11a 日本の神々と易・五行〈その10〉1
 
2 易の六義
 易は「六義にて成る」といいますが,その六義とは変・不変・簡・象・数・理の六つ
を指します。このうち,変・不変・簡は,規則であり,象・数・理はいわば宇宙原理を
認識するための方法です。
 
 変とは「変易」であって,宇宙の変転の理を説くものです。即ち宇宙森羅万象は一瞬
の間も止まることなく運行し輪廻しますが,この変転極まりない相スガタを宇宙の実相と
して捉えるのです。
 不変とは「不易フエキ」ということで,宇宙の変転極まりない実相の中に,また永久不変
の理をみる訳です。
 この変と不変は一見矛盾するようですが,実は矛盾しません。例を四季の推移,夜と
昼の交替に採れば,春・夏・秋・冬と移り変わることは文字どおり変化ですが,年々歳
々同じように春は廻り来り,花は咲き散る,と観ずればこれは不変です。昼夜も同じこ
と,昼夜というのは変化ですが,朝毎に東の空に太陽が昇り,夕毎に西に沈む,という
見方をしますと,これは不易ということになります。要は見方の差であって,人間の場
合も,自身としてみるば不変ですが,その内容は,幼・少・壮・老年と変化しています。
 簡とは「易簡」で,簡単明瞭の意です。太陽が東に出て西に入り,昼は明るく夜は暗
い,のです。また,夏は暑く冬は寒く,火は熱く水は冷たいです。このように天地の理
法は,簡単明瞭で「易イ」とはこの意です。「繋辞伝」に,
  「乾(天)は易イを以て知ツカサどり,坤(地)は簡を以て能ヨくす。易なれば知り易
  く,簡なれば従い易し、易簡にして天下の理,得ウ」
とあるのもこの間の事情を述べているとされます。
 
 以上が易の変・不変・簡の三つの法則ですが,次の象・数・理とはどういうものでし
ょうか。
 森羅万象という言葉の通り,この宇宙間は無数の自然現象で満たされています。それ
らの大自然の現象には,天地,上下,寒暑,男女など,相対的原理が内在しています。
これらの相対は,相対するが故に,互いに深く影響し合い,交感して,交合し,新たな
ものを生じるのです。
 易はこの象を数に還元して思考し,それによって宇宙における統一的原理を求めて行
きますが,この象・数・理の方法の発見者が,原始の聖王である伏羲とされているので
す。
 
3 太極と陰陽二元
 易はこの相対的な象を陽と陰の二元として捉え,陽を・,陰を・・の記号で表現します。
そうしてこの陰陽二元以前に存する原初唯一絶対の存在である「混沌」を,易は「太極
」とするのです。
 この太極から発生した陰陽二元は,相対的存在であって,そのもの自体に万物を発生
する力はありません。ただ,陰陽が合するとき,初めて生成が可能となるのです。
 つまり万物発生の端緒は,陰陽二元の交合にあり,また宇宙間の万物は一瞬の間もそ
の活動を停止せず,千変万化します。その変化は多岐に亘っても,その中に一定の秩序
があって,それをはみ出すものではありません。この原理は,陰陽2個の記号を用いて作
図することにより,容易に説明することができます。
 
4 「八卦図」
 陰陽二気は下から発して行くものとされています。従って作図もまた,下から上方へ
と積み重ねて行く訳で,その際,太極は○,或いはそれを引き延ばした形,つまり一本
の棒で表現されます。
 太極から一陽一陰が派生し,陽の方向に2陽が,陰の方向に2陰が発生します。この2個
の陽陰を発する方向に更に一陽一陰を加えますと4個の符号ができ,この4個の符号はそ
れぞれ2個の同様の符号を発生し,その上方に一陽一陰を加えますと,此処に8個の符号が
できます。
 つまり太極が岐ワカれて一陽一陰の2となり,この2を2倍して4,4を2倍して8,3画の卦
が8個できますが,これを八卦,或いは小成卦といい,この3画の卦によって初めて象が
生じます。
 その成立状況を「繋辞伝」では,
  「易に太極タイキョクあり。これ両儀リョウギを生ず。両儀は四象シショウを生じ,四象は八卦
  ハッカを生ず。」
と説いています。
 
          八卦図
 
 八卦      四象    両儀    太極
 乾ケン =天
       > 老陽 
 兌ダ =沢
             > 陽
 離リ  =火
       > 少陰 
 震シン =雷
                   > 太極
 巽ソン =風
       > 少陽 
 坎カン =水
             > 陰
 艮ゴン=山
       > 老陰 
 坤コン =地
 
 要するに陰陽両儀の未分化以前の存在を,易は太極として捉えますので,太極こそ両
儀・四象・八卦の一切を生み出す根源的唯一絶対の存在なのです。
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