02e 魅惑の植物世界
〈最も小さな植物〉
最も小さく,最も原始的な植物は藻類やバクテリアで,何処にでもいます。藻類は淡
水や塩水に群落をなし,ときには単独で生活しています。また土や温泉の中,他の動植
物や雪の上でも生活しています。
藻類よりももっと何処にでもいるのがバクテリアで,あるものは人間の体内に入り込
み,生きた細胞や死んだ細胞から養分を採り,ときには人間の食物やお互いを食べ合っ
て生活しています。バクテリアは非常に小さく,最も大きな種を1000個以上並べても,
やっと約2.5pになるかならないかです。1滴の液体に5000万個,一摘みの土に1億個以
上のバクテリアが含まれていることがあります。
〈不純物を糧カテにする生物 − 菌〉
殆どのバクテリアと同じように,菌類にも葉緑素がありません。菌類は,死んだり,腐
りかけているものや,他の生物を食べて生きています。菌類には,よく知られている食
用キノコ,毒キノコ,ホコリダケ,寄生植物としての変形菌や黒穂病菌,動枯れ病菌,
ウドンコ病菌,それに類する菌も含まれています。変形菌は,分類学者が植物に分類す
べきか,動物に分類すべきかで,長い間決めかねていた程の難物であり,両者の性質を
兼ね備えています。変形菌は,多くの核を持った流動状の原形質の塊からできており,
細胞膜はありません。それらは扇状に広がってゆっくりと食物の上を流動しながら,養
分を吸収します。
〈大昔を偲ばせる植物〉
次の植物は根がなく,種子もできません。これらの植物は数百万年もの間殆ど変化し
ていないので,古代の絶滅した種の構造と性質を調べるのに,非常に便利な手がかりと
なります。
マツバランには,葉がなく,初めて木質の保護組織と,その内部に水を運ぶ組織を発
達させた植物の直系子孫です。マツバランの祖先と同じ時期に初めて地球上に発生した
のが苔類です。しかし苔類はマツバランのような組織を発達させることができず,その
結果,この植物は決して3p或いは5pよりも大きくなることはありませんでした。ト
クサ類は細胞膜の上に珪酸が沈積しているため,やや硬質です。この植物はアメリカ人
の祖先によって陶器を擦り磨くのに使われ,"擦り磨き用の藺イ"と呼ばれました。
これらの植物が共有している特質は無性と有性の世代を交互に繰り返して生殖するこ
とです。マツバランは葉のない枝に鱗茎状の嚢を作り,そこから胞子を地面に散播きま
す。胞子は地下で小植物に生育し,初めて雄と雌の生殖器官で覆われます。湿気の多い
地中で,恐らく精子は卵子へ泳いで到達するのでしょう。受精が行われた後に,胞子を
作るもう一つの植物体が現れてきます。
〈最初に葉をつけた植物〉
シダ類は太古以来,葉がなく生殖は水に頼る有性世代を続けています。一般に知られ
ているシダは,実は無性世代のもので,真の葉と真の根を有する進んだ構造の植物です。
この点が,シダと下等植物の最も異なる特徴です。シダ類の葉はいろいろ変化に富んだ
形と大きさを有し,葉の下側に胞子を着けることが多い。シダの茎は木の幹のようにな
るのもありますが,大抵は地中に横たわって生育しています。
〈最初に種子をつけた植物〉
種子を持つ植物の先祖である松柏類は,今でも生存しています。最初はじめじめした
湿地帯でのみ生殖をしていたが,次第に広範囲な地域へと進出し,植物の世界では一つ
の変革を示しています。松柏類では雄の生殖細胞が花粉の中で作られ,雌の生殖器官へ
風によって運ばれ,其処で受精が行われます。受精によってできた種子は熟するまで雌
の球果の中で養われ,養分は其処で吸収されるために,胞子に比べて生存する機会によ
り多く恵まれているのです。
〈被子植物〉
現存している全ての植物種のうち,半分以上は種子が子房の中で作られる,被子植物
に分類されています。これらの被子植物は,最も高等な組織を持っているというだけで
なく,最も種類が豊富であり,また変異に富んでいて,そのうえ広い地域に亘って分布
しています。
被子植物は,非常に優れた生育条件を備えています。中でも花は,被子植物にとって
最も重要なものであり,特有の構造を持っています。其処では松柏類が行っている雌雄
別々の球果による生殖よりも,ずっと合理的に生殖が行われます。花には普通,花粉と
それを受ける胚珠の両方があり,松柏類のように風で受粉したり,昆虫を引き付けて受
粉したりしますが,独力で受粉するものもあります。
〈双子葉植物と単子葉植物の相違〉
被子植物は,双子葉植物と単子葉植物の二つの大きな群に分けられます。その違いは,
双子葉植物は養分の貯蔵と光合成のために,一般には2枚の子葉,つまり実生の葉を持
っていますが,単子葉植物はただ1枚の子葉しかありません。単子葉植物はより進化し
たグループであり,花を構成している部分は少なく,被子植物が簡単な体制へ進化して
行く傾向があることを物語っています。
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