18e 植物の見方2
 
●果実
 果実は子房シボウの成熟したものです。一つの子房から作られたものを単果タンカといい,
多くの子房が集まってできたものが集合果シュウゴウカで,キンポウゲ科,バラ科,モクレン
科,クワ科などに見られます。単果は成熟しますと乾燥する乾果カンカと成熟しても多肉で
液汁を含む液果エキカとに分けられます。乾果には熟すと裂ける裂開果と,熟しても裂けな
い不裂開果(閉果)があります。
@乾果で裂開するもの
 袋果タイカ:1個の心皮シンピから作られるもので,1側のみで裂開します。ボタン属,オ
ウレン属,オダマキ属,シキミ属などです。
 豆果トウカ:1個の心皮から作られ,両側が裂開して種子を落とします。莢果キョウカともい
い,マメ科に見られます。
 さく果:多数の心皮から作られるもので,その数だけ裂開します。スミレ科,アカバ
ナ科,カタバミ科,ツリフネソウ科,ツツジ科,ラン科などに見られます。さく果の裂
け方は子房室の壁に沿って裂ける胞間裂開ホウカンレッカイ(オトギリソウ科,アマ科,ミゾハ
コベ科,ミソハギ属,キカシグサ属など),子房室の背面で裂ける胞背裂開ホウハイレッカイ(
アカバナ属,マツヨイグサ属,イチヤクソウ属,ユリ属,アヤメ属),子房空間の隔壁
カクヘキが裂けて,中心に胎座タイザと隔壁の一部が残る胞軸裂開ホウジクレッカイ(ヒルガオ科など
)の3型があります。
 孔開コウカイさく果:さく果の一型で孔から種子を放出するもので,ケシ属,キキョウソ
ウ属などに見られます。
 長角果チョウカクカ:2個の心皮からなり,2室に分かれ,細長い角状で各室には多数の種
子を付けます。熟して基部から上方へ向かって2片に裂けます。アブラナ科に多く見ら
れます。
 短角果タンカクカ:長角果に似ますが,果実の軸は短く幅が広いもので,ナズナ属に見られ
ます。
 蓋果ガイカ:多数の心皮が合成したもので,成熟しますと果皮は横に裂け,上部の蓋フタ
が離れて種子を散らします。オオバコ,スベリヒユ,マツバボタン,ゴキヅルなどに見
られます。
A乾果で裂開しないもの
 分離ブンリ翼果ヨクカ:翅果シカともいいます。翼状の付属物を持ち風に乗って飛散する果実
で,2個の種子にはそれぞれの翼が付いています。カエデ科に見られます。これに似て
果実の周辺部に1個の翼がでくるものを単に翼果といって区別し,ニレ属,ハンノキ属,
トネリコ属などに見られます。
 双懸果ソウケンカ:果実は2分果に分かれ,各分果は分果柄ブンカヘイによって支えられ下垂
し,1個の種子を持っています。セリ科に見られます。
 堅果ケンカ:果皮は堅く,普通1個ときに2〜数個の種子を持ち,2個以上の心皮からな
る果実で,多くは苞ホウの一種である殻斗カクトに入っています。ブナ科に多く見られます。
堅果で分果の小型のものを小堅果ショウケンカといい,タデ属,カバノキ属,シソ科などに見
られます。
 痩果ソウカ:1個の心皮からできたもので,果皮は堅く,中に1個の種子を含みます。キ
ク果,キンポウゲ属,イチリンソウ属などに見られます。
 「注」従来,スゲ属,シンジュガヤ属,オランダイチゴ属などの果実は痩果として扱
われていますが,心皮は2個からなり,厳密な意味では小堅果になります。またキク科
やマツムシソウ科の果実は痩果として扱われますが,これらの花は子房下位なので果実
の外皮は花床に包まれている偽果ギカの一種です。これに対してはキク果又は下位痩果の
名もありますが,本稿では従来の慣例通りにします。
 穎果エイカ:痩果の一種で成熟しますと果皮と種皮は密着し,表面は恰も種皮の如く見え
ます。イネ科に見られます。
 胞果ホウカ:果嚢カノウ,果胞カホウなどともいい,スゲ属に見られます。痩果の一種で果皮が
少し薄くて種子を緩く包んで袋となり,果皮と種皮が離れているものです。
 節果セッカ:豆果の一形で裂開しないで1種子毎に区切りがあります。ヌスビトハギ属,
イワオウギ属,クサネムに見られます。
B液果(多肉果)
 石果セキカ:核果カクカともいい,外側に軟らかい果肉があり,中心部に堅い核があります。
サクラ属,クルミなどに見られます。外果皮は薄く,中果皮は多肉で食用となり,内果
皮は堅く核と呼ばれ,中に1個の種子を持っています。
 液果(漿果ショウカ):内果皮が堅い核とならないで,果皮全体が多肉となったものです。
ブドウ,ナス,トマト,ホオズキなどに見られます。
 瓜ウリ状果:漿果の一種で外果皮が堅くなり,小さな種子を多数含み,多心皮の合成に
よってできた果実で,ウリ科に見られます。
 梨ナシ状科:花床カショウが発達して子房を包んだ果実で,ボケ属,ナナカマド属,リンゴ
属,ナシ属などに見られます。
 蜜柑ミカン状果:内果皮は袋状タイジョウで薄く丈夫な皮があり,その袋の中には多数の食用
となる液汁を含んだ毛があります。ミカン類に見られます。
 薔薇バラ状果:壷状の花托カタクが肥大し,多数の痩果を包む集合果の一種で,ノイバラ,
ハマナスなどバラ属に見られます。
 苺イチゴ状果:花床が肥大して盛り上がり,液質となり,表面に小さな痩果を付けるも
ので,ヘビイチゴ,オランダイチゴなどに見られます。
 木苺キイチゴ状果:苺状果に似ますが,表面には小さな石果(小石果)を付けたもので,
キイチゴ属に見られます。
 無花果イチジク状果:花序が凹クボんで袋状となり,中に多数の果実を包むもので,イチ
ジク,イヌビワ,アコウ,イタビカズラなどに見られます。
 桑クワ状花:花序の軸が肥大した周りに多数の果実が付くもので,クワやパイナップル
に見られます。
 仮種皮果カシュヒカ:胚珠ハイシュの柄や胎座タイザの一部が発達してできた仮種皮が胚珠を包
み,果実状に見える種子で,カヤ,イヌガ,イチイなどに見られます。
                                     以上
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