05 巻四
 
〈相聞シタシミウタ・サウモン〉
 
  安倍女郎アベノイラツメの歌ウタ
吾ワが背子セコは物モノな念オモほし事コトし有アらば 火ヒにも水ミヅにも吾ワレなけなくに(巻四
)
 
  伊勢国イセノクニに幸イデマせる時トキ、当麻タギマノ麻呂大夫マロノマヘツギミの妻ツマの作ヨめる歌ウタ
吾ワが背子セコは何処イヅク行ユくらむおきつもの 隠ナバリの山ヤマを今日ケフか超コゆらむ(巻四
)
 
  五年イツトセ(神亀)戊辰ツチノエタツ、大宰オホミコトモチノ少弐スナイスケ石川イシカハノ足人朝臣タリヒトノアソミ
  の遷任セムニムするに、筑前国ツクシノミチノクチノクニ廬城アシキノ駅家ハユマヤに餞ハナムケする歌ウタ
天地アメツチの神カミも助タスけよ草枕クサマクラ 羇タビ行ユく君キミが家イヘに至イタるまで(巻四)
  
  大宰帥オホミコトモチノカミ大伴卿オホトモノマヘツギミ、大弐オホキスケ丹比タヂヒノ県守卿アガタモリノマヘツギミの
  民部卿タミノツカサノカミに遷任セムニムせらるるに賜オクれる歌ウタ
君キミがため醸カみし待酒マチザケ安野ヤスノヌに 独ヒトリや飲ノまむ友トモ無ナしにして(巻四)
 
  大宰オホキミコトモチ大監オホキマツリゴトヒト大伴宿禰オホトモノスクネ百代モモヨの恋コヒの歌ウタ
念オモはぬを思オモふと云イはば大野オホヌなる 三笠杜ミカサノモリの神カミし知シらさむ(巻四)
 
  大宰オホミコトモチノ小典スナイフミヒト山口ヤマグチノ忌寸若麿イミキワカマロ、駅使ハユマヅカヒに賜オクれる歌ウタ
周防スハウなる磐国山イハクニヤマを越コえむ日ヒは 手向タムケよくせよ荒アラし其道ソノミチ(巻四)
 
  八代ヤシロノ女王ヒメミコ、天皇スメラミコト(聖武天皇)に献タテマツれる歌ウタ
君キミに因ヨり言コトの繁シゲきを古郷フルサトの 明日香アスカの河カハに潔身ミソギしに去ユく(巻四
)
  大伴オホトモノ坂上郎女サカノヘノイラツメの歌ウタ
謂イふ言コトの恐カシコき国クニぞ紅クレナイの 色イロにな出イでそ念オモひ死シぬとも(巻四)
 
  紀女郎キノイラツメ、裹物ツトを友トモに賜オクれる歌ウタ
風カゼ高タカく辺ヘには吹フけども妹イモがため 袖ソデさへ沾ヌれて刈カれる玉藻タマモぞ(巻四)
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