11d 日本の神々と易・五行〈その10〉1
△後天易
後天易は周の文王によって始められ,子の周公旦によって完成されたといいます。先
天易が自然のままに人間が生活していた状態において作られたのに対し,後天易は人間
が自然に忤サカラって暮らす,つまり火食したり,衣服を着けるようになってから,そのよ
うな人間の生活を勘案してできたといいます。
後天易においては,
乾(天) − 西北
坤(地) − 西南
離(火) − 南(先天易における天の位)
坎(水) − 北(先天易における地の位)
とします。
水火を南北,つまり先天易の天地の位にそれぞれ配する理由は,
「火気は冬,乾燥して天に上り,夏,地に降る。」
「水気は蒸発して天に至り,雨となって地に降る。」
こうして水気は上って降り,火気もまた降って上ります。それによって天地間を水火
が循環します。このような水火の天地間の往来・循環こそ,人間を含む万物の生命の保
証をなすものという意識がここに窺われます。後天易が人間の生活に即して考えられた
といわれる所以です。
このような訳で八卦の中で重要な四卦は,
乾(天),坤(地),離(火),坎(水)
です。
「離は,火(日照)・日」
「坎は,水(降雨)・月」
であって,この火水・日月は,
「乾(天)・坤(地)」
と対応し,先天易の天地軸に重ね合わされて天地の現象を表します。
韓国の太極旗が中央の太極と四周に配されたこの四卦から成るのは,これらの卦によ
って宇宙とその作用が表現されるからです。
八卦は三爻から成り,この三は前述のように天人地の三才を象徴し,この組合せによ
って天地自然・人間関係をも表現するものですが,羅万象をより精密に表そうとします
と,これでは到底足りません。そこでこの八卦を組み合わせて乾,坤以下八・八,六十
四卦を作ります。これが「大成の卦」であって,八卦はこれに対して「小成の卦」とも
呼ばれています。
この六十四卦中,天地乾坤は万物の祖ですから,乾,坤の二卦は「周易上経」の首ハジ
メにおかれています。それに対し「上経」の終わりは,坎,離の二卦,つまり水火日月で
結ばれ,天地日月,即ち乾坤坎離で,「上経」一巻の首尾をなす形です。この状況は,
天地軸,水火軸が先天易と後天易で重なり合っていることにも対応し,この四卦の重要
性が納得されるのです。
7 易と数
「繋辞上伝」には一から十までの数についての記述があります。
「天一地二,天三地四,天五地六,天七地八,天九地十。
天の数五,地の数五。五は位相得て各々合うことあり。
天の数二十有五,地の数三十。およそ天地の数五十有五。
これ変化を成し,鬼神を行う所以なり。」
一から十までの数のうち,奇数は天(陽),偶数は地(陰)です。つまり,
天数 一,三,五,七,九
地数 二,四,六,八,十
と分け,天地の数は各々五つずつあります。天地の五つずつの数は,その位を持ち,互
いに結び合う相手,「合」を持つ,というのです。これはどういう意味でしょうか。恐
らく次のように解釈されるようです。
「合」とは互いに結び付く相手です。数は十までですので,合うには十を半分ずつに
分ける必要があります。十を分けますと,
一 − 六
二 − 七
三 − 八
四 − 九
五 − 十
となり,一と六,二と七,三と八,四と九,五と十,が結び付くことになります。
二つの数が「合う」には,それらが互いに陰陽であることを第一条件とします。今,
それらの五個の結び付きをみますと何れも陰陽で,位を得て「合」になっています。例
えば一と六の組合せでは,一が陽(天),六が陰(地),二と七では二が陰,七が陽,
というように互いに位を得て結び付いている訳です。
この五種の結び付きこそ,実は五行なのです。易には五行について具体的な言及はあ
りません。言及はありませんがこのように事実において五行は説かれている訳です。
1図
1
天
4地 5天 天3
地
2
2図
6
天
地
9地 10 地8
天
7
3図
水
1天
6地
地天 5天 地天
金49 10地 83木
2地
7天
火
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