07a 花粉症と森林
6 花粉の飛散
スギの空中浮遊花粉は九州では2月上旬,東北北部では4月上旬頃に観察され始める。
飛散開始は気温の影響を強く受けるために暖冬の年には九州で1月上旬,東北で3月上
旬に観察され始めた年がある。飛散開始から3〜4週間後にピークがくる。同じ年の飛
散期間内でも気象条件によって日々の飛散量は変化し,同じ日内でも時刻によって変動
する。スギ花粉の飛散開始から終了までの期間は2〜3ケ月間である。スギ花粉の飛散
の終わり近くとヒノキ花粉の飛散開始が重なる事が多いのでヒノキまで含めるとさらに
1ケ月程度長くなる。花粉の飛散量は年による変動が大きい。
花粉の生産と飛散に関係する要因
発育段階 気象条件 花粉生産と飛散状況
5月
6月
7月 | 雄花の形成 高温少雨----→雄花・多------→花粉数増加
8月 | 冷夏--------→雄花・少------→花粉数減少
9月
10月 | 花粉の形成
11月 |
12月
1月
2月 | 花粉の放出 異常低温----→雄花の寒害----→飛散数減少
3月 | (開花期) 多雨--------→飛びにくい----→飛散数減少
4月 | 気候不順----→開花の乱れ----→集中度低下
5月
7 スギ花粉飛散の予測
都市部に飛来した花粉粒数と開花前年7月,8月の気温との関係を求めておいて,飛
来する花粉の総数を予測したり,また1月1日からの積算温度と花粉飛来開始日との関
係から飛来開始を予測する試みがあり,数個の回帰式が報告されている。
予測の精度を上げるためには,@樹木固有の反応,A局所的な立地条件,B直前の気
象条件などを考慮に入れる必要がある。
8 花粉が飛散しやすい条件
@晴れ又は曇り
A最高気温が高い
B湿度が低い
Cやや強い南風の後北風に変化したとき(関東地方)
D前日が雨
9 空中花粉の測定法
簡便な測定法としてスライドガラスに落下した花粉粒を数える方法がある。スライド
ガラスに白色ワセリンあるいはグリセリンを薄く塗布し,屋外で水平にして24時間放置
する。その後,室内に持ち込んで顕微鏡で花粉を数える。検鏡する時に塩基性フクシン
やゲンチアナバイオレットで染色すると見やすい。1平方p当たりの花粉粒数を求めて
1日の粒数とする。
このようにして落下してくる花粉を捕捉する方法のほかに,空中を浮遊する花粉を捕
捉したり,一定量の空気中の密度を測定したりするための各種の捕集器がある。
10 スギ花粉症対策
(1)地域毎の花粉生産量・飛散の予測システムの構築
気象,地形,植生など地域毎の特性を考慮した予測システムが必要
(2)花粉発生源の減少
都市部の公園や緑地では花粉多産木の伐倒,少生産性系統や多樹腫の植栽
(3)発病・発症の予防と治療
マスク(ミクロスクリーン),空中清浄器,薬剤
(4)大気汚染や自動車排気ガスの減少
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