14 御神体のいろいろ
御神体のいろいろ
参考:大法輪閣発行三橋健氏編「神道」
神社に祀られております神様の依代ヨリシロのことを御神体といいます。依代は神霊が宿
るとされております。また御霊代ミタマシロともいいます。御神体は神秘神聖なものですの
で、これの取扱には充分な注意が必要でして、みだりに公開したりするものではありま
せん。寺院などにおいては、御本尊の御開帳ということがありますが、神社においては
原則としてそのようなことは行いません。
御神体として最も一般的なものは、御幣ゴヘイです。一本の木柄(串)に紙垂シデを着け
たもので、極めて単純にして簡素なものです。御幣は、幣帛ヘイハク、幣物ヘイモノとも言いま
すが、元来は神様へのお供えものでありましたが、いつしか神様の象徴と成ってきたと
考えられます。
さて、御神体として第一に挙げられますのは「三種神器」です。昭和天皇が崩御ホウギョ
されますと,直ちに「剱璽等承継の儀」という儀式が行われて今上陛下が即位され、平
成と元号が変わりました。実はこの儀式は、「三種神器」を新帝陛下が受け継ぐ儀式で
あったのです。
神器は、皇祖コウソ天照大御神アマテラスオオミカミから皇室の祖神に親授されましたもので、そ
の後、神武天皇より御歴代の天皇に継承されて今日に至っているものです。鏡、剱、玉
の三つの神器をいい、この中の鏡については、天照大御神の「これの鏡は専らわが御魂
として、わが前に拝イツくがごと、いつき祀れ」というお言葉に依って、祭祀の対象とし
ているのです。剱と玉については、常に天皇の身辺に置かれて御守りとされました。第
十代崇神スジン天皇の時に、鏡は皇居の外に祀られるようになり、これが伊勢の神宮の創
祀に繋がっていきました。即ち伊勢の神宮の御神体は、天照大御神親授の鏡なのです。
またこの時、写しの鏡が鋳られまして、宮中においても祀りが続けられ、今日これは
皇居の賢所カシコドコロに祀られております。なお全国的に鏡を御神体とする神社も沢山あり
ます。
神社建築が発展する以前において、崇敬の対象となり神霊の鎮まるところと考えらた
ものは、山や岩、樹木、泉などの自然物でした。近畿地方には本殿が建設されて以降も、
神霊の鎮まる神聖な山、神体山と崇められているものが沢山あります。奈良県桜井市の
大神オオミワ神社では、現在でも本殿がなく三輪山ミワヤマが神体山として崇敬されています。
三輪山は紡錘形の素晴らしい山でして、これを仰ぐ者に自然と畏敬の念を起こさせてく
れます。
崇敬の対象とされる岩石は、磐座イワクラ・磐境イワサカなどといい、本殿の裏側などに在り
ます。福岡県の宗像ムナカタ大社の沖津宮オキツミヤの鎮座します沖島は、玄界灘のほぼ中心に位
置し、島全体が禁足地とし神職以外の居住を許していません。遣唐使を遣わす時代に、
この神は海上の守護神として朝廷から深い崇敬を受けました。その祭祀は、直接、巨大
な岩石に向かって行われました。戦後、祭祀遺跡は発掘され、改めて当時の祭祀の壮大
な様が想い起こされました。
樹木の場合は神木シンボクといいます。神社として、また鎮守の森として、緑即ち樹木の
生い茂る森林は不可欠です。青々と茂る常磐木トキワギに神霊が宿るとする信仰があるので
す。境内の中の、沢山の木々の中で、殊に立派な老木などが御神木として崇敬の対象と
なっています。
神籬ヒモロギは、常緑樹の枝をめぐらして青柴垣アオシバガキにしたり、榊サカキサの小枝に紙垂
をつけて神霊の依代ヨリシロとするものです。地鎮祭など臨時に神霊をお招きするときに神
籬を用います。
主として仏教文化の影響を受けて以降、神像や神道曼陀羅マンダラなどが信仰の対象にな
っています。吉野水分ミクマリ神社の玉依姫タマヨリヒメ神像や松尾大社の男女神像など、また神
道曼陀羅としては春日神社の神使である鹿を描いた鹿曼陀羅などが有名です。
ただし、このような神像や神影は、前述のとおりほとんど公開されることはありませ
ん。
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