13 神社の構造
 
            神社の構造/神社の建物の特徴
 
                     参考:大法輪閣発行三橋健氏編「神道」
 
 ▼神社の成り立ち
 神々をお迎えして祭り、その神威シンイを讃え、神徳シントクを受け、守護を祈願する風習
は、わが国では古くからみられました。神々を奉斎する一定の施設(神社)のない時代
には、霊地として神聖視されたところ、即ち荘厳な山や清浄な川、神々しい森林や樹木
・岩石などが神奈備カンナビ(神々が鎮まる神聖な森林や山)とか、神籬ヒモロギ(神々が宿
るとされる常緑の樹木)とか、磐座イワクラ(神々が宿るとされる岩石)とかいわれ、神々
の「天下り坐マす処トコロ」として尊崇されていました。それらは神々を拝する特別なとこ
ろとされ、其処において毎年定められた時季に神々をお迎えして、祭祀マツリが行われてい
ました。
 時代の経過とともに、祭祀の仕方は臨時的なものから恒久的なものへと変化し、来臨
する神々(来訪神)から常在して人々を守って下さる神々へと替わり、臨時祭場も発展
して社殿へと展開してきました。
 今日、神社といえば、一般的には神々(祭神)を祭った神殿を指しますが、社殿を含
む周辺に設けられた各種建物や、鬱蒼ウッソウと茂った樹林などをも総合して一つの景観が
形成されておりますと、その総合体すべてを神域とし、神社とみなしてよいでしょう。
 
 ▼鳥居のいろいろ
 神域の入口に鳥居トリイが建てられています。鳥居は俗界と聖なる区域を画する関門とし
て、神社に欠くことのできないものですが、その起源は日本固有説や、朝鮮、中国、印
度などからの伝来とする説などいろいろあります。
 鳥居は2本の柱を立て、その間に貫を入れ、上辺に笠木カサギを載せたところの4本の
木組みを基本構成とし、木造のほか、石・陶・鉄などいろいろなものがみられます。
 [鳥居の形式]
 黒木鳥居:皮つきの丸太(黒木)の4本組みのもの、京都嵯峨野宮ノノミヤ神社など
 神明シンメイ鳥居:柱・笠木とも円柱、貫は角貫のもの、神明造り又は直線的な社殿(本
  殿)様式の場合に用いられ、東京の靖国神社など
 伊勢鳥居:神明鳥居の変形で、笠木が五角形のもの、伊勢神宮のみの様式(他社では
  模倣しないこととなっている)
 鹿島鳥居:神明鳥居の変形で、角形貫の端が外に突き出たもの、茨城県の鹿島神宮
 宇佐(宇佐八幡)鳥居:笠木と其の下部の横木(島木シマギという)の上に屋根を付加
  したもの、大分県の宇佐神宮
 外宮宗ゲグウソウ鳥居:貫が柱の外に出ず、額束ガクヅカ(島木と貫との正面中央に取り付
  けるもの)のないもの
 内宮源ナイグウゲン鳥居:外宮宗鳥居の柱を八角形にしたもの
 明神ミョウジン鳥居:笠木に島木を付けて反らし、柱の上方を内側に傾斜(内ウチ転び)さ
  せ、柱の基礎に亀腹カメバラを置いて固定し、柱と貫の間に楔クサビを挟み、笠木と貫の
  中央の間に額束を取り付けるなど、流ナガレ造りその他の曲線を採用した社殿に広く
  用いられる
 八幡ハチマン鳥居:垂直丸柱、笠木は直線で木口コグチを斜に切り落としたもの、京都の石
  清水イワシミズ八幡宮一の鳥居など
 台輪ダイワ(稲荷)鳥居:柱と笠木の間に台輪を入れ(柱を保護)、柱下に亀腹を置い
  たもの、京都の伏見稲荷大社など
 春日カスガ(藁座ワラザ)鳥居:笠木は反らず、柱の根元を藁座という添木をしたもの、
  奈良の春日大社一の鳥居など
 住吉鳥居:柱・笠木が四角形、額束の両脇を斜木で補強した形のもの、大阪の住吉大
  社など
 中山鳥居:神明鳥居の変形で、笠木が反り、貫は外にでないもの、岡山県の中山神社
  など
 山王サンノウ(破風ハフ・合掌・総合)鳥居:笠木の中央に棟柱を立てて合掌造りの破風(
  装飾板)を載せた形のもの、滋賀県の日吉ヒヨシ大社、東京赤坂の日枝ヒエ神社など
 唐破風カラハフ鳥居:笠木の両端が唐破風のように反り曲がったもの、京都御所西南の厳
  島イツクシマ神社など
 三輪ミワ(三光サンコウ)鳥居:明神鳥居の左右に小形の明神鳥居(脇鳥居)を組み合わせ、
  中央鳥居に扉を備えたもの、奈良県の大神オオミワ神社の拝殿背後の三輪山側にある鳥
  居
 両部リョウブ(四脚ヨツアシ・権現ゴンゲン・稚子柱チゴバシラ)鳥居:柱の前後に控柱(稚子柱
  )を設け、その間に貫を付したもの、安芸の宮島厳島神社の海中大鳥居、山形県の
  出羽三山神社、福井県の気比ケヒ神宮など(神仏混淆の影響の強い神社に多くみられ
  る)
 三柱ミツハシラ鳥居:三方に向く明神鳥居を結合したもの、京都太秦ウズマサの木島コノシマ神社
 注連シメ鳥居:柱を左右に立て注連縄を架けただけのもの、奈良の大神神社拝殿前の鳥
  居
 
 ▼境内ケイダイを巡る
 鳥居を経て参道サンドウを進みますと、途中に神橋シンキョウが架かっています。神橋は手前
の人間の世界と、奥深い社殿のある神の世界との「間マ」を表すものとされます。
 参道の両脇に生える樹林の中を進みながら、参道に程良く配置しております一の鳥居、
二の鳥居、三の鳥居を経るうちに、人々の心は次第に浄化されていきます。
 両側には石灯篭や、獅子シシ・狛犬コマイヌなどが置かれています。
 狛犬(高麗犬・駒犬・胡摩犬とも)はもと、エジプト・ペルシャ・インドなどに起源
を有するといわれ、古くは寝殿造りの宮殿内に敷設された御帳台ミチョウダイ(貴人の寝所)
の前面左右の帷カタビラ(隔ヘダての垂れ布)の鎮子チンス(重し)として使用されました。神
社では社殿の内外に置かれ、悪霊の進入を防ぎ、神社を守護するものとされ、本殿前や
拝殿、社頭の装飾として用いられ、向かって右方に獅子(金又は黄色、口を開き、玉を
踏むもの)、左方に狛犬(銀又は白色、口を閉じ、角を有す)を向かい合わせに据えま
す。材質は木・石・青銅・陶などがあります。
 参道から境内の、より神聖な区域に入るところに神門シンモン(楼ロウ門・唐カラ門・四脚ヨツ
アシ門・随神ズイシン門などとも)があり、その左右に廻廊や透塀スキベイ・玉垣タマガキなどが続
いています。辺りには神社の事務を執ったり祭典の準備をする社務所シャムショや祭典に奉仕
する神職が潔斎ケッサイする斎館サイカン(参篭所サンロウショとも)、神慮シンリョを慰めるための歌舞
や芸能を献ずる神楽殿カグラデン・舞殿マイドノや、祭神がお乗りになる神馬シンメの厩舎キュウシャ
である神馬舎シンメシャ(神厩舎シンキュウシャ)、奉納された額や絵馬エマなどを掲出した絵馬殿エマ
デン、神社に古くから伝世したり奉納された宝物類を展示する宝物殿ホウモツデン(宝物館・
博物館)や、参集殿、参拝者休憩所などの建物があります。
 祭典に奉仕する神職以下参列者が、清浄な神門内に入るためにする修祓シュバツ(お祓
い)をする祓所ハラエド(祓殿ハラエドノ)があり、其処は紙垂シデを垂らした注連縄を四方に
張って常に清浄を保っています。参拝者が神前に進むためには、事前に禊祓ミソギハラエをす
る必要がありますが、それを簡略化し手を洗い口を漱ススぐ手水舎テミズシャ(手水所・御手
洗ミタラシとも)が清らかな水を湛えています。
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