08 日本の神々と易・五行〈その7〉
日本の神々と易・五行〈その7〉
参考:岩波書店発行「神々の誕生」
Y オカメ・ヒョットコの誕生
里祭りのお神楽では,オカメとヒョットコの舞楽があちこちで奉納されます。顔面中
央突起のヒョットコと,反対に凹んだ顔のオカメとの絡み合いは,おかしく滑稽でもあ
りますが,この仕草が陰陽の交わりを擬モドくものとすれば納得されます。
1 ヒョットコの定義
「日本民俗事典(大塚民俗学会編)」によれば「ヒョットコは仮面の名称で,口先を
尖らせて曲げている道化面。関東の里神楽の道化役として知られ,オカメと対をなして,
擬き役を演じる。・・・・・・東北地方では竈カマド神として祀られ,火を吹く男の火男面の訛
ナマリともいう」とあります。
かつて朝廷及び伊勢神宮の斎宮寮の竈カマドに奉仕した「戸座ヘザ」という聖童男があり
ました。古昔,内裏の内膳司には三所の竈神が祀られていましたが,戸座はこの竈神に
仕える童男でした。
「延喜式」では,戸座は神祇官に属し,7歳以上,婚期に達する迄の童男で,卜定ボク
ジョウ,即ち占ウラに適うことを任用の条件とするものでした。
一方,竈神の初見は「古事記」上巻で「大年神・・・・・・又,天知迦流美豆売アメチカルミズヒメ
を娶メトラして生める子は,奥津日子神。次に奥津比売オキツヒメ命,またの名は大戸比売神オオ
ベヒメノカミ。此は諸人の以ち拝イツく竈神ぞ」とあります。奥は燠オキ(竈の中に残る炭火のこ
と)のことで,竈神は火の神と解されます。
何の由来で戸座には,このような年齢・外観における厳しい規定があるのでしょうか。
2 易による戸座の推理
森羅万象という通り,この宇宙間は無数の自然現象で満たされています。それら大自
然の現象には天地,上下,寒暑,男女など相対的原理が内在しています。易はこの相対
的な象を陽と陰の二元として捉えています。そうしてこの陰陽二元以前に存在する原初
唯一絶対の存在,即ち「混沌」を易は「太極」とします。
宇宙間の万物は一瞬の間もその活動を停止することなく千変万化します。しかしその
変化は多岐に亘っても,その中には一定の秩序があり,易はこの原理を前述のように陰
陽2個の記号を用いて作図し,八卦の成立状況を,
「易に太極あり。これ両義を生ず。両義は四象を生じ,四象は八卦を生ず(繋辞上
伝)」
と説きます。「八卦図」はその発展状況を示します。
八卦図
八卦 四象 両儀 太極
乾ケン =天
> 老陽
兌ダ =沢
> 陽
離リ =火
> 少陰
震シン =雷
> 太極
巽ソン =風
> 少陽
坎カン =水
> 陰
艮ゴン=山
> 老陰
坤コン =地
八卦が象徴する自然は,天・沢・火・雷・風・水・山・地の八つで,これらは自然の
中で,最も著名なものです。同時に八卦は家族関係を示すものでもあります。
八卦象徴事物一覧表
自然 性状 人間 方位(先天) 方位(後天) 易家族構成
乾ケン 天テン 剛 父 南 西北
兌ダ 沢タク 説ヨロコブ少女 東南 西 少女 金気 沢 5〜15歳
離リ 火カ 麗 中女 東 南 中女 火気 火 15〜30歳
震シン 雷ライ 動 長男 東北 東 長男 木気 雷 30〜40歳
巽ソン 風フウ 入 長女 西南 東南 長女 木気 風 30〜40歳
坎カン 水スイ 陥 中男 西 北 中男 水気 水 15〜30歳
艮ゴン 山サン 止 少男 西北 東北(丑寅)少男 土気 山 5〜15歳
坤コン 地チ 柔 母 北 西南
[次へ進んで下さい]