福田昌範の吹奏楽講座

第24章 吹奏楽コンクール課題曲2009を語る

 

今年も課題曲が発表されました。 それぞれの曲の関して、今現在、
僕が感じている事や印象を述べてみたい、と思います。
(2009年3月18日作成)

●課題曲1
16世紀のシャンソン(フランス語で「歌」の意味)を基にして作曲された変奏曲です。
演奏にはかなり大人の音楽が要求され、音色的にも演奏者の技量やセンスが要求されます。
曲が様々なバリエーションで作曲されている為、バリエーション(楽章)毎に変化は付けやすく、
楽曲的にはとても素敵な曲です。

いろいろな音楽記号やクロテイルなど、
あまり普通には見られない要素がでてきたりしてとても楽しめます。
後半のトルコ風に、のところの打楽器なども工夫すると、より音色が豊かになるのでは?と感じました。

学生の皆さんも、このような形式の曲を一度は勉強しておいても損はしないでしょう。
編成的には、小編成の曲ですが、特にコントラバスが無いバンドは音域的に、やりづらいですね。
オーボエやファゴットもある方が色彩感が増します。


●課題曲2
マーチではなくパレードなのが面白いです。
コミカル★パレードのタイトルは、まるで「つのだ★ひろ」さんの様ですが、
僕はこの曲を「コミカルスターパレード」と呼んでいます。(笑)
時々、木管の連符で流れ星キラキラぴかぴか(新しい)みたいなところがありますよね。(笑)

この曲は、バランスの取り方によっては音色が多様に変化します。
また、トランペット、トロンボーンがあまり頑張らなくても大丈夫なように作曲されているのも特徴の一つです。

後半の辺りにに出てくるアジタートは、まるでディズニーランドのパレードで主役登場!
ボルテージは最高潮で「ミッキー!!ミニー!!キャー!!!」って盛り上がって、
そのあとの再現部でパレードの最初のキャラクターが一周まわって再登場・・・、って感じでしょうか?(笑)

ハーモニーも転調を細かく繰り返す時があるので、音程は丁寧に練習した方がよいでしょう。

●課題曲3
ネストリアンモニュメント(ネストリアンの記念碑)はタイトルの通り、
キリスト教の一派であるネストリア派がエフェソスで異端宣告をされ、
シルクロードを通って中央アジアから東に向かい、
中国に入りさらに東(日本?)に向かった様子を楽曲で表しています。

エフェソスでは、鐘がなったような衝撃的な異端宣告を受け、苦難の旅路を強いられます。
幻影では恐らく、異端宣告のトラウマが夢でよぎっているのでしょう。
異端宣告を受けた教会のステンドグラスが砕け散ります。
しかし、それでもネストリア派はくじけることなく歩を進めます。

砂上の都では、一時の安らぎがネストリア派の一派を包みますが、
それもつかの間、また苦難の旅路が始まります。
トンコウ入場では、中国のドラが鳴り響きます。
しかし、仏教の中国にはやはり異端だったのでしょうか?

エンディングでは明るい和音で日が昇る東へ希望を持って向かう、そんな感じの曲です。
曲は大変ストーリー性に溢れています。楽譜に時々意味が伝わりづらい指示があるのが残念です。

●課題曲4
大変明るく良い音がするオーソドックスな形のマーチです。
音域もたいへん演奏し易いところに設定されています。

時々、ヒーロー戦隊のテーマソングやスポーツ行進曲の様なメロディーが出てくる
とても愉快な曲でもあります。(笑)

冒頭のトランペットのファンファーレがしっかり決まる事と
テンポの設定が鍵になるかも知れませんね。
個人的にはとても印象の良い行進曲です。

●課題曲5
シアンの作風に似た螺旋階段のような作風はまさしく「躍動する魂」です。
いろいろなテーマがいろいろな螺旋階段の階層にちりばめられていて、
それが形や音色を変え発展し、何度も出てきます。

一つの拍が八分音符でできているのも、楽曲の緊張感のあるエネルギーを表しています。

曲は、幻想的なスタートから始まり、緊張感のあるテーマ(このテーマは何度も再現されます。)に移り、
その緊張がやがて緩やかに緩和されます。
しかし、また緊張感のあるテーマが始まり、それはやがて激しさへと発展します。
その繰り返しが、まさに人間の心の躍動を表しています。

 

(C)2009 Masanori Fukuda
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