[詳細探訪] 参考:小学館発行「万有百科大事典」 〈チョウとガの区別〉 一般に鱗翅目をチョウ(蝶)とガ(蛾)の二つに大別するが、この両者は対立する自 然群ではなく、この用法は慣例的なものである。従って両者を厳密に区別する特徴を指 摘出来ないのは、寧ろ当然である。外国ではチョウとガを特に区別しないことが多い。 鱗翅目は分類学的には同脈亜目と異脈亜目に大別される。いまその特徴とそれに含ま れる上科の名称を示すと次のようになる。 (1) 同脈亜目 原始的な群で前翅マエバネと後翅はほぼ同形、後翅の脈(翅脈)は10〜12 本。前翅の後縁の後縁の基部に小さな翅垂があって後翅を挟む。この亜目の中で最も原 始的なコバネガ上科では口器は大顎アゴがあって咀嚼ソシャク型。コバネガ上科、スイコバネ ガ上科、コウモリガ上科の3上科がこれに含まれる。種類数は少ない。 (2) 異脈亜目 同脈亜目より高等なもので、後翅の脈は8本以下。垂翅はなく、その代わ りに鉤形の密毛(翅刺)が後翅の前縁の基部にあるか、或いはこれを欠く。口器は吸収 型。種類数は多く鱗翅目の99%以上の種がこの亜目に入る。ムグリチビガ上科、マガリ ガ上科、ボクトウガ上科、ヒロズコガ上科、ハマキガ上科、マダラガ上科、カストニア 上科、メイガ上科、シャクガ上科、ヤガ上科、カイコガ上科、スズメガ上科、イカリモ ンガ上科、セセリチョウ上科、アゲハチョウ上科の15の上科がこの亜目に含まれ、これ らの上科の大部分は更に多くの科に分類される。 以上のうち異脈亜目に属するセセリチョウ上科とアゲハチョウ上科の2群を合わせてチ ョウと呼び、それ以外の全ての鱗翅目をガと呼ぶ。従ってチョウとガは対立する二つの 自然群ではないが、一般的に云われている次の特徴は両者を区別する目安となろう。 @チョウでは触角の形は、先端に向かって徐々に或いは急激に膨フクらんだ棍棒コンボウ状か 撥バチ形、又は先端近くに膨らんだ部分があり、それより徐々に細まる。 ガでは糸状又は種々の程度の櫛歯クシバ状。 A止まるときにチョウは翅ハネを立てるが、ガは水平に開く。 Bチョウは昼間に、ガは夜間に活動する。 このうちAとBは日本産のものでも例外が多く、判断の基準とならないが、@の特徴 は日本産のものに限っては例外がない(外国にはある)ので、この特徴での区別は可能 である。 なお、鱗翅目は全て完全変態を行うもので、チョウには成虫、卵、幼虫、蛹サナギの四 つの段階ステージがある。