中〜下旬 〈伝統行事 − 祭堂内習いの日〉
大日堂の養老礼祭に奉納する祭堂ザイドウ舞楽を練習します。
大里、小豆沢、長嶺、谷内の四ケ部落において、それぞれ舞楽用具を保管庫から迎え
て点検し、能人(舞う人、神さまとも)が厳粛に練習を開始します。練習場所はそれぞ
れの産土神社で、数日間練習します。氏子達も集まり、舞を見て拝みます。参集すると
きは新しい履物で行き、忌中の人、四足二足(獣や鳥)を食べた人は行かないことにな
っています。
長嶺部落では内習のとき、練習が済むとヨドと云うご馳走を戴きます。これは米飯に
味噌汁を掛けたもので、能衆が先ずこれを食べ、また神様のお下がりであると云って、
参拝者にも与えます。風邪を引かないと云います。
二十五日 「天神講の儀・大祓え」
この日は、松舘菅原神社の氏子による天神講の儀を執り行います。
そして今上天皇のご誕生をお祝いし、また時節柄講中の大祓えも致します。
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二十八日 〈伝統行事 − 煤スス掃き〉
お正月を清々しく迎えるため、各家々では家中総出で煤掃きをします。
〈郷内行事 − 煤掃き〉
お正月を清々しく迎えるため、囲炉裏のある各家々では、家中総出で煤掃きをします。
祖霊の命日の日は避け、各自真新しい藁沓を履いて掃除し、終わると神前に魚や神酒な
どを供えて拝礼します。
まず火棚の煤を払い、新しい縄に取り替えます。次ぎに天井や神棚など、最後に茣蓙
ゴザや筵ムシロを叩いて埃を払い出します。高い所は、サセ棒の先に藁束を結わえて箒を作
って払います。サセ棒とは、轡クツワに付けて牛馬を御する棒、又は稲架ハサに稲を掛けると
き、その先に稲束を刺して差し上げる棒です。
〈郷内行事 −井戸掻き 〉
共同井戸では井戸の水を掻き出し、泥を汲み出して水槽や洗場を掃除します。終わっ
て水神様に幣束とお神酒を供えて拝礼します。
年末 〈伝統行事 − 打飯米タハンマイ〉
打飯米とは、年末に檀家が菩提寺に寄進する白米のことです。一例として、五十周忌
までの仏様一柱一升、生存者一人五合などを寄進して、先祖の霊を供養していただくも
のです。
〈郷内行事 − 詰市ツメイチ(詰町とも)〉
毎月の市日は花輪・毛馬内・大湯・尾去沢(谷内も)などの地域ごとに、それぞれ日
を決めてに開かれます。特に花輪の市日は賑やかで、三と八の付く日に開かれ、郷内の
人々は勿論、隣県岩手県二戸郡などから、また観光客も訪れます。
年の瀬には詰市と称して、特別に開かれ、ごった返します。農家の方々は収穫した農
産物や山菜・茸などを持ち込んで売ったりし、帰りには魚介類や加工品、小間物を買い
入れます。
〈伝統行事 − 餅搗ツき〉
各家々では家中総出で餅搗きをします。丸い鏡餅、切り餅用の小豆餅、豆餅、蓬餅か
ら、豆腐のおから入り、紫蘇の葉入り、蜜柑の皮入りなど様々な餅を搗きます。また「
乾餅ホシモチ」用の餅も搗きます。
〈郷内行事 − 餅搗き〉
餅搗きは二十八日から三十日までですが、二十九日は「苦餅クニチノモチ」と云って避けま
す。搗く餅は鏡餅などの役餅や上記のほか、粟餅・ゴボパ(山ゴボウの葉)餅・蕎麦餅
などを搗く地域もあります。
〈伝統行事 − 門松飾り〉
この地域はアカマツの産地につき、子供達はスキーを履いて近くの共有林などから、
枝振りが三段の姿の整った若い赤松を一対と、笹の葉一束を切り取って来ます。それに
紙垂などを取り付け、門口の左右に飾り立てます。
〈郷内行事 − 注連縄シメナワ・注連飾り〉
注連縄は門や入口に張り渡し、これは新しい年に不浄のものが一切家に入らないよう
にするためです。また家の大黒柱や神棚には太い注連縄を張って飾ります。
〈伝統行事 − 正月料理作り〉
お正月期間中に食べる食材は、花輪の詰市(歳末市)で買い求めます。
大根、人参、牛蒡ゴボウ、蒟蒻コンニャク、鯣スルメなどを油と醤油で炒った「でんぶキンピラ」、
干したり塩漬けしたの山菜、塩蔵茸などを水で戻して薄く味付けし、汁が無くなるまで
煮込んだ「煮締め」、大根や人参を千切りにし、小海老などを入れて酢味の「大根なま
す」などがお正月の定番料理です。
粋な主人は、お屠蘇の醸成に意を傾注したりします。
松舘部落の各家々では、地元産の手作り年越蕎麦や烏賊刺し、湯豆腐の薬味として、
「松舘しぼり大根」のたれ(液)作りに励みます。
関連リンク[鹿角の郷の美味探訪(松館しぼり大根)]
また、お正月における女達の労働を軽減する意味から、年末には大鍋に「けぇの汁(
膾の汁?)」を作り置きします。賽の目に切り刻んだ油揚げ豆腐、蒟蒻、大豆、人参、
牛蒡、山菜、茸等々の具沢山を薄味で炊き上げます。それをお正月期間中、毎日小鍋に
小分けし、おつゆ兼副食として食べるのです。
これより先、秋田名物の鰰ハタハタの味噌漬けや大根の切り漬けなどを作ります。即ち新
鮮な鰰はそのまま焼き魚にするより、味噌漬けにして焼くと美味しく食べられます。大
漁時に格安に買い入れて、軽く味噌漬けし、お正月に焼いて食べます。また新鮮な鰰を
鮨スシ(漬け)にして、そのまま又は焼いて食べます。
大根の切り漬けは、鉈ナタ漬けとも云い、豪快に鉈で徳利大根(聖護院大根)などの大
根を一片100〜200g程度の大きさに粗切りし、米麹と塩で漬け込みます。表面に氷が張る
ような寒い所に置き、食べるときは氷を割って取り出します。切り漬けは春までの常備
食で、暖かくなって酢っぱくなったものも、乙なものです。
また鰊ニシン漬けも作り置きします。即ち身欠鰊と、生干しした皮付きの大根、人参(キ
ャベツも)などを短冊切りにし、米麹で漬け込みます。
これらの正月料理のある程度加工したもの、又は食べ頃のものは、歳末の花輪市日の
ほか、街角のお婆ちゃんの出店などで入手出来ます。
関連リンク[美味探訪]
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