Topへ戻る 平成18年10月16日
闘病記 その時 自然の神様は 私を見守ってくれました。

恵まれた自然環境の中で生活し、「長生きしますね」と言われても、
当たり前の事をおろそかにし、ぎりぎりまで身体を粗末にした結果は ......... 。

平成18年10月。生まれてこの方病気などした事もなかった私が、
初めての入院生活で貴重な経験をしました。先生や看護師さん達とのふれ合い。
苦しかった中でも有意義な日々でしたが、また楽しかった私の闘病記です。
身体に異常、不調を感じた時は迷わず精密検査を受けましょう。

 3年前頃より便の通じが悪くなってきました。“大腸癌”もしかしての不安があったものの、忙しさに託けて無視。今まで入院の経験は全くありません。「どうにかなるバイ」と安易な気持ちでいると、一ヶ月前より便秘症状が続きました。
 食欲はあるものの、出ないところに詰め込めば結果は明白です。そのうちに腹部は満タンでガスも出なくなりました。10月13日魔の金曜日についにダウン。水も食事も受け付けず、食べ物を見ただけでムカッ!と吐き気が来ます。いよいよ来るべき時が来た感じです。 

10月16日(月) 土、日曜と我慢して、朝一番に、2年前より降圧剤をもらっていたKクリニックに「先生どうにでもしてください」と駆けつけました。
 症状をお話しすると、いつも精密検査を勧められていましたので処置は早く、腹部のレントゲンを撮っていただきました。二枚のレントゲン写真とK先生の紹介状を胸にしっかり持って、すぐその足で紹介先の総合病院へ行きました。 
   
即日 緊急入院!
 
10月17日 消化器科で、CT造影検査や胃大腸の内視鏡検査等、精密検査を済ませました。消化器科では2日間の入室でしたが、夜間看護師さんに苦しみを訴え、鼻から胃まで管を入れて溜まりものを少しでも出して頂いたそうで、やや楽になりました。消化器科のO先生より検査結果の説明があり「大腸S字結腸」が認められるということでした。検査後のせいか、意識はもうろうとしています。この時、娘と息子が同席していた事、後で分かりました。

 18日 翌日、外科に移り 手術担当の外科医長のN先生より、改めて大腸の内視鏡検査結果の写真を見せていただきました。S字結腸にすごい癌の固まりが見え、完全に便を止めています。その後手術についての説明がありましたが、説明中にもおう吐がひどかったそうで、17〜18日の事は同席していた家内から聞いた話で、あまり記憶に残っていません。苦しくて意識が正常でなかったのでしょうか。


CT造影 胃 大腸内視鏡等の検査の結果 
病名「大腸S字結腸癌」(大腸と直腸の間にあるS字状の腸)と判明

 10月19日 午前8時30分 緊急OP
  
病室よりストレッチャーに移し替えられ、その後すぐに麻酔が効きやすい注射を肩に一本。やや意識もうろうで手術室へ。連れ合い曰く「まな板の鯉のよう」
   移動しながら本人「今頃先生が、包丁をシャカシャカ研いで待っとらすバイ(お待ちだ)」
   生まれて初めての手術室 丸い電球が幾つも付いた投光器を天井に見て
         「ここがテレビでよく見る手術室ですか」
   
看護師さん「クスッ」と笑って「そうですよ」と一言。

  若い看護師さんから下半身裸のオチンコの前に前張りを張られ、
 エビ状に曲げた腰の背骨付近に痛み止めの注射を2本。注射の度に内容を説明されますので安心です。

 最後に仰向けにされ、鼻と口にホース付きのマスクを当てられ、ほんの数秒もしないうちに意識を失いました。
  
全身麻酔です。その間、何が行われたのか知る由もありません。

 かすかに遠くで「川尻さ〜ん 川尻さ〜ん」と、「遙かに看護師さんの呼び声」が聞こえました。
 
「ハ〜イ」と力無く返事をすると、「ゆっくり深呼吸をしてください」と。深呼吸で我にかえりましたが、
 その後すごい寒さが全身を襲いました。
 
「寒い!寒い!」と、ガタガタ震える私を、迎えに来てくれていた病室担当の看護師さんが、
 頭からつま先までグルグルと二重に毛布で包んでくれ、病室では暖かい電気毛布まで掛けていただきました。

  帰ってきた病室にて
 
ベッドに横になって、麻酔が徐々に覚める頃から腹部の痛みが感じられてきました。
もうろうとしながら本人の第一声
「(宮様)紀子さんもさぞ痛かったろうね」「術後の痛みは計算に入れてなかったな」と云ったそう。
手術は、へその上7〜8cmから真下に、へそを避けオチンコの付け根あたりまで切開されていました。最近の縫合は糸でなく、ホッチギスで止めてあると聞きましたので、恐る恐る腹を眺めてホッチギスを数えてみましたら28個でした。ファスナーを縫い付けられているみたいです。少し身体を動かすだけで腹の周りがピリピリ痛みます
 横に寝返えったり、起きあがったりする時、少しずつ動く仕草は、まるでオーストラリアの「なまけもの」そっくり。

  頑張る看護師さん
 
夜トイレに起きる時、寝ていて痛みで目が覚め、痛み止めの注射をしてもらう時等、その都度ナースコールを押します。夜中でもすぐに駆け付けて、笑顔で処置をしてくれる看護師さんにどれだけ勇気づけられ感謝したことか。

  お見舞いありがとう
 
忙しいなか、わざわざお見舞いに来てくれてありがとう。友人知人のお見舞いには勇気付けられました。

 術後5日間は点滴による栄養補給のみ。
後は流動食の
「1.重湯〜 2.五分粥〜お粥〜 3.4.普通食」
徐々に胃腸を慣らしていきました。
1. 重湯 初めての朝食(味噌スープが美味しかった) 2. 五分粥(朝食) 
3. 常食 赤飯(昼食) 4. 常食 おにぎり(昼食)

 常食に変わったある日の昼食に「赤飯」が出ました。
何だろうと思ったら、この日は
「文化の日」でした。
 たまには気分を変えて「おにぎり弁当」です。
 塩分控えめの病院食ですので決して美味しいとは云えませんが、
調理室の気配りがうかがえました。

  お陰で血圧は常に正常値で安定。やや高めだった尿酸値も元に戻ったようです。

 

 執刀をしていただいた主治医で医長のN先生は、回診とは別に一日に2回は「大丈夫ですか?」と容態を確認に来られ、「頑張って」必ずポンポンと身体を叩いていかれますので、安心と信頼の絆が強くなります。看護師さんは毎日変わりますが、朝夕と「今日の担当の◯◯です」と自己紹介をされます。
師長さんをはじめ、どなたも笑顔で優しく接していただきましたので、初めての入院でも不安な気持ちは皆無でした。

  早く検査すれば良かったと反省しきり。

外科病棟七階の病室より眺める阿蘇南外輪山の山並みが心を癒してくれました。
山の向こうが久木野です。
この日は俵山の10基の発電風車もハッキリ見えました。


  退院前日は主治医のN先生との面談です。
「進行性の癌でしたが、今のところ90%肝臓、肺等他への遠隔臓器の転移は認められません。リンパ節転移も認められませんが、今後定期検診は必ず受けて下さい。」との事で、余命数ヶ月、数年の宣告を覚悟していただけに、安堵の気持ちと、皆さんに感謝の気持ちで一杯でした。

 「不幸中の幸い」とはこんな事でしょうか。地獄の閻魔大王から「お前はまだ早すぎる!現世でもっと苦労して来〜い!」と追い返されたような気がしました。

 手術の状況をN先生聞きますと、まず大小腸の溜まり物を出すのが大変で、この処置に約4時間。S字結腸の癌摘出縫合と腹部縫合(28針)に3時間。計7時間かかったそうです。麻酔時間を入れると約8時間は手術室に居たことになります。

 予定では「4時間弱です」との事でしたが、
その間、家内は待合室でジッと待ってくれていました。

退院は10月27日の予定でしたが、我慢した分、大小腸の傷みがひどく、しばらく養生したがいいとの事で予定よりも2週間退院が延びました。

この事が、 思いもよらない経験をする事になったのでした

 11月10日退院の日 
ナースセンターの皆様に深々と頭を下げ
「熊本中央病院」を後にしました。

 入院前後の10日間は、絶飲絶食で点滴のみ。4kg体重を落とし、術後は8時間の手術がよほど応えたのでしょうか、6kg落ち10kgの体重減です。胃の方は異常はありませんので、何でも食べて良いけど、「しばらくは暴飲暴食をさけ、消化の良い物を食べて体力を付けなさい」との事でした。体重が落ちるのは早いけど、増やすのは時間がかかるみたいです。

 担当看護師のN子さん 
退院に際して贈られた言葉は
 
「3ヶ月間はお酒はダメよ」
トホホホ.......

 しかし親愛なる天の声で
「飲んでもいいが 飲み過ぎないように」
 少しは救われました。


久しぶりの外気です。
お世話になった病院の玄関の前で。
ぜい肉を全て落して身体は軽く、
健康そのもの?
7階の外科病棟の一室から、毎日見下ろしていた隣の
ショッピングセンターのレストラン街で、
「和定食」を食べて帰りました。少し残したけどおいしかった。
 私達の年代になると、まともな身体を維持している人は稀です。退院後に経験話をすると、「そう言えば、何となく最近腹にガスが溜まりやすいとか、便秘気味だ」とか、
心配そうに語る人がいます。
 
私がお世話になった「熊本中央病院」で2006年の悪性種癌手術では
   大腸癌   90人
   胃 癌   54人
   肝・胆道癌 16人
   乳 癌   11人

  と断然消化器系の癌が上位を示していました。

  今だから大きな顔をして云えますが、特に消化器官の精密検査は怠りなく。
自分の身体は自分で管理 検査を恐れず 病院を恐れず 
先生、看護師さんを信頼しましょう。 

改めて命を授けてくれた閻魔大王様に感謝致します。

百歳まで生きるぞ〜。

 同室だった、胃を2/3摘出されたSさん。明日退院しますと、同じ胃の手術で元気なNさん。
私が退院前に直腸癌を手術されたAさん。その後いかがですか。
いつか元気でお会いできるのを楽しみにしています。

最後になりましたが、
「熊本中央病院」 消化器科 外科の先生方 看護師さん大変お世話になりました。
一生の想い出になる、苦しくとも、楽しく、
有意義な入院生活を有り難うございました。
今後もお元気で、皆様のますますのご活躍をお祈りいたします

平成18年11月 闘 病 記

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