04[一 役員、総代としての基礎知識]
 
          [一 役員、総代としての基礎知識]
 
            参考:全国神社総代会編集発行「改訂神社役員、総代必携」
 
[一 役員、総代としての基礎知識]
 
〈神社の役員、総代とは〉
 悠久の昔、四季折々の変化に富む自然風土の中に神々のご存在を見いだした日本人は、
家郷の村々に神々を祀り、今日に至るまで連綿と祭りを続けてきました。こうして祀ら
れた神社は、全国津々浦々に約八万社を数え、それぞれの地域で氏神さま(鎮守さま)
として親しまれてきました。氏神(鎮守)とは、主として地域の守り神を意味します。
また、氏神の神恩を戴いて生活している地域住民すべてを氏子といいます。
 
 神社には、宮司、禰宜などの神職が奉務し、役員、総代はそれぞれの立場で宮司に協
力して神社活動に寄与します。役員、総代は、一般的には氏子の代表と考えて差し支え
ありませんが、中には氏子以外でその神社への崇敬が篤い方、即ち崇敬者から選任され
る場合もあります。役員とは、正しくは責任役員(代表役員 = 宮司を含む)といい、
宗教法人法に基づく法律上の機関で、役員会を構成して神社の法人事務中重要な事項(
宗教上の機能に関する事項を除く)を決定します。これに対して総代とは、法律制定以
前の古い時代から存在する宗教上の機関で、氏子崇敬者の代表として祭祀をはじめ様々
な面で神社の活動に寄与します。役員、総代の任務、選考等については、宗教法人法に
基づく神社本庁庁規を受けて定められた神社規則に規定されています。
 尚、全国の総代で組織する全国神社総代会については、「九」(後述)を御参照下さ
い。
 
〈神社の公共性〉
 古より絶えることなく続けられてきた神社の祭祀は、農作を祈る春祭り、収穫を感謝
する秋祭りなど、稲作に関わるものが多く、氏子区域を挙げて行われます。このことは、
稲作を国づくりの基本としてきたわが国ならではの信仰形態を表しているとともに、氏
神への崇敬心及び氏子という連帯意識を基礎とした神社と地域社会との密接不離な関係
をも物語っています。
 さらに古来、皇祖皇宗の遺訓、偉業を継承せられ、祭祀を行わせられる天皇陛下を仰
ぎ、君臣一体となって国づくりを進めてきた我が国において、皇室、国家と神社との関
係も極めて密接です。天皇陛下は、天下万民を治められる最高の祭り主として皇居内に
鎮まる宮中三殿におかれ日々祭祀を行わせられ、一方、全国の神社では、氏子の安泰、
地域の繁栄とともに、常に皇室の安泰、国家の繁栄が祈られているのです。
 
 このように皇室、国家及び地域社会と神社の結びつきは非常に強く、神社の祭祀は極
めて公共性が強いといえます。言い換えれば、神社の祭祀は、特定の教義、教典を信仰
上の規範としたり、個人救済にのみ眼を向けるものではなく、常に国家社会と一体とな
って平穏な世を目指してゆくものです。従って、古代から神社は国家の制度により祀ら
れてきました。近代では、明治時代から昭和二十年の終戦まで、神社は国法上宗教では
ないとされ、国家管理の下に「国家の宗祀」として特別の取扱いがなされていました。
 しかし、昭和二十年十二月十五日、進駐していた連合総司令部は、いわゆる「神道指
令」を発し、神社の国家からの分離を命じたのです。これにより、昭和二十一年二月三
日、全国神社関係者の総意に基づき、当時民間の神社関係団体であった皇典講究所・大
日本神祇会・神官奉斎会が相寄り、神社本庁を設立したのです。後に現行の宗教法人法
が制定され、神社も他の教団と全く同様、宗教法人として位置付けられ、今日に至って
います。
 
 現行の制度の下、神社本庁に包括される神社は、宗教法人法を根拠として、包括団体
である神社本庁の庁規に基づく神社規則を基本規定としています。神社の財産管理等の
法人運営には、これらの法令等を遵守しなければなりません。しかし、忘れてはならな
いのは、こうした場合にも常に神社本来の機能や活動を妨げることがあってはならない
ということです。前述のように、神社の祭祀が公共性の上に成り立っているという基本
は、いまも厳然として変わるものではありません。役員、総代は、あくまでも宮司を助
けて、公共性の伝統に基づく神社の特殊性を充分に生かすことができるように心掛け、
任務の遂行にあたって戴きたいと念願するものであります。
 
〈神社本庁〉
 神社本庁は、伊勢の神宮を本宗と仰ぎ、全国約八万の神社を包括する宗教団体です。
 その目的は、包括下の神社の管理と指導を中心に、伝統を重んじ祭祀の振興や道義の
高揚をはかり、祖国日本の繁栄を祈念して、世界の平安に寄与することにあります。
 神社本庁は、宗教法人としての基本規則を「神社本庁庁規」に定め、宗教団体として
は「神社本庁憲章」を定めています。「本庁憲章」は、神社祭祀の伝統と神社本庁の歩
みを踏まえ、従来不文のまま実践されてきた基本規範を明文化したものです。
 神社神道には、他宗教にある戒律にあたるものはありませんが、敬神尊皇の実践綱領
としては、「敬神生活の綱領」があります。
 尚、神社本庁の地方機関として、各都道府県にそれぞれ神社庁が置かれています。神
社庁はいずれも庁舎をもち、管内神社に関する事務をとる他、地域活動の振興をはかる
仕事をしています。神社庁は神社活動PRの窓口です。
 
〈伊勢の神宮〉
 神社本庁は、伊勢の神宮を本宗ホンソウと仰いでいます。
 本宗とは、伊勢の神宮が他の神社に比べて格別の御存在であることを示す尊称です。
 神宮は、三重県伊勢市に鎮座し、皇祖天照大御神様をお祀りしています。元来、宮中
に手厚く奉斎されてきましたが、二千年の昔、第十一代垂仁天皇の御代に伊勢に御鎮座
になりました。以来、皇室を中心として、広く国民の信仰をも集めて、今日に至ってい
ます。
 神宮では、いまから千三百年前の持統天皇の四年(西暦六九〇)より、二十年毎に社
殿や御装束・御神宝の一切を新しく造り替えてきました。これを式年遷宮といいます。
平成五年十月には、第六十一回目の式年遷宮が、古式のままに行われました。このお祭
りは、大御神様の広大無辺な神恩が益々豊かになることを祈り、その神恩を戴いて国の
若返りと永遠の発展を願う大切なお祭りです。
 
〈神宮大麻〉
 伊勢の神宮のお神札フダを神宮大麻タイマと申し上げます。大麻とは、もともとお祓いに
使われた麻などの用具のことでしたが、後にお祓いを受けて授けられるお神札のことも
こう呼ぶようになりました。神宮大麻は、神宮で数々の祭りを経て厳粛に奉製され、毎
年年末、神社本庁を通じて全国の神社の神職、総代の手によって家庭に頒布されていま
す。神宮大麻に併せて神宮暦レキという暦も頒布されます。また、氏神神社のお神札の多
くもこのときに授与されます。毎年の神宮大麻の頒布は、神職、総代など神社関係者に
とって大切な任務といえます。
 
〈本宗ホンソウ・本庁・神社〉
 神社の活動を区別する法律上、宗教上という概念は、宗教法人法の立法趣旨にも盛り
込まれており、一般に(1)聖的側面(宗教活動)と(2)俗的側面(法人運営)といわれ、
意識的に厳然たる一線を画す必要があります。
 (1)における本宗・本庁・神社の関係は、伊勢の神宮にお祀りされる天照大御神様と約
八万社に及ぶ地域地域の神社の御神徳が相まってゆき渡り、国民が平穏な日々を送るこ
とができるということを前提に、全国の神社の連合体である神社本庁は神宮を本宗と仰
ぎ、奉賛の誠を捧げる基本姿勢を持っているのです。
 (2)においては、神社本庁と神宮・神社は、包括、被包括の関係にあり、宗教法人法に
基づき、包括法人たる神社本庁庁規、被包括法人である「神社規則」が定められていま
す。神社の俗的側面(法人運営)においては、全てこれらの法令・規則に従わなければ
なりません。
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