07a 森林機能保全:防災林造成
                                        
    樹木の耐塩風性
                                       
気候帯 大           中            小
   (被害は殆どなし)   (落葉しても発芽回復する)(枯死することが多い)
                                       
亜熱帯             モクマオウ
                                       
暖帯  クロマツ,オオバヤシャ イヌマキ,シイノキ,ウバ チャ,エニシダ,イズ
    ブシ,タブノキ,ヤブニ メガシ,イヌビワ,クスノ センリョウ
    ッケイ,サカキ,シャリ キ,ヤマモモ,ハマヒサカ
    ンバイ,トベラ,マサキ, キ,ナンテン,アカメガシ
    マルバグミ,ヒメユズリ ワ,ハゼノキ
    ハ,ヤブツバキ,モチノ
    キ,カクレミノ,オオバ
    イボタ,クチナシ
                                       
暖温帯 ノイバラ,イヌツゲ,サ クリ,コナラ,エゴノキ, アカマツ
    ツキ          フジ,ケヤキ,アセビ,ト
                ウカエデ,
                                       
冷温帯 キャラボク       カシワ,リョウブ,ノリウ スギ,ヒノキ,ヒヨク
                ツギ,ニセアカシヤ    ヒバ
                                (高橋啓二氏)
                                       
2 海岸防風林
                                       
 海岸防風林は厳しい立地条件のもとにあるため,強風地帯では,最前線の50〜60m幅の
林分は,正常の成育を示さないのが一般的である。しかし,この林分の犠牲と保障のも
とに,内陸側につづく林分が成立していくのである。
 現段階では,風速の減少,塩風の防止作用などと,林帯の維持更新から,海岸林の幅
の一般的基準は,立地条件の厳しい日本海側では200〜250m,温和な太平洋側では150〜
200mとするのが妥当と考えられる。ただし,局地的な立地条件や予想される災害要因に
応じて,この幅を増加する。
 この海側林帯から内陸へ,樹高の15倍程度の間隔で50m程の林帯を数列配置するのは一
層の効果がえられる。
 海岸防風林は,なるべく汀線近くに連続して設定する。林帯に切れ目をつけるのは極
力避ける。また,枝下が透くと,防風機能が低下するので,下木の植栽や潅木の導入を
図る。更新にあたっては,内陸側から帯状皆伐法を順次繰り返す方法をとる。
 クロマツ林はうっ閉を早めるために,1万本/haの蜜植をするのが普通で,植栽8〜10
年でうっ閉度が100%になる。そのままにしておくと枯死したり,枯損して樹冠層が薄
く,形状比(樹高/胸高直径)の高い衰弱した林分になるので,10年生から除間伐を行
って成育を促進し,健全な林分を維持する。
                                       
3 飛砂防備林
                                       
 森林の飛砂防止機能は,数列の樹高の低い林でも発揮される。しかし,強風時にほぼ
完全に飛砂の発生を防ぎ,また,侵入した砂を捕捉・堆積させて後方へ悪影響を及ぼさ
ないようにするには,機能の面から考えて最低50〜60mの幅が必要である。
 前縁部の樹高が低く,内陸側へ次第に高くなる横断面形の林は,林衣を形成して地表
を移動する飛砂の防止に,大きな機能を発揮する。50m幅の林でも,枝下高が高く下木が
ない時は,林内の風はかえって加速され,飛砂が侵入することがある。
 このような林では,クロマツあるいは広葉樹の下木を導入した二段林にする。それと
ともに,林の風上側ではコウボウムギ,ハマニンニク,ケカモノハシ等の在来砂草,あ
るいはアメリカンビーチグラス等の外来草で砂面を被覆し,飛砂が林内に侵入するのを
できるだけ阻止する。さらに,幼齢クロマツ林の前縁にはアキグミを植栽したり,時に
は防風垣や防風ネットを設ける。
                                       
4 防潮林(潮害防備林)
                                       
 漂流物の阻止機能は,数列の狭い林帯でも発揮される。林帯幅が広く,樹幹が太い程,
漂流大型漁船などの衝撃に耐えられる。実態調査,実験結果から20〜40mの林帯幅が必
要であると判断されている。気象条件の厳しい地域では前縁部分の樹木の成長が悪いの
で,林帯幅は更に広くなる。
 クロマツ林に下木が密生したクロマツ二段林は,水勢を弱める効果が大きい。
 クロマツの主林木の下に塩風,塩水に強いトベラ,マツバグミ,マサキ,ハマヒサカ
キ,シャリンバイ,ツバキ,ウバメガシ,ハマユズリハ,ヤブニッケイ,ヤマモモ,モ
チノキ等の広葉樹が密生した二段林,複層林であれば理想的である。クロマツ林の内陸
側に広葉樹林があっても効果が大きい。
 林帯に疎開した部分や欠除した部分があると,そこから海水が侵入し,洗掘されたり,
漂流物が流入するので,十分な保育・管理が必要である。また,林内の作業道も海水の
侵入路になるので,S字型に設定する。林帯はなるべく切れないように設け,河口では
河岸に沿って相当上流まで設ける。
 防潮林は単独で設けられていても効果はあるが,防潮堤,防潮護岸等の防備施設を併
用することで効果は一段と増加する。
                                       
5 防霧林
                                       
 防霧林は成育条件が許されるかぎり,霧の濃い海岸に近いところに,設定すると効果
が発揮される。海霧は低地に沿って侵入するするので,この地域に数列の防霧林を設け
れば効果が期待される。ただ,湿地化したところでは造成上の問題が残る。
 霧粒の捕捉は葉の細長い針葉樹の方が効率がよい。しかし,濃霧地帯の環境が厳しい
ことから,第一線にはダケカンバ,ハンノキ,ミズナラ等の天然広葉樹林を残し,カラ
マツ,トドマツ等の針葉樹防霧林の造成は,その背後に行うと安全である。
 霧の捕捉は,林の前面の形状によって変わる。内陸へ樹高が順次高くなる流線型の林
では,前面での捕捉機能は小さい。しかし,林の前縁部を伐り,前縁の樹高を林内のも
のと揃えるような,人為的なことは,林分の破壊につながる恐れがたるので避ける。
 林分はあまり蜜でない方が,乱流による霧粒捕捉機能が大きく,また健全に成育する
ので,適度な除間伐が必要である。
 海霧地帯の森林の成育は不良で,海岸近くに,新たに防霧林を造成するのは困難であ
る。伐採などの森林の取り扱いは慎重に行う。
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