黒髭藻とはちょっと違う(淡水)水槽の「コケ」。でもこれも紅藻らしい。葉っぱは、いわゆるミクロソリウム(Microsorium = Microsorum:ミクロソルム)。
少し太い感じ藻のですが、大きさはせいぜい1cm程度。色は白っぽく、大変地味です。緑とか赤とかという感じはありません。
顕微鏡で見ると、左の写真のように多細胞の紐状になっているのが特徴。ただし、ご覧のようにすべてが紐状ではなく、糸状藻のように細胞が一列に並んでいる部分もあります。
山岸先生の「淡水藻類写真集ガイドブック」(内田老鶴圃 1998)に、「淡水藻類の体制と生育状況による分類」というページのがあるのですが、ここの「紐状体性」を見ると、紅藻のコンプソポゴン属と緑藻のスキゾメリス属の2つが出ています。
ここに出ている写真を見ると、どうも紅藻の方のようです。
この仲間は、紅藻の中でも「ウシケノリ亜綱=原始紅藻亜綱」に属しているとのこと。ちなみに「黒髭藻」は「ウミゾウメン亜綱=真正紅藻亜綱」。一番大きな違いは何かというと、受精した造果器(卵+受精毛=生卵器)から果胞子(2n)がどうできるかという点、だそうです(すみません、このあたりえらく複雑なので、わかりやすく説明できるだけ理解してませんです)。
ただ、今問題になっているオオイシソウのグループは、有性生殖が判明していないのと、色素の組成が下等であるということで、ウミゾウメンの方には入っていないそうです。ま、暫定的と言ったらなんですが、そんな感じでしょうか?
それで、このグループ(オオイシソウ目 Compsopogonales)は、オオイシソウ科 Compsopogonaceae 1科からなり、オオイシソウ属 Compsopogon とオオイシソウモドキ属 Compsopogonopsis の2属を含むとのこと。
日本淡水藻図鑑では C. oishiiのオオイシソウだけですが、淡水藻類写真集の本編には、以下に示すように、Compsopogon 属5種と Compsopogonopsis(オオイシソウモドキ)属1種がのっています。
巻:番号 | 学名 | 和名 |
---|---|---|
1:24 | C. aeruguginosus | イバラオオイシソウ |
1:25 | C. corticrassus | アツカワオオイシソウ |
1:26 | C. hookeri | インドオオイシソウ |
1:27 | C. oishii | オオイシソウ |
18:22 | C. prolificus | (なし) |
1:28 | Compsopogonopsis japonica | オオイシソウモドキ |
「モドキ」は多細胞の紐の外側(皮層)の部分が、中軸の細胞からの仮根状突起からできてくるが、本家オオイシソウは違う、ということらしいです。下の真ん中の写真などからすると、これは本家のやつではないでしょうか?
それ以上、属の中のどの種にあたるのかは謎ですね。多細胞になっている部分を切ってみないとよく分かんなかったりするようです。「イバラ」っていうのはトゲトゲが出るようなので、これではないと思いますが。
また、どれも長さ数十cmになる、と書いてあって、これも謎。条件がよければ大きくなるのかな?(あまりなってほしくないけど)。
分岐 |
一列から多細胞に? |
紐状の部分 |
「藻類の生活史集成」には、オオイシソウ、インドオオイシソウ、オオイシソウモドキの生活史がのっています(第2巻 pp.170-175)。単胞子が皮層細胞などにできるらしいです。本の図と見比べると、一番右の写真で赤い三角印で示した、ちょっと色が濃いところが胞子嚢のように思います(クリックで拡大:26KB)。でもこれ、黒髭藻みたいに「いかにも胞子嚢」っていう感じじゃあないですね。