04d 森林の土を掌に〈土壌の調べ方 その1〉
 
 △溶脱・集積
 土壌を構成している成分には,土壌生成作用などによって移動や再配列され難い比較
的粗粒で安定な部分(骨格粒子)と,比較的移動や再配列されやすい微細な部分(プラ
ズマ)とがあります。
 プラズマは主として粘土鉱物,一次鉱物の微小粒子,遊離酸化物及び腐植などからな
りますが,これらが土層内のある部位から溶解あるいは膠質溶液として選び去られる現
象が溶脱であり,逆にそれらが運ばれてきて,ある部分に富化される現象が集積です。
 溶脱や集積現象が層状に認められる場合は,それを溶脱層あるいは集積層のように独
立した層位として取扱い,また斑状の場合は形状,大きさ,量,色,境界の様子などを
調べ,形状は膜状,糸状,糸根状,点状,雲状,管状,盤状などに区分します。
 
 △水湿状態
 土壌中に含まれている水のなかで土壌の乾湿や植物の生育に関係の深いものは,土壌
の毛管孔隙内に保持されている毛管水や,重力により土粒間を自由に移動する重力水な
ど土壌粒子との結びつきが弱い種類の水です。
 野外調査における水湿状態は次のように区分されます。
  乾:土塊を強く握っても手のひらに全然湿り気が残らないもの
  潤:土塊を強く握ると手のひらに湿り気が残るもの
  湿:土塊を強く握っても水滴が落ちず,親指と人差指の間で強く押すと水のにじみ
    でるもの
  多湿:土塊を手のひらで強く握ると水滴がにじみでるもの
  過湿:土塊を手のひらにのせると自然に水滴が落ちるもの
 潤や湿のところでは,植物に有効な水分が適度に含まれており,しかも通気性も概し
て良好なことが多いので林木の生産力は一般に高いです。
 
 △根
 土壌断面内における根の形状やその分布の特徴は,その土壌が林木の成育にどのよう
な影響を及ぼしているかを知ることができます。
 根は,まず草本と木本とに分け,それぞれの大きさによって次の三つに区分し,量は
断面内に現れているものを,極めて多,多,有り,まれ,なしの5段階に区分します。
 ・根の大きさ
  太:径2p以上のもの
  中:径2o以上〜2p未満のもの
  細:2o未満のもの
 ・根の量
  すこぶる富む:根の切り口の面積の合計が20%以上のもの
  富む:10%以上〜20%未満のもの
  含む:5%以上〜10%未満のもの
  あり:5%未満のもの
 このうち径2o未満の細根は,水分や養分を吸収するなど林
活発に行います。
 根の発達を阻害する要因としては,有効水分の欠乏,いわゆる土層の乾燥や,物理性
の急激な悪化,すなわち過湿な土層や盤層などの固結層の存在などが考えられます。
 
 △菌糸束及び菌根
 土壌断面内には,いろいろの種類の白糸状の菌糸束が認められますが,なかでもマツ
・モミ・ツガ・シイ・クリ・トガサワラなどの木の根に共存する外生菌根は,尾根筋な
どに分布する養分に乏しい乾性型の土壌に発達し,その菌糸束が土壌粒子と絡みあって
細粒状構造を形成したり,その遺体が集積して灰白色・海綿状の菌糸網層(M層)を形
成したりします。
 これらは乾性型の土壌に形成されますが,いったん形成されると水を吸収し難く,ま
た水を浸透し難くする性質が強いので,それらの土壌はますます乾燥しやすくなり,土
壌の乾性の指標となります。
 
 △堆積様式
 土壌のもとである母材の堆積のし方を堆積様式といいます。
  残積土(定積土):母岩(基岩)が風化してできた母材が,そのままの位置で土壌
   になったもので,古い段丘や,古い火山灰などの堆積物はこれに含む
  匍行土:土層の上部は斜面上方からの土砂や礫が堆積したもので,孔隙に富み,比
   較的不安定ですが,下部はち密で安定な斜面中腹の土壌
  崩積土:斜面上方から土砂や礫が崩れ落ちてたまった斜面下部の土壌
  水積土:水で遠くから運ばれてきて,新しくたまった土壌
  風積土:風で遠くから運ばれてきて,新しくたまった土壌
 このうち崩積土は,大小さまざまな角礫に富み,土層は深く通気透水性が良好で,地
形的に水分や養分が集まりやすいので,林木などの生産力の高い土壌を形成します。
 
 △母材の不連続性
 異なった種類の物質が積み重なったものを母材として発達した土壌断面内では,A層
とB層,あるいはB層とC層との間などで母材の種類が異なることがあります。
 崩積土や水積土並びに風積土などのように運搬されて堆積したものを母材とする土壌
に,このような母材の不連続が認められることが多いです。
 
             参考 「森林土壌の調べ方とその性質」林野弘済会発行

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