05 鹿角の蛾
参考:鹿角市発行「鹿角市史」
鹿角地方の蛾類の分布については昭和50・51年に高橋雅弥氏により、十和田湖南部山地
帯を中心に詳細な調査が行われている。
「鹿角市北半の鱗翅類第一報」高橋雅弥(『秋田県立博物館研究報告』第二号1977)
では、鹿角市北半の十和田湖南部山地を中心に大蛾類の調査結果について、18科863種と
云う多数のリストとその生息地域の特徴などについて述べている。
主なる調査地点は熊取沢出合・小又沢・北野・田代平・菩提野の五地点で、各ケ所三〜八
回の調査が行われている。その他に小田代川出合・田代森下・大渉付近・熊取入口・広森川
出合・冷川林道・発荷峠・大湯・湯瀬などでもそれぞれ一〜三回の調査を行っている。
〈調査結果によるリストの科名と種数〉
スズメガ科 20種
イボタガ科 1種
ヤママユガ科 8種
カレハガ科 10種
オビガ科 1種
カイコガ科 2種
ヒトリガ科 34種
トラガ科 2種
ヤガ科 408種
シャチホコガ科 62種
ドクガ科 15種
トガリバガ科 18種
オオカギバガ科 1種
カギバガ科 13種
シャクガ科 257種
フタオガ科 2種
イラガ科 8種
マダラガ科 1種
以上18科 863種
〈分布上の特徴について〉
1、日本海の樹林帯においてはブナ林が主体となるので、ブナ食のブナアオシャチホコ・
マルモンシャチホコ・ゴマシオキタシバ・ヨシノキタシバ・ヒメギンガ・ウラギンガなどが
優占種となるのが普通であるが、十和田湖附近はブナ林が未発達であるためそれに変わ
って特異な種が多い。中には十和田地方にのみ分布する種も含まれている。十和田特産
の種類としてはヨモギガ・アトジロシロホシヨトウ・ヒロバトガリエダシャク・スエモエダ
シャク・ヒメシタコバネナミシャク・チャイロコバネナミシャク等が挙げられる。
2、北野においては、シラカンバ・ズミ・コブニレ等の樹種が残存しているため、シラカ
ンバを食すると思われるシロケンモン・ウスシタキリガ・モンキシロシャチホコ等、比較
的高標高の地に分布する種が見られるほか、ズミを食うと思われるナシケンモン・ハイモ
ンキシタバ、コブニレ食のケンモンキタシバなどもよく飛来している。ただし、シバ食
のスジキリヨトウは意外に少ない。
3、田代平ではかなり単純であるが、マツバラシラクモヨトウ・シロミミハイイロヨトウ
・キバネシロテンウスグロヨトウなど大量に飛来し、人工的な牧草地によく順応している
と思われる。また、シロミミハイイロヨトウなど、牧草の害虫とされるものも見られる。
4、平地の菩提野や大湯の人家近いところでは、比較的暖地性の種類がかなり見付かっ
た。シモフリスズメ・コフサヤガ・キタバコガ・タバコガ・ナガトガリバなどは、大湯より
上流域では全く採集されていないものである。
秋田県内の蛾の分布については、その後も高橋氏・佐々木氏等によって新たな報告が続
けられている。鹿角地方についても多くの種類が追補されつつあり、中には分布上注目
される種についての発表もされている。
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