75 唐松神社天日宮(協和町)
 
                  参考:秋田県教育委員会発行「秋田の獅子頭」
                             (平成9年3月発行)
 
〈由緒〉
 唐松神社の縁起に拠ると、康平六年(1063)前九年の役で源義家が安倍氏を破った折、
その論功行賞として修験に任じられ、獅子頭の奉納と共に山北三郡を掠カスミに与えられ、
毎年春秋に獅子頭を回した、とある。
 獅子舞(蛇頭神楽)がその頃に始まったと云う確証は無いが、獅子頭(秋田県指定有
形民俗文化財)は室町時代末のものと云われる。これらのことからして同社の獅子舞は、
可成り古い時代にまで遡るものと考えられる。
 また同社の伝承に、延宝八年(1680)佐竹義処が唐松神社を崇敬し、同社の献膳神酒
料として獅子頭の奉納と雄平仙(秋田県南三郡)を掠にしたとある。更に同社に伝わる
記録には、明和四年(1667)唐松神社の別当寺である唐松山堅勝院(享和元年より寺号
光雲寺に変わる)に、寺社奉行から雄平仙八十一カ村に祭礼の前後のみに限り獅子舞巡
回の許可が出ていると云う。以後獅子舞は江戸時代末期まで別当寺である光雲寺が行っ
ていたが、慶応四年(1868)の戊辰戦争のとき光雲寺が焼失し、明治時代以後は唐松神
社が獅子舞を舞うようになった。
 
 唐松神社は延宝八年、藩主佐竹義処は「女一代の守り神」として建立されたものであ
る。また元禄の頃義処の娘岩姫が一際ヒトキワ熱心に唐松神社を信仰したことから、良縁(
十四参り)、授子安産、子育ての神として一般の女性からも信仰されるようになった。
 天日宮には、祭神饒速日命ニギハヤヒノミコトなどの神々と共に、秋田県指定有形民俗文化財
の獅子頭を始め、佐竹義処と娘岩姫が奉納したと伝えられる獅子頭が御神体として祀ら
れている。
 獅子頭は唐松獅子とも呼び、唐松神社の縁起には獅子舞のことを蛇頭神楽と記されて
いる。獅子頭の塗りの黒いものを蛇頭、赤いもの獅子と云う。この蛇頭神楽は別名仙北
神楽とも呼ばれ、仙北郡各地に伝わる獅子は、この唐松神社から出たもので、大曲市伊
豆山神社の獅子舞も蛇頭神楽と呼んでいる。
 
〈獅子頭の巡行〉
 以前は、唐松神社獅子頭の巡行は、春の旧暦三月の節句から七月二十四日の愛宕神社
例祭までと、秋は愛宕神社の例祭から秋の刈り上げまで、主に秋田県南の掠を巡回した。
 各家では、「唐松さんのお獅子」との愛称で親しんでいる。
 各家では新宅や初孫誕生などの目出度い出来事があったときとか、また厄年を迎えた
ときには獅子舞を座敷に入れて舞わせた。戸口での祓いの獅子は一人立であるが、座敷
に上がると二人立の獅子舞となる。
 現在獅子舞を務めるのは、大曲市周辺の神職で大夫一人、獅子舞二人、太鼓一人、笛
一人、手平鉦一人の計六人である。他に行列を組むときは、唐松神社の幟、法螺貝、荷
負いなどである。
 行列は、幟を先頭に、大夫、獅子頭、楽人、荷負いなどと練り歩きとなる。
 各家では白米やお初穂を持って戸口で獅子を迎える。獅子は邪気を祓う意味で口を大
きく開け、歯打ちをしながら頭を左右に振る。そして次々に祓いながら巡行する。
 
〈獅子舞(蛇頭神楽)〉
 巡行に出る前に一行は、唐松神社に寿舞と獅子舞を奉納する。巡行の後も近くのお寺
万松寺に上がり、須弥壇の前に供物と共に獅子頭を安置し、大夫が拝礼する。ここでは
寿舞、獅子舞、山の神舞を舞う。
 唐松神社の獅子舞は三つの舞で構成されている。
 
△寿舞
 大夫が襷を掛け、手に鈴と扇を持って舞う。この舞は神を招くための舞で、四方を踏
み固めながら舞う。
 
△獅子舞
 二人立の獅子舞で、一人が頭を持ち一人が後ろで幕を四方に開く。
 舞の演類は蛇這い、幕返り、あウン、いウン、上り竜、下り竜、首細、餌、歯あわせ、
睨みの十動作がある。
 なお最後に立ち獅子となって縦横無尽に幕を捻れさせて舞う様は、鳥海町の下百宅番
楽や鹿角市の松館天満宮三台山獅子大権現舞(別掲参照)を彷彿させる。
 
△山の神舞
 大夫が四方を踏み固めながら舞う舞である。
 @練り舞 − 扇子を手に四方を祓いながら舞う
 A三踏み − 三拍子で、四股シコを踏むような動作で舞う
 B鬼踏み − 四方を踏み締め、上下に激しく跳ねたりして舞う
 C舛舞 − 舛を持って、四方を固め舞う
 D扇舞 − 襷を懸け、扇子を持って激しく舞う
 E鞘の刀舞 − 鞘のまま刀を抜かずに舞う
 F刀と鞘の舞 − 刀と鞘を両手に持って舞う
 G一本刀の舞 − 刀を持って、四方の悪魔を追い払うように激しく舞う
 H三から拍子 − 唐松神社から受けてきた御幣を持って舞う
 I打納めの舞 − 持ってきた御幣をその家の神棚に納める舞
 J撤饌の舞 − 神前にお供えした神饌を下げて、家人や衆生に撒きながら舞う
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