1101a 日本の神々と易・五行〈その10〉2
 
(2) 相剋ソウコク
 相生が順送りに相手を生じて行くのに対し,相剋は反対に木火土金水の五気が順送り
に相手を剋して行く,ということです。
 つまり木気は土気を剋し,土気は水気を剋し,水気は火気を,火気は金気を,金気は木
気を剋すという,いわばマイナスの関係で,金気によって剋された木気は,再び土気を
剋し,循環を繰り返します。この様相は次のように表現されます。
  木剋土モクコクド,土剋水ドコクスイ,水剋火スイコクカ,火剋金カコクキン,金剋木キンコクモク
 相生と同じく相剋もまた,単純な考え方に立っています。
 木剋土・・・・・・木は根を張って,土を締め付け傷めるものです。大木は勿論,小さな潅
木,柔らかな菜草に至るまで,それらの根は何れも土を締め付け,傷めます。そこで木
剋土ということになります。
 土剋水・・・・・・土は水を塞セき止めるものです。水は果てしなく流れ,溢れ,漲ミナギろう
とします。もし土が無ければ水は溢れて止まるところを知りません。その水の力を抑え
るものは常に土です。洪水,出水に際して水防の役を果たすものは昔も今も土です。こ
の応急措置としての土積みに対し,より恒久的な対策としては土手,堤防の構築という
ことがあります。土,土手,何れも土の力による水力の抑制です。土剋水とはこの間の
事情をいっている訳です。
 水剋火・・・・・・水が火を傷め付ける,というのは余りにも自明の理で,今更説明を要し
ません。火を消すのに最良の手段は水を掛けることで,水は火に勝つ,防火即水なので
す。
 火剋金・・・・・・金属は五原素の中で,最も固いものです。その金属も高温の火に遇えば
容易に溶解されます。火は金属にこの意味で勝ります。そこで火剋金となる訳です。
 金剋木・・・・・・亭々として聳える喬木も,斧の一撃に遇えば仆タオされます。鋸,手斧,
全ての刃物は木を損ない傷つけるのです。つまり刃物即金属ですから,金剋木の理が成
り立ちます。
 
  相生は,木火土金水の順で,五原素が順送りに相手を生じて行くということ
  相剋は,木土水火金の順で,五原素が順送りに相手を剋して行くということ
 
 宇宙の森羅万象は,プラスの面のみを強調して活動し続ければ必ず破局に見舞われま
す。一方に必ずマイナスの面が必要です。木火土金水は宇宙森羅万象の象徴ですから,
其処に相生・相剋の二面が考えられるのは当然なのです。
 逆説のようですが,相剋そのものの中に相生があり,相生の中に相剋があります。
 つまり土は木の根によって締め付けられることによって崖崩れなど起こさないで済み
ますし,水は土によって行動を抑えられることにより,谷とか川の形を保つことができ,
火は水によって抑制されることにより,一切を燃焼し尽くさずに済むのです。金属は火
によって溶かされることによって金属製品として形を成すことができ,木もまた刃物に
よって伐られることにより,様々の製品となって再生します。相剋の中に「生」のある
所以です。
 また同様に,相生の中に私共は「剋殺」をみることが出来ます。木は火を生じ続けれ
ば衰え,火もまた灰を生み続ければ燃え尽きるのです。
 森羅万象の象徴である木火土金水の間に,相生・相剋の二面があって,万象は初めて
穏当な循環が得られ,この循環即ち五行によってこの世の万象の永遠性が保証されると
いう訳なのです。
 
12 「五行配当表」
(1) 五気の配当
 木火土金水は互いに相生・相剋して輪廻しますが,同時にこの木火土金水は五原素と
してあるばかりでなく,宇宙間の万象,つまり色彩・方位・季節・惑星・天神・人間精
神・徳目・内蔵・十干・十二支等を象徴するものでもあります。換言しますと,万象が
この五気に還元され,或いは配当されている訳です。
 
(2) 五行配当表の読み方
 
               五行配当表
 
 五行    木     火     土     金     水
 
 五色    青     赤     黄     白     黒
 五方    東     南     中央    西     北
 五時    春     夏     土用    秋     冬
 五事    貌     視     思     言     聴
 五音    呼     笑     歌     哭     呻
 
 五星    歳星(木星) 栄?惑(火星) 填星(土星) 太白(金星) 辰星(水星)
 五天亭   青帝    赤帝    黄帝    白帝    黒帝
 五人帝   大白皐?   炎帝    黄帝    少白皐?   頁?王頁?
 五官神   句芒    祝融    后土    蓐収    玄冥
 五臓    肝     心     脾     肺     腎
 
 五常    仁     礼     信     義     智
 五虫    鱗     羽     イ果?    毛     介
 五味    酸     苦     甘     辛     鹹
 五声    角     徴     宮     商     羽
 十干    甲 乙   丙 丁   戊 己   庚 辛   壬 癸
 
 十二支   寅・卯・辰  巳・午・未  辰・未・   申・酉・戌  亥・子・丑
                   戌・丑
 易卦    震     離           兌     坎
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