ちょっとしたコラム      
              
06.10.21付


1983年 西武ライオンズVS読売ジャイアンツ(前編)

 11年ぶりに1シーズン制に戻った83年のパ・リーグは、西武が安定した戦いを見せて2連覇。前年の優勝がフロックでない事を証明した。前半は田淵が中心となって引っ張った。7月10日まで実に29本塁打の快進撃。同月13日の試合で死球を受け骨折し、後半戦を棒に振ったが本塁打記録更新も予感させる好調が続いていただけに残念な怪我だった。田淵の離脱後はテリーが頑張ってリーグ2位の38本塁打、109打点をマーク。石毛も2年ぶり3割打者に返り咲いた。

 セ・リーグは藤田監督率いる巨人が2年ぶりの優勝。開幕41試合目で33勝8敗の貯金25に到達し、序盤は独走態勢だった。その後チームが下降線を辿るのと合わせて広島の猛追を受けオールスター前には首位陥落。しかし、不振の江川や故障の多かったスミスが活躍し始めた後半戦は徐々に体勢を建て直し、最後は広島を振り切って優勝を決めた。

 3割打者が原・篠塚・中畑・淡口と4人。江川が16勝、西本も15勝と2本柱は終わってみればそれなりの勝ち星を残していた。定岡が7勝と後退したが、2年目の槙原が4月の阪神戦で初登板初完封デビュー。150キロを超える速球でマッハ快速ブームを巻き起こし12勝を挙げた。

 81年の日本一チームと82年の日本一チームによる、壮絶な戦いの幕が切って落とされる事となった。

両チーム主力選手の成績
西武     巨人  
田淵幸一 30本塁打 71打点 打率.293   原辰徳 32本塁打 103打点 打率.302
テリー 38本塁打 109打点 打率.278   スミス 28本塁打 72打点 打率.285
スティーブ 17本塁打 85打点 打率.321   中畑清 15本塁打 68打点 打率.300
石毛宏典 16本塁打 64打点 打率.303   篠塚利夫 13本塁打 56打点 打率.307
山崎裕之 18本塁打 82打点 打率.287   河埜和正 4本塁打 19打点 打率.242
片平晋作 19本塁打 55打点 打率.278   松本匡史 6本塁打 24打点 打率.294
大田卓司 20本塁打 67打点 打率.297   淡口憲治 10本塁打 50打点 打率.302
立花義家 8本塁打 42打点 打率.309   山倉和博 6本塁打 41打点 打率.254
西岡良洋 6本塁打 27打点 打率.218   駒田徳広 12本塁打 47打点 打率.286
         
松沼雅之 15勝8敗 防御率3.25 奪三振   江川卓 16勝9敗3S 防御率3.27 奪三振
松沼博久 12勝6敗 防御率3.82 奪三振   西本聖 15勝10敗 防御率3.84 奪三振
東尾修 18勝9敗2S 防御率2.92 奪三振   槙原寛己 12勝9敗1S 防御率3.67 奪三振
森繁和 5勝5敗34S 防御率1.48 奪三振   加藤初 8勝3敗 防御率2.66 奪三振
杉本正 12勝6敗 防御率3.43 奪三振   定岡正二 7勝7敗 防御率5.00 奪三振
高橋直樹 13勝3敗 防御率3.03 奪三振   角三男 3勝5敗18S 防御率3.38 奪三振

 10月29日の第1戦は巨人が江川、西武が松沼兄の先発で始まった。西武は江川の立ち上がりを捉え、初回に5番・大田のタイムリーでまず1点。2回には下位打線の連打でチャンスを作り、1番・山崎が2点タイムリーツーベース。とどめは4番・田淵の3ランホームランだった。エース・江川がまさかの2回6失点KOで巨人サイドはいきなり苦境に立たされた。

 西武の先発・松沼兄は5回まで散発2安打の好投で巨人打線を無得点に抑えた。しかし打順が三巡目に入った6回に掴まった。先頭の松本にライト前ヒットを許すと、続く2番・河埜には2ランホームランを浴びた。ここで左打者の3番・篠塚に対し広岡監督は左キラーの左腕・永射をマウンドに送った。しかし永射は篠塚を四球で歩かせてしまい、悪い流れに。この流れを断ち切るべく広岡はすかさず切り札の東尾を起用した。この年はリーグ最多の18勝を挙げていた東尾だったが、シリーズでは前年同様にリリーフ専任の方針とされていた。

 東尾は篠塚に二盗され、一死後にスミスのタイムリーで1点を失った。しかし7回以降は本来のリズムを取り戻し、9回までの3イニングを2安打無失点で投げ抜いた。西武打線も3回以降は追加点を奪えなかったが、やはり2回の5得点が効いていた。結局6-3で西武が前年に続きシリーズ開幕戦を飾った。

10月29日・第1戦
巨人 0 0 0 0 0 3 0 0 0   3
西武 1 5 0 0 0 0 0 0   6

勝ち 松沼兄 1勝   セーブ 東尾 1セーブ   負け 江川 1敗

本塁打 田淵1号、河埜1号


 翌30日の第2戦は巨人が西本、西武が高橋の先発で始まった。巨人は初回に松本を三塁に置いて、4番・原が先制2ランホームラン。前日は4の0といいところのなかった原が面目躍如の一発を放ち、巨人は幸先のいいスタートを切った。この援護をバックに81年のシリーズMVP・西本の右腕はこの日も冴えた。6回まで3安打無四球無失点。内野ゴロ12本と西本らしい投球が続いていた。

 西武も4回には高橋から松沼弟に交代して巨人の追加点を阻んでいた。しかし7回に登板した三番手・小林は先頭の中畑に二塁打されると、さらに四球とヒットで無死満塁のピンチを招いた。ここで打順は9番・西本。西本はレフトにきっちり犠牲フライを打ち上げて巨人に待望の追加点が入った。巨人は9回表にも西本のセンター前ヒットを口火に一死満塁のチャンスを掴み、3番・篠塚のライト前タイムリーで4点目を挙げた。

 西本は結局4安打無四球と完璧なピッチングで完封勝利。81年第2戦からのシリーズ無失点記録を26イニングに伸ばした。西武は西本攻略の糸口すら掴めず完敗で、シリーズは1勝1敗のタイとなった。

10月30日・第2戦
巨人 2 0 0 0 0 0 1 0 1   4
西武 0 0 0 0 0 0 0 0 0   0

勝ち 西本 1勝   負け 高橋 1敗

本塁打 原1号


 11月1日の第3戦は西武が杉本、巨人が槙原の先発で始まった。西武は2回表に田淵とテリーのヒットで一死1・2塁とすると、7番・石毛がセンター前にタイムリーを放ち1点先制。3回まで1安打ピッチングの西武・杉本は4回裏に2安打と四球で一死満塁のピンチを迎えた。ここで西武は早くも切り札・東尾を投入。対する巨人・藤田監督も8番・鈴木康に代打・駒田を起用し、こちらも勝負に出た。期待に応えて駒田はライト前へ同点タイムリー。続く9番・槙原が押し出し四球を選び、巨人が2-1と逆転した。

 シリーズ初登板の重圧の中、5回まで1失点に抑えた槙原だったが6回表に掴まった。先頭の3番・スティーブにセンター前ヒット。田淵は打ち取ったものの、5番の大田にもセンター前に弾き返され一死1・2塁。ここで迎えた6番・テリーはライトスタンドに逆転3ランして槙原をノックアウトした。

 しかし、粘る巨人は8回裏に6番・クルーズがソロ本塁打して1点差。そして9回裏を迎えたが、代打・淡口がセカンドゴロ、1番・松本もショートゴロでツーアウトランナーなし。西武逃げ切りか、と思われたこの場面から巨人が底力を見せた。2番・篠塚、3番・原が連続ヒット。続く4番・スミスがスミスシフトで狭い二遊間を抜ける同点タイムリー。ここで西武の投手は東尾から森に後退するが巨人の勢いは止まらなかった。5番・中畑がレフト前にサヨナラヒットを放ち、5-4で劇的な逆転勝利を収めた巨人が2勝1敗とシリーズをリードした。

11月1日・第3戦
西武 0 1 0 0 0 3 0 0 0   4
巨人 0 0 0 2 0 0 0 1 2x   5

勝ち 加藤 1勝   負け 東尾 1敗1セーブ

本塁打 テリー1号、クルーズ1号

(後編に続く)

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