11e 日本の神々と易・五行〈その10〉1
 
 五行の語が初めてみられるのは,「尚書」の「洪範」です。それによりますと,
  「五行は一に曰イワく水,二に曰く火,三に曰く木,四に曰く金,五に曰く土。水に
  潤下といい,火に炎上といい,木に曲直といい,金に従革といい,土はここに稼穡
  カショクす」
といって五原素の生成順を最も微かな存在の水から土に及ぶものとし,併せて五原素の
性状をも述べています。
 この「洪範」に説かれている五行を先述の一から十までの数に当てはめてみます。「
一に曰く水,二に曰く火,三に曰く木,四に曰く金,五に曰く土」といっていますので,
  一 − 水
  二 − 火
  三 − 木
  四 − 金
  五 − 土
ということが判ります。
 次にこの一二三四五の各数には,六七八九十の数が結び付いていますので,これらの
数も同じ配当の筈です。つまり,
  一・六 − 水
  二・七 − 火
  三・八 − 木
  四・九 − 金
  五・十 − 土
となる訳です。そうしてこの数の組合せが「河図」における数の組合せなのです。
 
8 河図
 「河図カト」とは,伏羲が「河図を得て八卦を画した」とも伝えられているものです。
もう少し詳しくいいますと,伏羲が王になりますと,黄河から竜馬が現れ,その背に一
から十までの数が紋になって記されていたと伝えられているものです。
 河図は,奇数(天・陽)は白点,偶数(地・陰)は黒点で表されています。
 
             河図
             北                         
             1                         
             6                         
                                       
                                       
             5                         
      西9・4    中央    3・8東                  
             5                         
                                       
                                       
             2                         
             7                         
             南
 
(河図の説明)
  生数 成数  五行生成順
  1  6 ・・・・ 水
  2  7 ・・・・ 火
  3  8 ・・・・ 木
  4  9 ・・・・ 金
  5  10 ・・・・ 土
 +  +
 ・・ ・・    
  15    40              (15+40=55 天地の数)
 
(1) 河図の意味
 上の表から河図の意味は,次の8項目に要約されます。
 @奇数 − 5個
 A偶数 − 5個
 B生数 − 5個
 C成数 − 5個
 D生数の和 − 15
 E成数の和 − 40
 F生数と成数の和 − 55(天地の数)
 G五行生成順   − 水火木金土
 
(2) 生数と成数の相違
  一から五までの生数
  六から十までの成数
は前述のようにそれぞれ,水火木金土に配当されますが,生水と成数の相違について「
五行大義」は次のように説いています。
  「成数とならぬ水,即ち生数一の水は凝滞して流れず,生数二の火は炎光を発する
  ことがない・・・・・・これらに各々五つの数を配して,水は六の成数となって初めてよ
  く潤下し,火は七となって初めてよく炎上する。・・・・・・」
 要するに生数は動かぬ数,成数は活躍する数であり,恐らく前者は体,後者は用を本
質とする数と推測されます。
 それ故にこそ,易もこの六,七,八,九の数を活用し(十は盈数エイスウを払えば一に還
元する),
  陰の極数,六を陰爻の代名詞
  陽の極数,九を陽爻の代名詞
とする訳です。

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