す 水天宮
 
〈すいてんぐう〉
 水天宮 旧県社、福岡県久留米市瀬下町鎮座
 祭神は天御中主神・安徳天皇・高倉平中宮・二位時子である。寿永四年壇ノ浦合戦の後、
女官按察使伊勢局筑紫川の辺鷺野原に遁れ来り、安徳天皇の尊霊を鎮祭したに起こると
云う。その後諸所を経て、慶安三年(1650)筑後国藩主有馬忠頼は社地社殿を寄進、現
在の地に遷し奉る。水徳の神として、また安産・水難除の霊験が高い。往時禁裡御祈祷所
に仰せつけられた名社で、全国水天宮の総本宮である。
 例祭は五月五〜七日、夏大祭は八月五〜七日で、多数の船によって筑後川を下る様は
盛観を極める。
 境内には幕末維新の先覚者贈正四位青木和泉守保臣を祀る真木神社がある。
 東京の水天宮は、藩主有馬頼徳の時、文政元年(1818)本宮より江戸藩邸に分霊した
ものである。
 
〈すいじんしんこう〉
 水神信仰
 水神信仰とは、水を主宰する神の信仰、又は水そのものの神聖性に対する信仰である。
 水の神は、古典には弥都波能売神ミズハノメノカミ(罔象女神ミヅハノメノカミ)となっている。
 水は単に飲料や農耕などの実利的な用途だけでなく、その清純性が汚穢を祓うために、
祭祀に当たって潔斎に欠くことが出来なかった。
 反面、疫病や災害が水によってもたらされることから、御霊信仰や水への恐怖心も生
まれ、天王祭を盛んにした。
 また、水の豊饒性は人間の繁殖性とも結び付き、水神は女神であり、河童のように小
さな子供が水界に多くあるところから、母子神の信仰を伝え、安産・妊娠祈願の対象とも
なった。別に民間では水神を蛇・鰻などの魚・河童などとすることも多く、多様な信仰を
伝えている。
 
△天王祭テンノウマツリ
 天王祭とは、牛頭ゴヅ天王(素戔嗚尊とも)祭の略称である。
 この祭は疫神送却のための祭で、主として六月十四、十五日に全国で行われている。
特に愛知県の津島神社の天王祭や東京品川の荏原天王祭は有名である。前者は疫神送却
のために河下を漕下り、下流の市腋イチエ(市江)で盛んな祭儀が行われる。これは市腋の
地が津島川の河口にあったので、その河口まで疫神を送った名残と見られる。御神幸は
車楽船ダンジリブネ五艘が津島笛を奏し提灯の光を水上に漂わせながら行われて、大変に賑
わう。後者は東京の夏祭りの走りと云われ、神霊を奉じた豪華な御羽車を船に遷して御
台場に渡御するもので、共に祇園祭に疫神を三条神泉苑に送って盛んに祭儀を執行した
ように、何れも牛頭天王を祭神とする神社が行う疫神送却祭を云う。
 
関連リンク [八幡平地区の神様を訪ねて「05 谷内老人クラブ区域内の神様(水天宮・八坂神社)」]

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