1101b 日本の神々と易・五行〈その10〉2
五行配当表はまず木火土金水と横に順に行を追って読み,次に縦に読んでみることが
必要です。
横に読むことによって,色彩・方位(空間)・季節(時間)から,天文・生物・人間
の感覚・徳目まで,要するに万象が木火土金水の五気に配当されていることが判ります。
次に縦に読んで行くことによって,気を同じくするものは互いに象徴関係にあること
納得されます。
例えば最初の木気を縦に読んで行きますと,木気は,色彩では青,方位は東,季節は
春,時は朝,を意味することがはっきりします。十干では甲(木キの兄エ),乙(木の弟
ト),更に十二支では寅・卯・辰の3支です。
其処で陰陽五行に基づいて青色をみるとき,その青が意味するものは東・春・朝など
であって,「青春」「青年」の語が人生の春とか,若者を指す縁由イワレも自然に分かって
きます。
次の火気を縦に読みますと,色は赤,方位は南,季節は夏,十干では丙(火の兄),
丁(火の弟),十二支では巳・午・未の3支です。
3番目の土気は,色は黄,方位は中央,季節は土用,十干では戊(土の兄),己(土の
弟),十二支では辰・未・戌です。
4番目の金気は,色は白,方位は西,季節は秋,十干では庚(金カの兄),辛(金の弟
),十二支では申・酉・戌の3支です。
5番目の水気は,色は黒,方位は北,季節は冬,十干では壬(水の兄),癸(水の弟
),十二支では亥・子・丑の3支です。
黒色によって象徴されるものは,冬,北,夜,暗黒であって,物の生命が妊ハラまれ,
萌キザす暗黒の胎内でもあります。
色彩は配当表の中で取り分け重要ですが,此処に選ばれた五色とは要するに,赤・青
・黄の三原色に,全反射と全吸収の白黒を加えたものであって,いわば色の基本です。
五行配当表にみられる5種類の色彩を,このように現代的に把握しますと実に分かり易
く,五色の種類を簡単に記憶することができます。この五色は木火土金水に配当され,
究極的には宇宙の万象を象徴することになりますので,陰陽五行の理解の第一歩は,こ
の五色を知ることです。
五色の種類の記憶の次に来るものは,その5色が象徴するものを覚えることにありま
す。先に陰陽五行は非常に感覚的にものであると述べましたが,それはこの色彩におい
て最も著しいのです。
もし目を閉じて「木気」,植物を象徴する色は何か,と考えれば誰の脳裏にも立ちど
ころに現れて来るのは「青」でしょう。それが木気の色の青なのです。
次に「木気」或いは「青」の方位は東・西・南・北・中央の5方位のうち,何処でしょ
うか。
五気のうち有機物は木気だけです。陰陽五行において,木の本性を「曲直」とします。
つまり木は地中に発芽した幼芽のうちから,進むことが可能な間は専ら進み,石などの
障害物があれば曲がって道を変え,前進して止みません。即ち曲直たることの所以です。
こうして五気の中で生命に溢れ,生成発展が期待できるのは木気です。
朝毎に太陽の昇る東は,生成発展の期待される方位です。それならば「木気」と「青
」によって象徴される方位は当然「東」ということになります。
木気の方位がこのような理由によって東と定まりますと,同じ考え方によって万物の
生命の始まる「春」が,木気によって象徴される季トキとなります。一日の時間に執りま
すと「朝」が木気です。
青・東・春・朝は,全て木気に還元されますが,これらが木気として無理なく縦一列
になっていることが実感されるのは,偏に感覚的把握によることではないでしょうか。
次の「火気」は「赤」で,火気が赤で象徴されることは自明です。その方位が「南」,
季節が「夏」,一日では「昼」ということも自然に納得されます。
火気の本性は「炎上」です。火の性質はいろいろありますが,「炎上」として上へ行
くもの,上昇として捉えられていますのは,後述します水気の本性が「潤下」であるの
に対応します。
三番目の「土気」の色は「黄」です。中国の大地は広大で,それは無限の拡がりを持
つ天に匹敵するものとして意識されていましたことは,前述のとおりです。天に対する
地であって,その結果,土気の方位は「中央」です。その季も季節と季節を結ぶ中央の
「土用」ということになります。
土気の本性は「稼穡カショク」で,五穀を始めとする種々の収穫物を養い育てる意味があ
ります。土気が無ければ何物も生じないのです。
四番目の「金気」の色は「白」で,冷たく光る金属の色です。金気は五気のうち最も
固いです。そこでその季節は万物の固く結実する「秋」,方位もまた落日の「西」です。
金気の本性を「従革」とします。従革は改まることです。秋は万物が枯死に向かう「
殺」の時であり,同時に万物が結実して生命が「更新」する時でもあります。
西の金気の「殺」は,東の木気の「生」に対応します。
五番目の「水気」の色は「黒」,水は暗い低処に集まりますので,黒色の所以です。
季節は「冬」,方位は「北」となります。
水気の本性は「潤下」です。下方へ下方へと流れて止まないのが水の本性で,この本
質は火気の上方志向のそれに常に対置される訳です。
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