四球・死球
四球の通算記録では王貞治(巨人)が独走。それまで20〜30本台だった本塁打王のタイトルを40本台に持ち込んだ長距離打者の出現に各球団は戦々恐々。本塁打よりはと四球攻めに出た。王自身が選球眼も良く、またじっくり好球を待つタイプだった事もあろうが、四球の数は一本足打法転向翌年の1963年には100を超え、以後は四球と言えば本塁打と共に王の代名詞となった。現役22年間で2390四球だから、年平均でも100を超える途方もない記録である。
落合博満(日本ハム)も84〜91年までリーグをまたがって8年連続四球王。25歳と遅いプロ入りながら歴代2位まで進出したのは流石。現役で5位に顔を出しているのが清原和博(巨人)。近年は死球のイメージも強いが、西武時代は4度の四球王。特に1990年の105四球は当時のパ・リーグ新記録だった。今季は41四球を上積みし、通算1307四球で歴代3位まで進出している。
歴代ベストテンの顔ぶれは通算300本塁打以上が8人と、やはり長打のある打者が並んだ。現役ベストテンでも石井琢朗(横浜)以外は通算150本塁打をクリアしている。その現役で清原に次ぐのは立浪和義(中日)。今季は60四球で通算1022四球と大台到達を果たした。60四球は7年ぶりで、このペースで行けば来季中に歴代9位まで進出しそうだ。
立浪に続くベストテン入りは金本知憲(阪神)に期待がかかる。ここ4年間で3度の四球王。今季も両リーグトップの80四球と順調に数字を伸ばし通算913四球。来季には1000四球に届きそうだ。2007年の歴代ベストテン入りが期待される。
死球では清原和博(巨人)が今季10死球を上積みし、通算195死球で歴代1位。竹之内雅史(阪神)の166を抜いてからは無人の野を行くかのようである。来季も現役ならば史上初の200死球も射程距離。現役2位の古田敦也(ヤクルト)が今季の5個を加えても111死球と大差があり、既に年齢も40歳とあっては清原の記録に挑戦する事になりそうな選手も見当たらない。
ただ、近年死球が目立って多いのが城島健司(ソフトバンク)。03年15死球、04年22死球でここ2年だけで37死球の大当たり。今季もリーグトップタイの15死球で通算94死球となっている。02年までは年間8個が最多という打者だっただけに急増ぶりが気になるところでもあるが、もし将来清原の記録に迫るとしたらこの城島ぐらいではないだろうか。
日本人メジャー選手では松井秀喜(ヤンキース)が入団10年で844四球。4度の四球王を含め、5度の100四球をマークして、いずれ歴代2位にはと期待されたがそこでストップ。日本にいれば今頃歴代9位にはランクインしていただろう。
歴代 | 選手名(最終所属) | 記録 | 現役 | 選手名(所属) | 記録 | 04年実績 | |
1 | 王貞治(巨人) | 2390四球 | 1 | 清原和博(巨人) | 1266四球 | 15四球 | |
2 | 落合博満(日本ハム) | 1475四球 | 2 | 立浪和義(中日) | 962四球 | 45四球 | |
3 | 張本勲(ロッテ) | 1274四球 | 3 | 江藤智(巨人) | 862四球 | 13四球 | |
4 | 門田博光(ダイエー) | 1273四球 | 4 | 金本知憲(阪神) | 833四球 | 79四球 | |
5 | 清原和博(巨人) | 1266四球 | 5 | 片岡篤史(阪神) | 778四球 | 16四球 | |
6 | 野村克也(西武) | 1252四球 | 6 | 古田敦也(ヤクルト) | 721四球 | 36四球 | |
7 | 福本豊(阪急) | 1234四球 | 7 | 石井琢朗(横浜) | 714四球 | 45四球 | |
8 | 山本浩二(広島) | 1168四球 | 8 | T・ローズ(巨人) | 676四球 | 72四球 | |
9 | 榎本喜八(西鉄) | 1062四球 | 9 | 鈴木健(ヤクルト) | 631四球 | 40四球 | |
10 | 山内一弘(広島) | 1061四球 | 10 | 谷繁元信(中日) | 628四球 | 42四球 |
歴代 | 選手名(最終所属) | 記録 | 現役 | 選手名(所属) | 記録 | 04年実績 | |
1 | 清原和博(巨人) | 185死球 | 1 | 清原和博(巨人) | 185死球 | 4死球 | |
2 | 竹之内雅史(阪神) | 166死球 | 2 | 古田敦也(ヤクルト) | 106死球 | 10死球 | |
3 | 衣笠祥雄(広島) | 161死球 | 3 | 城島健司(ソフトバンク) | 79死球 | 22死球 | |
4 | 井上弘昭(西武) | 137死球 | 4 | 緒方孝市(広島) | 72死球 | 9死球 | |
5 | 田淵幸一(西武) | 128死球 | 4 | 谷繁元信(中日) | 72死球 | 5死球 | |
6 | 野村克也(西武) | 122死球 | 6 | 松中信彦(ソフトバンク) | 71死球 | 12死球 | |
7 | 加藤俊夫(大洋) | 116死球 | 7 | 野村謙二郎(広島) | 65死球 | 3死球 | |
8 | 王貞治(巨人) | 114死球 | 7 | 稲葉篤紀(日本ハム) | 65死球 | 6死球 | |
9 | 古田敦也(ヤクルト) | 106死球 | 9 | 新庄剛志(日本ハム) | 64死球 | 9死球 | |
10 | 田宮謙次郎(大毎) | 104死球 | 10 | 石井琢朗(横浜) | 60死球 | 2死球 |
四球の年間記録は王貞治(巨人)の独壇場。ベストテン圏外までその名は並び、歴代22位までに16度名前を連ねている。1962〜79年まで18年連続四球王。うち63〜78年まで16年連続100四球は破天荒な記録であり、今後更新する打者の登場を予想する事は困難である。74年は2年連続三冠王の年。130試合で158四球と試合数を大きく上回るペースで歩かされた。昨年セ・リーグ四球王は金本知憲(阪神)だが79四球であり74年の王と比べれば半分に過ぎない。74年の王に対する四球攻めが異常であったのが分かる。これだけ歩かされながら、49本塁打を放つなど三冠王を獲得しているのだから凄いとしか言いようがない。
さて、王の一人舞台に唯一風穴を空けたのが2001年の金本知憲(広島)。この年は松井秀喜(巨人)とペタジーニ(ヤクルト)の両巨砲も健闘してそれぞれ120四球をマークしたが、金本はそれを上回り歴代ベストテン入りを果たした。金本はその後も04・05年と四球王で、今季も3年連続が有望。このまま行けば4度目の四球王で、これはセ・リーグでは王の18度、落合博満(中日)の6度に次ぎ、松井と並ぶ3位タイ。
金本以外で100四球以上取れそうな打者と言えばカブレラ(西武)が筆頭か。日本タイの55本塁打を放った02年にはリーグ最多の100四球をマーク。ただ、打ち気にはやる余りボール球に手を出すケースもあり、歴代10傑入りするほどの四球を選ぶのは難しいか。相手バッテリーが露骨な敬遠攻めに出ない限り120を超えるほどの四球は難しいかもしれない。
03年に78四球の福留孝介(中日)や04年に70四球の岩村明憲(ヤクルト)の今後にも期待したい。松中(ソフトバンク)も03年81四球、04年84四球
参考 年度別リーダーズ(四球)
歴代 | 選手名(当時の所属) | 記録 | 年度 | 現役 | 選手名(当時の所属) | 記録 | 年度 | |
1 | 王貞治(巨人) | 158四球 | 1974年 | 1 | 金本知憲(広島) | 128四球 | 2001 | |
2 | 王貞治(巨人) | 142四球 | 1966年 | 2 | 片岡篤史(日本ハム) | 113四球 | 1998 | |
3 | 王貞治(巨人) | 138四球 | 1965年 | 3 | 清原和博(西武) | 105四球 | 1990 | |
4 | 王貞治(巨人) | 130四球 | 1967年 | 4 | 片岡篤史(日本ハム) | 101四球 | 2000 | |
5 | 金本知憲(広島) | 128四球 | 2001年 | 5 | 清原和博(西武) | 100四球 | 1994 | |
6 | 王貞治(巨人) | 126四球 | 1977年 | 5 | A・カブレラ(西武) | 100四球 | 2002 | |
7 | 王貞治(巨人) | 125四球 | 1976年 | 7 | T・ローズ(近鉄) | 98四球 | 2003 | |
8 | 王貞治(巨人) | 124四球 | 1973年 | 8 | 江藤智(広島) | 97四球 | 1998 | |
9 | 王貞治(巨人) | 123四球 | 1963年 | 9 | 清原和博(西武) | 94四球 | 1989 | |
9 | 王貞治(巨人) | 123四球 | 1975年 | 10 | 金本知憲(阪神) | 93四球 | 2003 | |
10 | 小笠原道大(日本ハム) | 93四球 | 2003 |
死球の年間記録は岩本義行(大洋)の24死球が50年以上も1位の座から動かない。04年にG・ラロッカ(広島)が23死球、城島健司(ダイエー)が22死球をマークしたがあと一歩届かなかった。それでも城島はイチロー(オリックス)の持つパ・リーグ記録を9年ぶりに更新した。特筆すべきは五輪参加で17試合に欠場しながらの数字と言う点で、もしフル出場していたら25個ペースで、これは日本新記録に相当する。
死球は怪我と背中合わせであり、痛くない死球もあるとはいえ積極的に狙える記録ではない。昔はユニフォームもダブダブで、裾をかすめただけの死球などが結構あったという説もある。条件は違って来ているかもしれないが、歴代ベストテンを見ても近年の記録が多くなっており、また試合数の増加と言う要素もあってそろそろ岩本の記録も更新される頃なのかもしれない。
歴代 | 選手名(当時の所属) | 記録 | 年度 | 現役 | 選手名(当時の所属) | 記録 | 年度 | |
1 | 岩本義行(大洋) | 24死球 | 1952年 | 1 | G・ラロッカ(広島) | 23死球 | 2004年 | |
2 | G・ラロッカ(広島) | 23死球 | 2004年 | 2 | 城島健司(ダイエー) | 22死球 | 2004年 | |
3 | 城島健司(ダイエー) | 22死球 | 2004年 | 3 | F・ズレータ(ダイエー) | 19死球 | 2004年 | |
4 | 三村敏之(広島) | 19死球 | 1972年 | 4 | 福浦和也(ロッテ) | 17死球 | 2002年 | |
4 | F・ズレータ(ダイエー) | 19死球 | 2004年 | 4 | 松中信彦(ダイエー) | 17死球 | 2002年 | |
6 | イチロー(オリックス) | 18死球 | 1995年 | 6 | 清原和博(西武) | 16死球 | 1989年 | |
7 | 竹之内雅史(太平洋) | 17死球 | 1975年 | 6 | 稲葉篤紀(日本ハム) | 16死球 | 2001年 | |
7 | 黒田正宏(南海) | 17死球 | 1978年 | 6 | 清原和博(巨人) | 16死球 | 2003年 | |
7 | 簑田浩二(阪急) | 17死球 | 1980年 | 9 | 清原和博(西武) | 15死球 | 1988年 | |
7 | 中野佐資(阪神) | 17死球 | 1989年 | 9 | 清原和博(西武) | 15死球 | 1990年 | |
7 | M・フランクリン(日本ハム) | 17死球 | 1999年 | 9 | 城島健司(ダイエー) | 15死球 | 2003年 | |
7 | 福浦和也(ロッテ) | 17死球 | 2002年 | |||||
7 | 松中信彦(ダイエー) | 17死球 | 2002年 | |||||
7 | A・エチェバリア(日本ハム) | 17死球 | 2003年 |
※ランキングの記録は2004年まで。今季の記録は9月2日まで。