02a 野菜「葉菜類−葉」
◎タカナ・カラシナ類 高菜,辛子菜
アブラナ科 原産地:中央アジア
プロフィール:タカナ・カラシナ類は,中央アジアを原産地する説が有力で,野生種
は発見されていないが,カブの仲間とクロガラシが交雑して成立したものと考えられま
す。カラシナ類には多種類ありますが,大きくはカラシナ類,タカナ類,多肉性タカナ
類,茎タカナ類,根ガラシ類のグループに分けられます。何れもピリッとした辛味と香り
が特徴で,ビタミンAやCも豊富です。食用用野菜としては中国,辛子と油を採るため
ものとしてはインドやヨーロッパでそれぞれ栽培し改良されました。わが国は平安時代
以前に伝わったとされています。
葉カラシナ類は,カラシナ類の中でも最も原始的な種類とされています。中国菜のセ
リホン(中国野菜の項参照)はこれに近い品種です。
一方中国華南において成立したと云われるタカナ類には,カツオ菜や大葉タカナなど
の品種があり,関東地方以南で広く栽培され,各地に多くの在来種があります。
タカナ類の中でも,株が大型で葉脈が太く肉厚になっているものを多肉性タカナ類と
呼び,一つのグループと考えられます。わが国に入ったのは明治時代中頃で,各地で様
々な品種が作られ,主に漬物として利用されています。主に暖地に多いが,東北地方に
順化した山形青菜ヤマガサセイサイや,これに近い芭蕉菜バショウナもあります。中国から導入され
たコブタカナ(中国野菜の項参照)や,結球タカナもこの仲間です。
またザーサイ(中国野菜の項参照)は茎タカナの中で最も有名ですが,わが国での栽
培はありません。根ガラシ類は,肥大した根を食用にします。
△葉カラシナ類の主な品種
@葉カラシナ:葉カラシナ類の中に葉カラシナと云う品種があります。葉カラシナは
葉が細くて切れ込みが多く,濃緑色で辛味があり,タカナ類よりも小型です。
A黄カラシナ:葉カラシナ類と近縁の品種で,若い花茎も食用になります。黄カラシ
ナの種子は黄色く,粉末にして香辛料として利用します。辛子用には他に黒ガラシ,
白ガラシ,アビシニアガニシがあります。
B山潮菜ヤマシオナ:葉カラシナ類に属する品種で福岡県筑後川流域で作られます。薹が立
ち始まった頃に収穫し,漬物にします。
Cマスタードグリーン:葉カラシナの近縁で,葉先がフリル状になっており,葉面に
も細かい縮みがあります。漬物に用いられますが,薄手なので生食もできます。
D大葉オオバタカナ:葉が大型で,形に切れ込みが少ないのが特徴です。葉の色は淡緑
から濃緑色で,赤タカナには縁が紫色を帯びるものから全体が紫色になるものまで
あります(葉が緑色のものを青葉タカナ,紫紅色のものを赤タカナと云う)。
Eカツオ菜:福岡県博多周辺において栽培される小型の在来種です。煮ると鰹カツオの出
汁ダシがいらない程味が良いと,この名が付きました。正月の雑煮には欠かせませ
ん。
F三池ミイケタカナ:多肉性タカナの代表種で福岡が主産地です。葉は大きく紫色を帯
び,中央の葉脈は厚く幅広い。野沢菜,広島菜と共にわが国三大漬菜と呼ばれてい
ます。
G柳河ヤナガワタカナ:多肉性タカナの一種で,緑色の葉のものが多いが,少し赤紫色を
帯びたものもあります。中国から入った青菜セイサイが順化したものです。
△食べ方と効能
タカナもカラシナも旬は,冬の終わりから春にかけてです。
タカナは長崎タカナとか広島タカナ,石川タカナなど土地の名が付いている品種が多
く,葉を掻き取って食べるのでカキナと呼ぶ地方もあります。タカナもカラシナも色が
鮮やかで,葉も軸も元気がよく,軸に艶があるものが新鮮です。葉肉が厚くて堅いもの,
葉の周囲が破れたものは避けて下さい。西日本では代表的な漬物用の葉の菜で,鼈甲ベッ
コウ漬けや当座漬けにすることが多い。
カラシナには葉や種子に特有の香りと辛味があり,種子からはカラシ油が採れます。
油を絞った後に乾燥,粉砕して香辛料の辛子として利用されます。この辛味は配糖体シ
ニグリンによるものですが,シニグリン自身には辛味はなく,酸素ミロシナーゼによっ
て加水分解され,アリルイソチオシアネートを生じて苦味が出ます。両方とも漬物にす
る際は,まずたっぷりの熱湯にサッと通し,直ぐに水に晒して水気を絞ります。茹で過ぎ
ますと,特有の辛味が無くなるので注意して下さい。
タカナは繊維が堅いので生では食べられません。漬物にするほか,茹でたものを油揚
げと合わせて煮浸しにしても美味しい。また漬物をチャーハンやラーメンに加えたり,
挽肉と一緒に炒めたりしますと,独特の風味が備わり,より美味しくなります。
両方ともカロチン,ビタミンC,カルシウム,鉄を多く含みますが,漬物にしますと
カロチンやビタミンCの量は減少します。
[次へ進んで下さい]