02 その他の神信仰
 
                      参考:小学館発行「万有百科大事典」
 
〈浅間信仰アサマシンコウ・センゲンシンコウ〉
 浅間信仰、即ち一般に「浅間センゲンさん」と云うのは、静岡県富士宮市の富士山本宮浅
間神社を本社とする富士山信仰のことである。
 同社は現在木花咲耶姫命コノハナサクヤヒメノミコトを祀る。木花とはサクラのことで、白雪を頂い
た富士山の美しさを桜花満開の美に喩タトえたものである。
 中世以降は、富士山を遠望することが出来る地方の人々からも信仰されて広まったが、
当時は神仏習合の思想から、祭神の木花咲耶姫命は浅間大菩薩として信仰された。しか
し民間の浅間信仰は水の神、田の神の信仰であって、農耕時代ではその山の雪の解けて
行く形に従って、田植えの時期を知り、或いはその豊作を祈った。
 また修験道によりその先達センダツに従って富士登山を果たすこともあった。
 
 浅間神社の根本社は、静岡県富士宮市にある旧官幣大社の浅間神社(大宮口)で、東
海道では静岡市に旧国幣小社の浅間神社があり、山梨県側には甲府市郊外に旧国幣中社
の浅間神社がある。その他、静岡県の御殿場口及び山梨県の吉田口にも旧県社の浅間神
社があり、登拝の人々によって信仰された。
 浅間信仰が広く流布したのは、それら神社の御師オンシ先達の力であり、また東京付近の
神社の境内には、小型の富士山を築き、信者をこれに登らせ、浅間信仰を満足させたと
ころもある。
 
 
〈秋葉信仰アキバシンコウ〉
 秋葉信仰とは、静岡県周智郡春野町領家に鎮座する秋葉山本宮秋葉神社(通称秋葉山
権現)の信仰形態を云う。祭神は火之迦具土神ヒノカグツチノカミで、地元の崇敬者は五千人と
云い、中部・関東地方を中心に秋葉講という信仰団体が分布している。霊験は防火にある
と云い、例祭は十二月十五日と十六日である。中世には仏教と習合し別当寺として大登
山霊院(秋葉寺)が併設されていたが、明治初年に廃寺となり、同県磐田郡袋井町久能
の加睡斎カスイサイ(曹洞宗)三尺坊秋葉総本殿に移された。
 
 本社では十二月十五日に火防せヒブセの祈祷を行い、十六日には神輿の渡御、夜は弓の
舞、剣の舞、火の舞などがあって、火防せの呪術ジュジュツが行われる。
 秋葉山には三尺坊と称する天狗が居て、伝えによれば観世音の申し子が越後の蔵王
ザオウ堂十二坊のうちの一つである三尺坊で修行をし、自由自在に飛行出来る神通力を得
た後、白狐ビャッコに乗って秋葉山に移ったと云う。江戸時代には三尺坊が火防せの霊験あ
らたかと信じられて、その面を厨子ズシに入れ、本社から江戸に順送りに送りながら、村
々で祭りをしようとすることが流行したので、貞享二年(1685)に幕府が禁令を出して
止めさせたこともある。
 
 現在は三尺坊秋葉総本殿で、正月十五日に火渡りの儀式がある。これは長さ二間程の
火の上を素足で渡るもので、同時に火防せの祈願を行っている。秋葉講は各々の講を単
位として、毎年の農閑期とか火災が多くなる冬前に秋葉神社に参詣する。多くは代参
ダイサンと云って、籤引きとか当番式で選出された者数人が参詣し、火防せの札を持ち帰
る。講の宿では秋葉神社の掛軸を床に飾り、祭りをして札を講員に配る。
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