11b 美味しい野草 因みに
 
6 鞭毛藻ベンモウソウ類
                                       
  ほしみどろ類から進化した鞭毛藻類は鞭毛を有し,これで水中を游泳する一群の単
 細胞植物である。最も普通に知られているのは夜の海岸から見える海中の夜光虫であ
 る。進化系統樹のみどりむし類,褐色鞭毛藻,緑色もなど類がこの類であるが,現在
 (昭和51年)のところ食べられるものはない。しかし食糧問題の危機が迫っている現
 代では,いずれミドリムシも前記のミドリゴモ同様食べるようになるであろう。
                                       
7 硅藻ケイソウ類
                                       
  直接人間の食糧とはならないが,魚類の飼料として重要であることは前記の鞭毛藻
 類や下等藻類と同様であり,これは間接的な食糧植物ということになる。
                                       
8 子嚢シノウ菌類
                                       
  これはカビ類のことである。コウジカビは糖化酵素を含んでいて酒や醤油の醸造に
 用いられ,酵母菌類はチマーゼの働きで葡萄糖をアルコールに変化させるから,各種
 のアルコール飲料の醸造に欠くことができない。例としてビール酵母菌,葡萄酒酵母
 菌,日本酒酵母菌,及び琉球の泡盛酵母菌などがある。
                                       
9 擔子タンシ菌類(菌蕈)
                                       
  これはキノコ類のことである。トウモロコシの果実穂にできる黒色の瘤もキノコ類
 で,トウモロコシノオバケといい,欧米では食用とするが日本では食べない。
                                       
10 地衣チイ類
                                       
  地衣類という植物は,2種類の植物が相寄り共生的な生活をしている特有のもので
 ある。すなわち前記の子嚢菌類或いは擔子菌類と,藍藻類或いは下等の緑藻との結合
 によって一体となっている。
  ウメノキゴケは梅の古木の樹皮に白く付いているもの。北欧を旅するとこの類で花
 輪をつくり,多く宗教的行事に用いられているのを見うけるが食用にはならない。
  イワタケ(岩茸)は深山懸崖の岩面に生じ,直径3〜10pの葉状体のものである。
 日本ではこれを食用とし味噌汁の実によく登山家が愛好する。
                                       
11 超微生ビセイ菌
                                       
  ヴィルス(バイラス)は,実は多くの生物の核が細胞外に飛び出したもので,植物
 では茸の核が飛び出したものが最も多いのでここに取り扱った。現在(昭和51年)の
 ところヴィルスは栽培植物に害(トマト,ジャガイモ,イネ,クローバーなどの萎縮
 病)を及ぼすが,食用となる植物に有効という事実はない。
                                       
12 初陸生リクセイ植物
                                       
  地質学上のデボン紀になると,陸が頭を上げかけて海棚が上下し,潮が満ちると海
 になり,潮が引くと潟ができるようになった。これに伴って海藻がその陸上に向かっ
 て移転し,形態も陸上生活に適するように変化した。先ず緑藻類が陸上生活化し,植
 物の進化系統樹の原始蘚苔センタイ類(つのごけ類と緑藻の中間形態のもので,化石なく,
 理論的な想像植物である),つのごけ類,現代のゼニゴケ(銭苔)を代表とする苔タイ
 類,スギゴケ(杉苔)を代表とする蘚セン類と進化した。
  食べられる野草としての蘚苔類は,有毒成分があることもなく食べても差し支えな
 いが,古来この仲間を食べた記録はない。食べるとすれば,先ずゼニゴケから食べる
 ことになるであろう。
                                       
13 羊歯シダ植物
                                       
  植物の進化系統樹で,古まつばらん類,しだ類,とくさ類,ひかげのかづら類の一
 群である。地質学上の古生代,中生代に全盛を極めた羊歯植物は全地球を被っていた。
 その時代の羊歯植物が地球の火山活動で蒸焼となり,現在の石炭の材料となったこと
 からも,如何にその当時,羊歯植物が繁茂していたかがうかがわれる。
  食べられるものとしては極く普通のワラビ,ゼンマイ,ツクシの他に,ミズワラビ
 を味噌汁の実とするのもよいし,オオタニワタリの若葉を焼き蒸し,油塩で食べる。
                                       
14 羊歯状種子植物
                                       
  現代の地球上には生育しない植物で,体は羊歯状であるが,繁殖は羊歯類のように
 胞子によらず種子植物のように種子をつくるもので,いわば羊歯と種子植物の中間的
 な植物であった。
  食用には関係ないが,これが食用となる種子植物に進化する前の形態という意味で
 ここにあげる。
  羊歯類や羊歯状種子植物の繁茂した古生代の地球は現在のような海洋はなく陸続き
 の北半球と陸続きの南半球から成り立っていた。それが中生代となり,ヒマラヤ造山
 運動の余波で日本列島が浮き上がった頃から,羊歯状植物が一歩進化して裸子ラシ植物
 となった。
                                       
15 裸子植物・ジュウイ花序カジョ群・被子ヒシ植物
                                       
  種子植物には裸子植物と被子植物がある。これまでの下等植物は花がなく胞子で繁
 殖したが,裸子植物から花という器官ができ樹木,草本で空中生活を行うようになっ
 たため,精子は水中を游泳することができなくなり,下等植物の精虫はその尾を切り
 捨てて花粉となり,虫や風の媒介で受精を営むようになった。
  裸子植物は,例えばソテツのように生殖器である子房が裸で下等なもの,被子植物
 は子房が珠皮で被われている高等なものである。
  ジュウイ花序群とは花序が長い穂となって垂れる群で,枝が変化してめしべになっ
 ている。
                                       
 食用となる種子植物のいくつかを列記する。
 ソテツ,イチョウ,イチイ,カヤ,コノテガシワ,ネズ(ネズミサシ),チョウセン
 ゴヨウ,アカマツ,バッコヤナギ(ヤマネコヤナギ),ヤマナラシ,ヤマモモ,ノグ
 ルミ,オニグルミ,ヒメグルミ,ペーカン,ツノハシバミ,ハシバミ,クリ,ドング
 リ類,エノキ,ムクノキ,ケヤキ,アサ,クワ,コウゾ,カナムグラ,イタビカズラ,
 イヌビワ,カラムシ,イラクサ
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