イタダキを照ら
し 霊徳掌タニゴコロに入る 願を成して 何ぞ成らざらんや 万事は一心の作なり 時々
ジジ奉行ブギャウして 面々怠ることなかれ
 
十五 一念未生詞
 
一念未生ミシャウの処 即ち天津祝詞の太祝詞なり 我が一心は即ち天地と観ずべし 神我
が心に入る 我も亦神の御内証に入るや明鏡なり 無心無念の祓なり 此カくの如く 無
念無想にして神に向へば 即ち吾れ神明と共に同じく 一切の祈願成就すること円マドカ
なり 即ち如実に自心を知るの神道にして 我れ入り 我に入るの観なり
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