05a 日本庭園の手法2
 
 △亭テイ
 四阿アズマヤともいいます。庭園の中に設けられた簡素な建物で,原則として屋根を設
け,壁は吹き抜けとなっています。柱は皮付き,錆サビ丸太などを使い,屋根は主として
桧皮葺ヒワダブキ,藁葺,草葺などです。庭園内の展望の秀でたところに設けられ,休憩す
るところとして利用されます。
 △庭門ニワモン
 露地に設けられる門は露地の形式との関連でその構造,形式が変わります。本来,一
重露地の場合は露地門ロジモンを一カ所だけに設けたものでしたが,二重露地,三重露地と
なるにつれ,露地の内外を仕切るための中門チュウモン,中潜ナカクグリ,木戸キドなどと呼ぶ露
地の門が設けられるようになりました。
 中門は萱葺門,柿葺門,桧皮葺門,竹葺門などの形式が多く用いられ,門扉も竹格子
戸,網代戸,板戸など,外露地門に比べ軽快な意匠のものが選ばれます。
 木戸は2本の柱を掘立てにし,これに目透戸などを付けた簡素なもので,猿戸サルドと
も呼ばれ,内露地への出入口などに多く用いられます。柱は直径9〜10p,長さ1.5〜
1.8m,入口の幅約70pとし,扉は高さ130p,幅は柱間に合わせるのを標準寸法としま
す。扉は猿戸,枝折戸シオリド,揚簀戸アゲスド,半蔀ハジトミなどと呼ばれるものが用いられ,
用います扉の形式によって木戸の名称が決まります。
 中潜は内,外露地の仕切りとして用いられるもので,基本構造は壁塀の潜りにみる構
造を採りますが,潜口の敷居は塀の土台を利用したもの,45pほど地表から高く敷居を
設けるものなどがあり,扉も引戸,釣戸などの構造をしています。潜り口を地表より約
48p高とし,躙口ニジリグチ風の構えとした表千家露地の中潜はその一例です。
 これら中門,中潜,木戸などはその構造,意匠からみて単に露地だけでなく広く庭園
に用いられ,庭門と総称します。
 △揚簀戸アゲスド
 別名半蔀ハジトミとも呼ばれ,内,外露地の出入口に設けられる木戸の一種です。丸竹の
枠に割竹で菱目又は篭目などに組んで,シュロ縄で要所を結び,それを戸のように楯式
木戸に吊って,丸太又は竹の竿で突き上げる仕組みになっていますが,普通はあまり高
く上げないようにします。
 △枝折戸シオリド
 竹垣や生垣に設けられた簡単な扉で,特に茶庭に利用されます。普通は青竹を組み合
わせて枠を作り,これに2p位の割竹の薄く削ソいだものを枠の上から菱目に編み,要所
を針金で止め,交叉したところをシュロ縄,蕨ワラビ縄,又は藤蔓などで結びます。戸の
幅は柱間一杯にして,地上から15pほど高く取り付けます。大きさは普通横70p,縦75
p位で,ときには菱目の間を埋めるために萩の枝などを組み入れることもあります。
 
 △四つ目垣ヨツメガキ
 竹垣の中では最も素朴で,広く用いられる垣の一つです。支柱として,焼き杭仕上げ
の末口7〜9pほどの丸太を1.8p間隔に立て,径2〜3pの唐竹を胴縁として15〜20p
の間隔で支柱に取り付けます。立子タテゴは普通マダケを用い,胴縁を中心にして表,裏
と交互に18p位の間隔で取り付け,その交点をシュロ縄又は蕨縄で結びます。胴縁の間
割(上下の間隔の割り振り),立子の間隔などは意匠によって自由に採ります。吹き寄
せ,小垣,京風四つ目,江戸風四つ目などがあります。
 △建仁寺垣ケンニンジカキ
 竹垣の代表的なものの一つです。支柱の間に太いマダケを幅3p位に割った立子を隙
間なく立て,これを径5〜6pの太竹を二つ割にした押縁で押さえシュロ縄で結び付け
ます。押縁は割竹を3枚重ねにするときもあります。立子の上端にも押縁を当てその上
に二つ割の竹を被せたものを真,立子の頭を平らに切り揃えただけのものを行,立子の
頭を高低をつけて崩したものを草の建仁寺垣と呼びます。胴縁の片側だけに立子をつけ
た一重と両側に立子を立てた袷とがあります。
 △銀閣寺垣ギンカクジガキ
 基礎に高さ50〜60pほどの崩れ石積みを置き,その上に建仁寺垣風の竹垣を設けたも
ので,この背後にはさらに背の高い刈込みの生垣を設け,生垣と竹垣,それに石積みの
調和の美しさを見せるものです。これは銀閣寺(慈照寺,京都)の山門から玄関に通じ
る園路脇に設けられ,高名であったのでこの名称が与えられものとみられます。
 △沼津垣ヌマヅガキ
 一般に網代垣とも呼ばれるものであり,沼津地方に多く使われているためこの名で呼
ばれています。材料は青割竹,忍竹,萱などがあり,これを網代アジロ様に編み込んで作
るもので,主として外囲い用に使われるますが,袖垣として用いられることもあります。
普通は立子を斜めに組み合わせますが,縦横に組み合わせることもあります。
 △矢来垣ヤライガキ
 丸太又は丸竹を組み合わせた柵を総称して矢来といいますが,これを垣根に転用した
ものを矢来垣と呼んでいます。竹を用いたものを竹矢来,丸太を使ったものを丸太矢来
といいますが,組み方によって角矢来,菱矢来とがあります。
 
 △松明垣タイマツガキ
 一般の垣,又は袖垣などに使われる手法です。萩の枝,又はクロモジの枝などを松明
タイマツのように束ね,それを立子として1本又は2〜3本を組み合わせて垣根に仕上げた
ものです。松明の束は,太くして豪快な感じを出すようにしますと効果的です。
 △裾垣スソガキ(籬マガキ)
 高さ30p位に刈り上げて作った低い生垣です。建物や高い生垣の裾,又は竹垣や塀の
裾などを引き締めるために作られるもので,ときには動線の誘導などにも利用されます。
樹種としてはチャ,ドウダンツツジ,ヒメクチナシ,イヨザサ,寒竹などが多く用いら
れ,これらを刈り込んだものです。ときには高い生垣の底部の透けた部分を補うために
使う場合もあります。
 △茶筅垣チャセンガキ
 垣の上部の穂先が左右前後に開いて,茶の湯に使う茶筅の形になるのでこの名称があ
ります。通常萩の枝を束ねて立子としますが,松明垣より繊細な感じに仕上げたもので
す。
 △桧垣ヒガキ
 柱間一間に区切って桟(胴縁)を渡し,その上から桧板を打ち付けて仕上げた垣です。
桟の片面からのみ打ち付けて仕上げる片面仕上げ,両面から打ち付ける両面仕上げ,ま
た桟を中心にして交互に打ち付けて仕上げる方法などがあります。打ち付ける釘は,頭
を扁平に延ばして釘頭ができるだけ目立たないようにするか,又は潰ツブし釘を用いま
す。また間柱を利用して屋根を載せ,ときには屋根と枝との間を透かせて欄間ランマを設け
ることもあります。
 △鉄砲垣テッポウガキ
 仕切垣にも袖垣にも使用します。普通は太い竹をそのまま立子とし,上部は節止めと
して胴縁の前後に交互に並べて固定して仕上げる方法をいいます。竹の太さ,それぞれ
の節の高さ,化粧縄の掛け方など,また仕上げ方法として松明状の立子や茶筅状の立子
を利用することもあります。
 
 △高麗垣コウライガキ
 菱目に編んだ垣で,袖垣にも仕切垣にも使われます。材料は青竹,萩の枝を束ねたも
のなどを使い,これを菱目に編んで交叉したところを藤蔓,蕨縄などで結束します。一
般に光悦寺垣と称しているものは,高麗垣の変形であろうと考えられます。
 △袖垣ソデガキ
 袖塀ソデベイと呼ばれるものも含めて,これは茶室や書院の縁先近く,建物の一部に附
属して設けられるもので,隠蔽の目的あるいは庭園の一部を区画する目的で用いられま
す。これらは堅蔀タテジトミや網代塀アジロベイにその源流を求め得るといわれます。その意
匠,構造,材料は,設置されるところによって区々ですが,意匠的には建仁寺垣,網代
垣,鉄砲垣,四つ目垣などの工法を応用したとみられる形式のものが広く用いられます。
 △生垣(生籬)イケガキ
 生垣は自然形に仕立てるものと,刈込んで整形に仕立てるものとに大別できますが,
普通は刈込んで整形したものを用います。この刈込垣は,始めに苗木を植え,その列の
両面から胴縁(割竹)で挟み,立子タテゴ(支柱)を入れて支えとします。苗の間隔は25
〜45p,多くは1.8mの柱間に5〜6本あてとします。苗木の生長に従って度々刈込を繰
り返しながら,所定の形に仕立てていきます。刈込に強く,日陰によく育ち,病虫害に
強い樹種を選んで下さい。
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