さ1 山神社
 
〈やまのかみ〉
 山の神
 山の神は古典には大山津見神(大山祇神オオヤマツミノカミ)とされ、山の神霊、山を領する神
と考えられたが、火神迦倶土の体から正鹿マサカ山津見、淤縢オド山津見、奥山津見などの
諸神が誕生しているので、大山津見はそれら諸神を統括する神であったものと思われる。
愛媛県大三島町の大山祇神社は、延喜式の大山積神社であり、大山津見神を祭神として
いる。
 民間で信仰される山の神には、農民と山林業・狩猟者の場合で異なるが、その伝承内容
は多様である。農民の信仰で普遍的なのは、山の神が農耕神でもあると云う伝承である。
即ち春は山から降って田の神となり、稲作の守護を終えて秋の終わりに山へ帰って山の
神になると云う去来信仰である。この信仰は山は他界であると観念する神社や民間の諸
儀礼に象徴的に表現されているが、その分析から云い得る点は、山の神は山中に常在す
る祖先神で、春秋両季の祭に来臨する儀礼を基盤にしていることである。
 農民の信仰する山の神と、山林業・狩猟者のそれとを、明確に区別することは出来ない
が、農神との関係を説く伝承の欠如、祭日の不一致、禁忌伝承が後者に多い。後者には
神供が特徴的に伝承され、また特定の樹木が祭りの対象となり、祖先神的観念の欠如乃
至希薄性などが挙げることが出来る。
 
〈さんがくしんこう〉
 山岳信仰
 山岳信仰とは、山岳を母体として営まれる宗教現象である。
 狭義には山岳そのものを崇拝の対象とするアニミズム的(宗教の原初的な超自然観の
一つ)行動を指すと云われる。広義には、山に坐す神霊に対する信仰、山上の祭儀も総
称する。
 水分山ミクマリヤマ、御室山、神奈備山を始め、御岳と云う呼び名も、山の恩恵を得て生活
を営み、農事に勤しんで来た人々の信仰的所産である。
 山を越す旅人も、山に住む神に手向けするのが習わしで、峠の語源をなしたと説かれ
るのも、故あることである。
 霊山を望む地点から発掘された土器の多くが、祭祀遺跡と推定されるのは、民俗学が
明らかにした二所祭場の一つの、里宮に当たるものであろうとも考えられる。
 古記に見る春秋二度の氏神祭と、田の神と山の神の交代を信ずる民間信仰とは、同様
な信仰起源であろうとも考えられる。
 また修験道、諸講社登拝の発生も、山林仏教に触発された新風であったが、元地方民
の神社たる岳麓名社の発展とは不可分のものである。
 
[参考]
〈おおやまづみじんじゃ〉
 大山祇神社 愛媛県越智郡宮浦村に鎮座
 祭神は大山積神オオヤマヅミノカミで、本社は三島大明神とも称する。延喜の式内社で、伊予
国の一宮である。
 武家の信仰篤く、殊に瀬戸内海の水軍の将であった河野氏は本社を氏神として尊崇し
た。瀬戸内の文化・交通上から、古くより海上守護神として上下の厚い尊崇を集む。大正
四年国幣大社、例祭日四月二十二日。本社の宝物としては甲冑刀剣の類おびただしく、
国宝に指定されたもの多数。
 
関連リンク [鹿角の郷の「碑文(由緒)」ウォッチング(神社・その他の碑文)]

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