ちょっとしたコラム　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　04.9.18付

近鉄、ブライアント4連発で「10・19」の無念晴らす逆転優勝

　1989年秋、パ・リーグの優勝争いは決着の時を目前に大混戦となっていた。10月11日時点での勝敗表は次の通りである。首位・西武は2位近鉄との直接対決を残していたためマジックはこの段階でも点灯していなかったが、残り3試合で2勝すればオリックスが全勝しない限り優勝決定という状況であった。一方の2位・近鉄も直接対決での形勢逆転を狙っていた。

　10月12日、西武球場。5連覇を目指す西武と「10・19」の無念を晴らしたい近鉄とのダブルヘッダーが始まった。第1試合は近鉄が高柳、西武が郭の先発で始まった。西武が速攻を見せて初回に1点、2回にも3点を追加して高柳をノックアウト。

　戦況不利の近鉄だったが、4回表にまず3番・ブライアントが46号ソロを放ち反撃の口火を切る。しかし西武もすかさず5回裏に追加点を挙げ、再び4点差に戻った。
　その直後の6回表に近鉄は　満塁のビッグチャンスを迎えた。打者は前の打席でホームランを打っているブライアント。郭の投球を捉えたブライアントの打球はライトスタンドに消えた。同点の47号満塁ホームランである。

　そして8回表、先頭打者としてブライアントにこの日4度目の打席が回って来た。マウンドにはこの回から渡辺久信が上がっていた。渡辺はブライアントに相性が良く、この年もそれまでノーヒットに抑えていた。2-1と追い込んだ渡辺は得意の速球で勝負に出た。それまで空振りしていたインハイの速球にブライアントのバットが一閃した瞬間、打球はライトスタンドに向かって伸びていた。渡辺はマウンドに崩れ落ち動けない。悠々とブライアントがベースを一周してホームイン、3打席連続となる勝ち越しの48号ソロである。

　ブライアントの3打席連続本塁打で近鉄は第1試合を逆転勝ちした。この時点で西武は68勝52敗8分けの勝率.567。近鉄は69勝53敗5分けの勝率.565。わずか2厘差に迫った近鉄ナインはその勢いのまま第2試合に臨んだ。

　続く第2試合は近鉄がエースの阿波野、西武が高山の先発で始まった。試合は近鉄打線が西武の繰り出す5投手に15安打を浴びせて14点を奪う猛攻を見せた。中でもブライアントは第1打席四球の後、3回表の第2打席では日本タイ記録となる4打数連続ホームランをセンター左に打ち込んだ。先発阿波野は立ち上がりに2点を失ったが、2回以後は立ち直り7回まで投げて最多勝当確の19勝目を手にした。

　ぎりぎりの闘いで2連勝した近鉄は70勝53敗5分けの勝率.569、西武は68勝53敗8分けの勝率562となった。同じ日に最下位・ロッテとダブルヘッダーを行ったオリックスは10-2、14-2と大差で連勝して71勝54敗3分けの勝率.568と食い下がっていた。この時点で首位近鉄にゲーム差なしの2位に浮上し、近鉄にピタリと食い付いていた。
　しかし、オリックスは翌13日の大切なロッテ戦を落としてしまう。この痛い敗戦でオリックスは半歩後退の0.5ゲーム差。近鉄は残り2試合のうち1勝すれば優勝という状況に漕ぎつけた。

　10月14日のダイエー戦、近鉄は先発の加藤が好投し7回途中まで1点に抑えて阿波野につないだ。打線もリベラの25号などで6回までに5点を奪っていた。西武戦から中1日の阿波野は8回に1点を失ったものの後続を断ち、9回裏に最後の打者・伊藤を三振に仕留めてゲームセット。「10・19」から360日、ついに近鉄ナインは9年ぶりとなるリーグ優勝を成し遂げ、グラウンドには仰木監督を胴上げする歓喜の輪が出来ていた。

ＢＡＣＫ｜ＮＥＸＴ