2306b 祖先のまつり
 
〈神葬祭の諸儀〉
 
△帰幽奉告
 神葬祭は、氏神さまに故人が亡くなった旨を奉告することから始まります。
 家庭では神棚と祖霊に奉告し、神棚の前面に白い紙(半紙)を貼ります。これは、葬
儀の間、遺族が故人のお祭りに専念するためです。
 また、故人のために特別に祈願をした神社があれば遥拝ヨウハイするなどして、その祈願
を解きます。
 
※末期マツゴの水
 医師により臨終が宣言されると、故人の瞼マブタをそっとなで下ろして目を閉じさせ、
最後の水を含ませてあげます。
 水は生命を保つ上で最も大切なものであることから、今一度目を開けて欲しいという
願いをこめて、故人と縁の深い者から順に行います。
 
※葬儀の前に
 近親者の手で湯潅ユカン(体を洗い清める儀式)をし、遺体を整えて新衣を着せ、男性は
髭を剃り、女性は薄化粧を施して、遺体を安置する殯室に移します。
 
※枕直しの儀
*北枕
 遺体を北枕にするのは、まだ御霊が宿っている遺体を貴いものとして、遺族より上位
 の座位(視線が南を向くように)に安置するからです。
*屏風
 遺体の傍らに立てられる屏風には、殯室の威儀を整える意味と、一定期間故人の御霊
 を守護する意味とがあります。
 また地方によっては、この屏風を逆さに立てるところもあります。
*守り刀
 枕下、又は胸元に置く刀には、魔除けの意味に加えて、医療用具でもある刃物の力で
 遺体が傷むのを防ぐ意味があります。
 
△通夜祭
 家族や生前親しかった者が集まり、夜通し故人を偲シノびます。
 本来、通夜は故人の蘇りを祈るものでした。通常私共が食している物(常饌)や生前
の好物をお供えするのも、こうした意味からです。
 古くは、霊と肉体が分離した状態が死であり、もし霊が遺体に戻れば故人は生き返る
と考えられていました。かつて、酒宴などを設ける地方があったのも、故人とともに食
事をとることで、霊を遺体に引き戻そうとしたからです。
 
△遷霊祭
 通夜祭の後、故人の御霊を仏式の位牌イハイに当たる霊璽に遷し、暫くの間仮御霊舎に安
置します。
 
△葬場祭(告別式)
 故人の御霊を霊璽に遷した後、最後の別れをするお祭りです。
 故人のために装飾された祭壇にお供え物を上げ、斎主サイシュによる祭詞サイシの奏上と、祭
員による誄歌シノビウタが捧げられます。
 祭詞には、故人の経歴、功績、人柄を称え、今後は祖霊となって遺族を見守って下さ
るようにとの祈りがこめられます。また、誄歌には故人を追慕し、御霊を慰め、会葬者
の心を鎮めるなどの意味があります。
 なお、弔辞、弔電などもこの時に読み上げ、生前を偲びます。
 最後に、会葬者が一人ひとり玉串拝礼をして、故人に別れを告げます。
 
△霊前祭
 葬場祭の次の日から行う、故人の御霊を慰め鎮めるお祭りです。
 家族の手によって、仮御霊舎にお供え物をし、拝礼を毎日欠かさず行います。
 中でも、葬儀が総て滞りなく終了したことを奉告する翌日祭、十日毎の十日祭、二十
日祭、三十日祭、四十日祭、五十日祭は、神職を呼び祭詞を相乗していただき、丁寧に
行います。
 そして、一般的には五十日祭を以てって忌明けイミアケ・キアケ(葬儀にかかわる諸儀の終了
)とされ、神職に清祓をしていただき、それまで遠慮してきた神棚のお祭りを再開しま
す。
 
△合祀祭
 五十日祭(地方によっては百日祭又は一年祭)が終わった後、故人の御霊を祖先の霊
と同様にお祭りるために、仮御霊舎から御霊舎に遷すお祭りです。
 故人の霊璽を御とくオトクという白木造りの箱に納め、御霊舎に遷してからは、毎日のお
祭りや年祭のほか、年中行事、人生儀礼の折などに家の祖霊としてお祭りします。
 
△命日・年祭
 年祭には毎年の命日(帰幽キユウの日)に行われる正辰祭セイシンサイと、三年、五年、十年、
二十年、三十年、四十年、五十年の命日に行われる式年祭シキネンサイとがあり、故人の御霊
を慰め、子孫の繁栄を祈ります。
 御とくの中から、命日に当たる祖先の霊璽を取り出し、毎日のお供え物のほかに、お
酒や野菜、果物を始め、故人の好物などもお供えします。
 正辰祭は家族や近親者などを、また式年祭には故人と親しかった方なども招いて行い
ます。
 
△祭りあげ
 子孫の手厚いお祭りが続けられ五十年(地方によっては三十年)が経ち、故人のこと
を知らない世代が遺族の代表となると、それを一つの節目として、祭りあげを行い、以
後は個人としてのお祭りは行わず、歴代の祖先とともにお祭りします。
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