22a 岩石(地層)に生える苔とその友達〈シダ〉
〈シダ類の生態と分布〉
シダ類が一般に好んで生えるところは,山間ヤマアイの半日陰地や日陰地の湿ったところ
といえます。しかし,種類によって,大体の生えるところは決まっています。
△水性のシダ類:デンジソウ,サンショウモ,アカウキクサ,オオアカウキクサ,ミ
ズワラビなど
△樹の幹や岩上に生えるもの:シシラン,マメヅタ,ビロウドシダ,ノキシノブ,ヒ
メノキシノブ,シノブ,オオタニワタリなど。このようなシダ類が生えるのは一般に空
中湿度が高いところです。岩の上を好んで生えるものの中には,特に石灰岩上に好んで
生えているものがあります。例えば,クモノスシダ,ツルデシダ,エビガラシダ,ヒメ
ウラジロシダその他です。
△地上生のシダ類:この仲間にはいくつかの型がみられますが,いずれのものでも,
岩上とか樹上などには生えません。
△人家付近などの路傍にある:イヌワラビ,シケシダ,ミゾシダ,ゲジゲジシダ。海
岸近くなどではオニヤブソテツ,ハマホラシノブなどがあり,石垣の間などにはイノモ
トソウがあります。
△腐植土の溜まった山地の林床:オシダ,ヤマソテツ,ヤマイヌワラビ,シラネワラ
ビ,ミヤマクマワラビ,ミヤマイタチシダ。低い山地ではジュウモンジシダ,ヤブソテ
ツ,イノデの仲間などがあります。
△湿った崖や土手に生える:ヘラシダ,リョウメンシダ,コモチシダ,オオバノイノ
モトソウ,オオレンシダその他があります。
△原野とか川岸などに生える:スギナ,コウヤワラビ,ホシダ,ワラビ,ハシゴシダ
などがあり,海岸近くではタマシダがあります。
シダ類は生えるところの標高によっても大体種類が決まっています。一般に暖かい地
方にシダ類は多くの種類が見られます。したがって日本列島の中でも,南の九州南部や
四国,紀伊半島南部などには多数の種類が見られますが,北海道では少数になります。
また高山にはシダ類の種類もわずかになりますが,海岸近くの暖かくて湿った林の中な
どでは沢山の種類が見られることになります。
△高山帯にあるもの:ヒメスギラン,ヒモカズラ,タカネヒカゲノカズラなど。
△亜高山帯にあるもの:標高2000mあたりにある,主に針葉樹の林が発達するところ
で,メシダ,ナヨシダ,ミヤマイタチシダ,ミヤマクマワラビ,シラネワラビ,ヤマド
リゼンマイ,オニゼンマイなどがあります。
△山地帯にあるもの:標高800〜2000mの,主にミズナラ,カエデ,ブナなどの落葉樹
が生えるところです。ここにはヤマイヌワラビ,オクマワラビ,フクロシダ,オシャク
ジデシダ,ミヤマノキシノブ,サカゲイノデ,ヘビノネゴザ,ミヤマシシガシラ,クジ
ャクシダ,ハコネシダなどがあります。
△低地にあるもの:標高が500〜600m以下のところで,暖かい地方だとシイ,カシな
どの常緑樹が生えます。代表的なものはホソバカナワラビ,オオカナワラビ,ジュウモ
ンジシダ,ヘラシダ,ウラジロ,イシカグマ,オオキジノオシダ,ホシダ,ノコギリシ
ダなどがあります。
シダ類はなんといってもあの姿,形が面白いのですが,この葉は冬に枯れてなくなる
もの(このようなものを夏緑性といいます)と,冬でも葉があるもの(常緑性といいま
す)があります。夏緑性のものは,冬になると根茎だけになり,翌年になって,ここか
らぜんまい状に巻いた芽が出てきます。常緑性のものでも,春になると新しい芽を出し
ます。シダ類の芽は独特の形をしていて,どんなものでも,ぜんまい状に巻いています。
△夏緑性のもの:イヌワラビ,ワラビ,アオネカズラ,クジャクシダ,ヘビノネゴザ,
シラネワラビ,イヌガンソクなど。
△常緑性のもの:イノモトソウ,タマシダ,オオカナワラビ,ヤマイタチシダ,ベニ
シダ,ヘラシダなど。
常緑性のものでも,例えばイノデなどは,寒いところに生えたものでは冬になると葉
が地面に倒れたようになり,枯れたように見えます。また,イヌワラビなども,本来は
夏緑性ですが,暖かいところでは常緑性のようになることもあります。一般に夏緑性の
ものでも,温室とかフレームの中で育てますと常緑性になることがあります。
シダ類は根茎を持っていて,冬に葉が枯れても長い間,株としては生きているものが
多い(このようなものを多年生といいます)のですが,反対にその寿命が短い一年で終
わるもの(一年生といいます)があります。
一年生のシダはミズワラビで,これは冬には胞子の形で湿った土の中で眠っています。
他のシダは多年性で,いったい,何年くらい長く生きていられるか興味あるところです
が,はっきりしたことは分かっていません。
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