08b 森林機能保全:環境保全林
模式的に示すと,
|−→ @若齢一斉林 −−−−−−−→ A壮齢多層林(上層は高木性樹種,下層
| (保全効果小) は低木,草本類などの異樹種による階
| 層構造,保全効果大)
| |
| −−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
| |
| ↓
| B林冠の破壊,疎林化 −−−−−−→ Cササなどの繁茂,低木林
| (老齢化,風倒など保 | (保全効果小)
| 全効果小) | |
| |←−−−−−−−−|
| |
| ↓
|−−−−−−−−−−−− D高木性樹種の更新
(保全効果小)
環境保全林の管理の基本は,Aのような望ましい森林を維持することにあるため極端
な林齢の若返りとなる一斉皆伐,林冠の極端な疎開を行わず,林冠に穴があいたとき,
直ちに後継樹がその穴を埋められるような,樹冠層が連続した択伐林,非皆伐複層林を
造成することにある。
2 管理方法の区分と取り扱い
(1)未立木地の森林化
A 山腹崩壊地などの緑化(防災林造成参照のこと)
荒廃林地の一次緑化である。ともすれば堰堤など工作物を造ることで緑化が終
了したとする場合であるが,あくまでも安定した土壌条件を作出し,最終的にそ
の地方の極相林を造成する。息の長い仕事である。
B 農耕跡地,放牧草地などの森林造成
(2)過密に一斉人工林の多層化,樹種構成の多様化
A 針葉樹単純一斉林からの複層林造成
環境保全林の設置目的に応じて,これまでの一斉皆伐造林を主体とした経済林
を環境保全機能を重視した施業である複層(多段)林を造成する。
B 異齢,針広混交林造成
経済林造成を目的とした針葉樹造林地では,気象,土壌条件などの影響で必ず
しもすべて目標どおりに成林できない場合がある。このような林地では,潔癖な
下刈りや除伐を行わず,植栽木以外の樹種の保残,育成を図る。針葉樹林が経済
的に成立する林分においても,レクリエーションエリアなど,風致景観ら維持す
るために広葉樹類を積極的に残す,あるいは植栽することで樹種構成を多様化す
る。
(3)天然林・自然林の維持
A 禁伐林的取り扱い
開発利用が進んだ現代の森林状態においては,自然要素の強い天然林を自然的
風致景観の維持,森林造成技術の基礎となる森林の遷移機構の解明の場,遺伝子
源保護などの目的から,維持管理をまったく行わない原生的な森林の保全が必要
となる。
B 択伐林施業
環境保全機能の高い森林については前述したが,現在の森林造成技術のなかで
は,そのような森林を造成,維持できる,もっとも優れた方法は択伐林施業であ
る。その要点を述べる。
@択伐林の条件は,幼・壮・老齢の林木が混成していること(理論的には1年生
から主伐樹齢きでのものが混生している。),林木の樹齢が増すにつれて本数
が漸減し,しかもその減少がなめらかなこと,それぞれの樹齢に応じた健全な
樹形,形質,大きさをもつことである。
A上記@の択伐林の形は,択伐林を構成する林木がそれぞれ適度な陽光を享受し,
立体的に適正に配置されていることになる。
B択伐木は,被害木,衰弱木,過熱木,活力の衰えた木の順に選定する。
C理想的な択伐林は,更新が容易な林分であり,上層林冠形成木を伐採するだけ
で更新樹の成長が期待できる。しかし,我が国の森林には一部のものを除いて
このような森林は少ない。
D更新補助手段として林床の刈払い,更新困難地では植栽を行う必要がある。
E択伐林の造成においても,非皆伐作業と同様に,林内における光環境の整備と
伐採時の下層木の損傷防止が最重要課題となる。
3 環境保全林造成・維持の問題点
作業が集約的になるため,技術者の育成,林道の完備が必要となる。都市近郊林では,
林道などの整備により,入り込み者の増加が期待されるが,踏圧,盗採などの害,ゴミ
などの不法投棄が増加する。
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