09 巻九
〈相聞シタシミウタ・サウモン〉
入唐使ニットウシに贈オクれる歌ウタ
海若ワタツミの何イヅれの神カミを斎祈イノらばか 往ユくさも来クさも舶フネの早ハヤけむ(巻九)
神亀ジンキノ五年イツトセ戊辰ツチノエタツノ秋アキ八月ハヅキの歌ウタ並マタ短歌ミジカウタ
人ヒトと成ナる 事コトは難カタきを わくらばに 成ナれる吾ワが身ミは 死シニも生イキも 君キミ
が随意マニマと 念オモひつつ 有アりし間アヒダに 虚蝉ウツセミの 代ヨの人ヒトなれば 大王オホキミ
の 御命ミコト恐カシコみ 天離アマサカる 夷ヒナ治ヲサめにと 朝鳥アサトリの 朝アサ立タタしつつ 群
鳥ムラトリの 群立ムラダチ行ユけば 留トマり居イて 吾ワレは恋コひなむ 見ミず久ヒサならば
反歌カヘシウタ
み越道コシヂの雪ユキ零フる山ヤマを越コえむ日ヒは 留トマれる吾ワレを懸カけてしぬばせ(巻九)
天平テンピャウノ五年イツトセ癸酉ミヅノトトリ、遣唐使モロコシニツカハスツカヒの船フネ、難波ナニハを発タちて
海ウミに入イる時トキ、親母ハハの子コに贈オクれる歌ウタ並マタ短歌ミジカウタ
秋芽子アキハギを 妻ツマ問トふ鹿カこそ 一子ヒトリゴに 子コ持モたりといへ 鹿児カコじもの
吾ワが独子ヒトリゴの 草枕クサマクラ 客タビにし往ユけば 竹珠タカダマを 密シジに貫ヌき垂タり
斎戸イハヒベに 木綿ユフ取トりしでて 忌イハひつつ 吾ワが思オモふ吾子アコ 真マ好サキく有アりこ
そ
反歌カヘシウタ
客人タビヒトの宿ヤドり為セむ野ヌに霜シモ降フらば 吾ワが子コ羽裹ハグクめ天アメの鶴群タヅムラ(巻
九)
〈挽歌カナシミウタ・バンカ〉
紀伊国キノクニにて作ヨめる歌ウタ
黄葉モミヂバの過スぎにし子等コラと携タヅサはり 遊アソびし磯イソを見ミれば悲カナしも(巻九)
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