08 森林機能保全:環境保全林
森林機能保全:環境保全林(抜粋) 資料:林業技術ハンドブック
T 環境保全林の配置 - 都市周辺林を主体として
(森林総合研究所 柳 次郎氏)
1 都市周辺林の配置計画の性格
計画の手順や手法は,求められているものが理想案か実行可能案なのかにより異なっ
たものになる。既存の土地利用計画・諸事業は一応考察の外におき,各々の林地の自然
的属性(面積・市街地からの位置・林相・地形・地質など)を把握した上で,周辺林と
しての諸機能を十分に果たし得るよう配置を考えるのが理想案とすれば,前記の諸計画,
諸事業を与件とみて,自然的属性との調和,調整の上に立って配置を考えるのが実行可
能案と言えるであろう。
地域の未来のあるべき姿を示す計画が求められるならば理想案によることが望ましい
が,要求される計画は現状改善を目的とし,可能な事項から逐次実行することを期待さ
れている場合が多いので既存諸計画との斉合性を重視した上で,周辺林諸機能の向上を
求める実行可能案をその内容とする計画づくりが実行に当たって,より支障が少ないで
あろう。公的手続を経て成立した既存諸計画は,そのなかに地域住民の要望と利害調整
過程がすでに含まれているものと見なし得るものが多いので周辺林計画の実施に当たっ
ての利害衝突も理想案の場合に比較して少ないものと考えられるからである。
2 配置計画の手順
(1)既存の地域諸計画諸制度の検討と調整
周辺林配置計画は地域計画の一部分を形成するものであるから,対象となる都市
とその周辺に関連する諸地域計画・土地利用計画,及び土地関連諸制度・諸事業な
どを洩らさず調査して検討調整を試みなければならない。この諸計画等はすべて周
辺林配置計画の与件ないし前提となるものである。
検討対象となる諸計画としては,周辺林配置計画の対象となる都市を中心として
次のようなものが考えられよう。
○町づくり計画・地域開発保全計画・広域市町村計画・定住圏構想(計画)など
諸制度に関しては以下の諸法令による区域指定(地区指定)を検討すべきである。
○都市計画法による区域指定・農振法による農用地区指定・森林法による保安林
区域指定・自然公園法による地区指定・県環境保全条例による地区指定など
その他,自然休養林及び農林業の構造改善関連の諸事業,指定文化財地区別分布,
緑のマスタープラン等に関しても知っておく必要がある。それらの既存諸計画諸事
業は後述のゾーニング作業の際の基礎資料となり,ゾーン別に周辺林配置の方針を
決めるときの資料にも利用される。
(2)森林機能別分級図の作成
機能別分級図は森林が保有する諸機能の客観的評価のためにつくられ,ゾーニン
グの基礎資料となるもので,都市周辺林計画にも応用できるであろう。機能別分級
の方法は以下の5種類の機能に分けることが多いのでこれによることにしたい。
@保健保全機能
A木材生産機能
B水源かん養機能
C洪水防止機能
D山崩れ防止機能
分級図作製のフローチャートと分級の際に使用する評価因子を次に示す。
森林機能別分級図フローチャート
地形図 5万分の1地形図(国土地理院発行)
地質図 |
土壌図 |←−− タテ・ヨコ40等分
土地生産力図 ↓
自然公園・史跡名勝等 1メッシュ約25haのメッシュ図
保健保全関係配置図 (会津若松市全域)
植生自然度図 |
現存植生図等々 ↓
| マイラー(半透明)原図化
| |
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|−−−−−→ オーバーレイ ←−−−−|
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|←−−−−− 機能別評価因子毎のカテゴリー
| 区分基準による読みとり
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|←−−−−− 評価分級基準
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↓
機能別分級図
機能別評価因子
機能の種類 評価因子
保健保全 景観圏域,河川湖沼,史跡等,植生,中心市街地からの距離
木材生産 標高,傾斜度,土地生産力
国土保全 傾斜度,斜面形状,地質
洪水防止 標高,傾斜度,斜面形状
水源かん養 標高,傾斜度,土壌
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