05 森林の土を掌に〈土壌の調べ方 その2〉
森林の土を掌に〈野外における土壌及び生成環境の調べ方 その2〉
〈環境要因の調べ方〉
土壌をとりまく環境を構成する要因として気候,地形,地質及び植生などがあります
が,それらはいずれも土壌生成に深く関与していますので,土壌生成因子とも呼ばれて
います。
△気候
気候因子のうちで岩石や地層の風化及び土壌の生成や発達と関係が深い温度や降水量
について,調査地点近くの気象観測所のデータを調べます。また調査地点一帯の冬期の
積雪状態,融雪時期,土壌凍結並びに無霜期間及び春先の乾燥風の有無並びにその方向
など,局所的な気候環境についても聞き取りなどによって調査します。
△地形
地形は,間接的には調査地点周辺の局所的な気候環境を支配する要因の一つであると
ともに,直接的には土壌物質の安定度,堆積状態及び水分環境などに影響を与えます。
地形を土壌の生成環境の一環としてとらえ,その土壌の生成や性質にかかわりあいが
深い地形要素を見きわめられるよう,例えば隆起準平原山地の山頂緩斜面とか,壮年期
山地の凸型急斜面下部あるいは火山性山麓緩斜面にどと調査表示します。
△地質
地質はその構成要素である岩石の風化により土壌母材を提供するとともに,土壌の生
成に大きな影響を与える地形を支配する因子の一つです。
岩片や礫などは風化作用により表面が汚れているので,ハンマーなどで割って内部の
新鮮な破壊面を出して,ルーペなどで観察します。
・火成岩
火成岩は高温のマグマが冷却する際に,それから晶出した鉱物の集合体ですので,一
般に結晶質であり,その組織は通常粒状か斑状を呈し,構成鉱物の組み合わせに大体の
規則性が認められます。
・・産状による火成岩の分類
深成岩は,マグマが地下の深いところで地盤に貫入しゆっくり冷却してできたと考え
られる火成岩で,構成鉱物が肉眼で区別できるほどの大きさ(数o程度)で,かつほぼ
同じ大きさの結晶鉱物の組み合わせからなります。花崗岩,閃緑岩,斑れい岩,橄欖カン
ラン岩などがあります。
火山岩は,マグマが地表近くあるいは地表に噴出して急速に冷却してできたと考えら
れる火成岩で,一般にガラスないし非常に微細な鉱物結晶の集合よりなるち密な部分(
石基という)と,マグマの噴出前に晶出していた比較的大型の結晶(斑晶という)とか
らなる斑状組織を呈します。このうちち密な石基の部分には,マグマが固まるとき,含
まれていたガスが逃げたあとである穴がところどころにあいていることがあります。流
紋岩,安山岩,玄武岩などはその例です。
半深成岩は,マグマが地下浅所などで,深成岩の生成条件と火成岩の生成条件との中
間の条件のもとで冷却し固結したと考えられる岩石で,比較的大きい結晶である斑晶と,
微細な結晶と石基からなる斑状組織を持ちます。石基の部分は火山岩の場合ほどち密で
はなく,またすべて結晶質で全くガラス質物質を含まないのが特徴です。石英斑岩,ひ
ん岩,輝緑岩などがあります。
・・化学組成や鉱物組成による火成岩の分類
酸性岩は,岩石中の珪酸SiO2分が66%以上のもので,石英や長石特にアルカリ長石
を主要構成鉱物とし,その他斜長石や有色鉱物(主に黒雲母,ときに角閃石)を含みま
す。有色鉱物の含有量が石英や長石などの無色鉱物と比較してはるかに少ないため,岩
石は一般に淡色(優白質)です。花崗岩,石英斑岩,流紋岩などがこれに属します。
中性岩は,岩石中の珪酸分が52〜66%のもので,一般に中性〜曹灰長石や角閃石など
を主成分鉱物とし,石英を含みませんが,含んでいてもその量は少ないです。角閃石や
輝石及び黒雲母などの有色鉱物の含有量が酸性岩よりやや多いので,岩石の色がやや暗
色を呈します。閃緑岩,ひん岩,安山岩などがあります。
塩基性岩は,岩石中の珪酸分が45〜52%のもので,一般に灰〜亜灰長石や輝石を主成
分鉱物とし,ときに橄欖石を含みますが,石英を全く含みません。有色鉱物の含有量が
多いため(有色鉱物と無色鉱物とがほぼ等量),岩石は一般に暗色を呈します。斑れい
岩,輝緑岩,玄武岩などはその例です。
超塩基性岩は,岩石中の珪酸分が45%より少ないもので,主として橄欖石,輝石,角
閃石及び鉄の酸化物などからできており,無色鉱物の含有量が少なく,超苦鉄質岩とも
呼ばれ,一般にち密で黄緑色〜黒緑色を呈します。橄欖岩はその例です。
主な火成岩の分類
色調→ 白っぽい ←―――――――――――→ 黒っぽい
化学組成→ 酸性岩 中性岩 塩基性岩 超塩基性岩
(SiO2含有率) (66%以上) (66〜52%) (52〜45%) (45%以下)
鉱物組成→ 石英,正長石 中性〜曹灰長 灰〜亜灰長石 橄欖石,輝石
斜長石,黒雲 石,角閃石 輝石,橄欖石 角閃石,粒紋
母 石
(組成) (産状)
粒が粗い 深成岩 花崗岩 閃緑岩 斑れい岩 橄欖岩
↑
| 半深成岩 石英斑岩 ひん岩 輝緑岩 ---
↓
粒が細かい 火山岩 流紋岩 安山岩 玄武岩 ---
普通の火成岩は,この表にあたるもののうちどれか,あるいはそれらの中間的なもの
ですが,そのほかほとんど有色鉱物を含まない優白色の半深成岩であるアプライト(半
花崗岩)やペグマタイト(巨晶花崗岩)などがあります。
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