02 暦 − 暦法とは
 
               暦 − 暦法とは
 
                     参考:雄山閣発行渡邊敏夫著「暦入門」
 
                    為政者による被為政者との相互の信頼関係
                   の基となるものは暦です。納税とか,労働と
                   か,また農耕・売買・契約などは暦によって
                   履行されます。従って,暦を制定することは,
                   為政者の最も大事な権限とされています。本
                   稿は,暦に関するポイントを記述してみまし
                   した。              SYSOP
 
 「暦コヨミ」を構成する要素として,年月日を計算する手法としての「暦法レキホウ」と,そ
の暦法によって計算された年月日に対して年中行事や歳時サイジなどを割り当てる「暦書
レキショ」との二つがあります。
 
〈暦法とは〉
 暦法とは,自然に存在する昼夜の1日を単位として,太陰(月)の満ち欠けの周期の
朔望月29.530588日,季節の移り変わる太陽運行の周期,即ち太陽が春分点から出発して
再び春分点に戻るまでの1太陽年(回帰年)の長さ365.24220日の三つを基本周期として
組み立てられるものです。
 このほかに,それぞれの人々(国の違いとか,宗教の違いなど)が生活に都合のよい
ように,補助的に人工的周期を暦の中に採り入れたため,暦法はこれらの周期をも,う
まく組み合わせて行かなければなりませんので,大変面倒になっています。
 
〈時〉
 暦とは,時の流れを測り,教える方法です。客観的な時の流れ,即ちある出来事が起
こって次の出来事までに,どれだけ時が経過したかを,科学的に測る(公平に測る)必
要があります。
 ところが時の流れである時間というものは,長さや質量のように,予め定められた一
定の基準物と比べて測ることはできません。長さも質量も同一物差を用いて何回も繰り
返して測ることができますが,時間の基準となる時の長さは,瞬間的であって,一度過
ぎ去ってしまったものは元に戻すことはできません。未来はやがて現在となり,現在も
瞬く間に過去のものとなってしまいます。永遠の過去から永劫エイゴウの未来まで,悠久に
流れ去って止まらないのが時です。この時の測定は,他の物理量の測定とは本質的に異
なるものなのです。
 人間が時の変化,即ち時の流れを知るのは,一つの事件発生の瞬間から,次に起こる
事件の発生の瞬間までの前後のという感覚からです。そこで人間の採り得る唯一の方法
は,一つの事件として,物体が位置を変える運動という物理現象を採ります。それは基
準となる時間として,同じような状態が繰り返し起こる自然現象を選ぶか,又はこの基
準となる時間と同じように,正確に繰り返す機械を考案するかです。
 そこでこの両方の条件を満たすものとして,地球の自転1日を基にして,物理学的基
本量の一つである時の単位秒を定めました。しかしその後,地球の自転の長さ1日とい
う周期には,僅かですが変化があることが判り,地球の太陽の周りの公転運動から起こ
る1年を以て,時の単位を決めることにしました。更にこれらの基本単位としての日・
年のほかに,太陰(以下,天体の月を意味します。)の運動から起こる月(以下,暦法
で使う月の長さを表します。),人工的に作られた週・旬というように時間周期を暦法
では採用しています。
 
〈人工的周期 − 週〉
 人間が周期的生活を繰り返すためには,1月よりも更に短い,適当な生活周期が必要
であると考えたからでしょう。
 日数七日の周期を「週」と呼んでいます。
 昔,バビロニアでは太陽暦を用いて,新月から日を29日,又は30日まで数えて7日,
14日,21日,28日を安息日アンソクビとしていたといわれています。
 またユダヤ人は,「旧約聖書」創世紀ソウセイキの初めに,神が6日の間に天地を創造ソウ
ゾウして,7日目に休息した,ということが書かれていることに基づいて,7日の週を用
いています(キリスト教もこれに準じます。)。
 一方,古代エジプトの占星術によれば,日月五星の距離は地球から遠い順に土・木・
火・日・金・水・月の順次であると考え,7日の週を用いていたともいわれています。
 現在の七曜日は,週の最初の日曜日をイエス・キリストの復活の日として神聖な日と
するなど,キリスト教の強い影響を受けております。
 七曜日の英語の呼称は,日Sunday・月Monday・土曜日Saturdayの語源は判別できます
が,残りの4曜日は,ギリシャ神話に出てきますマルス,マーキュリー,ジュピター,
ヴィナスに相当する,チュートン民族の神であるチウ(Tiu),ウヲダン(Woden),ト
ル(Thor),フライヤ(Freya)から出たものです。
 日本に七曜が渡来したのは,空海(弘法大師)が中国から伝来したといわれています
「宿曜経スクヨウキョウ」によるとされています。一般の頒暦ハンレキには,京暦キョウゴヨミが寛文12
年(1672)の暦(伊勢暦はもう少し早くから記しています。)から記載しています。
 明治6年に太陽暦に改暦するに伴って七曜の周期とし,同9年3月12日太政官達ダジ
ョウカンタッシ第27号により,その4月より公務において日曜日が休日となりました。
 このほかの周期では,歴史的には,10日とか,5日とか,8日とかがあります。日本
や中国では10日の周期として「旬」があります。またわが国においては,例えば末尾に
八と三の付く日を「市日」としているところもあります。以前は,朔日ツイタチと十五日を
休んだり,あるいは八の日を休日としたりしていました。
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