開幕戦データから見る2001年の傾向

フェラーリの進化、マクラーレンに迫るウィリアムズ、ミシュランは高速コーナー得意、BMWが最速エンジン

2001.3.11

1996年からオーストラリアGPが開幕戦となり、メルボルン、アルバートパークサーキットで開催されて6回となりました。公道を使うコースは特殊ですが、その結果から1年間を占うことが可能です。データから、2001年の傾向を探ります。

 

4年ぶりのタイヤ戦争で速度大幅アップ

メルボルンでの6回の予選から、平均速度がどのように変遷したかを見ます。

2001年は、ブリヂストンとミシュランによるタイヤ戦争が勃発。タイムが急激に速くなり、ついにコースレコードが更新されました。

タイヤメーカーが競争すると、素材や製法などで性能が大幅に向上します。このことは1997年、グッドイヤーにブリヂストンが挑戦した年もそうでした。

1998年は車幅が狭くなり速度が抑えられました。1999〜2000年はブリヂストンのワンメイクになり、予選タイムは横ばいになりました。

トップチームとそれ以外のチームの差は、1996〜99年に比べ、2000年にもっとも狭まりました。2001年に少し広がっています。

 

マクラーレンはフェラーリに抜かれ、ウィリアムズに迫られる

1996〜97年はウィリアムズ全盛時代。1998年以降はマクラーレン帝国時代でした。しかし2000年からフェラーリの時代に変わりつつあります。左のメルボルンでのグラフはそれを表しています。

マクラーレンはこの6年でドライバーが不変です。フェラーリは2000年にアーバインからバリチェロに代わったのみです。これに対しウィリアムズは7人のドライバーが乗る変わり様です。

2001年にフェラーリの進化はマクラーレンを追い抜きました。一方、復活の兆しを見せるウィリアムズも急激に向上し、マクラーレンに迫る勢いです。

ウィリアムズは1997年にニューウェイが抜け、1998年の狭い車幅に対応しきれず、いったん低迷しました。その後ようやく若い技術者が育ってきたようです。

向上度の差でわかる進化が鈍いチーム

2000年と2001年で全チームが速度を大幅アップしました。チームの予選最速を並べると、上昇角度の差が出てきます。

フェラーリとウィリアムズがもっとも急な上昇ぶりで、それに比べてマクラーレンはやや鈍っています。

ジャガーはBARとザウバーに抜かれました。ベネトンは全チーム中、もっとも進しなかったところで、プロスト、アロウズに抜かれました。

わずかな上昇角度の差が、グランプリでは大きな結果の差となります。


セクター別順位でわかるミシュランの特徴

2001年開幕戦の予選順位を、3つのセクター別に分けました。ここで知らされたのは、ミシュランを履くウィリアムズとジャガーが、セクター2が速いということです。ラルフがセクター2の1位、モントーヤが4位、不振アーバインですら6位です。ブルティもセクター2は向上しています。

セクター1と3は低中速コーナーがありますが、セクター2はそれがない高速区間です。したがってミシュランは高速コーナーで速いと言えそうです。同じミシュランのベネトンが高速のセクター2で遅いのは、後述の理由と思われます。

PP争いは、ハッキネンがセクター1、2で最速を誇りながら、セクター3だけでシューマッハに敗れました。バリチェロはセクター2で遅かったのですが、セクター3で挽回。フェラーリが低中速を得意としていることがわかります。

21歳の新人ライッコネンは、セクター1、2でハイドフェルドを上回っています。第2戦以降が楽しみです。


最高速ではBMWトップ、ホンダ平凡、ルノー遅し

2001年メルボルン予選での最高速度から、ドライバー別にランキングを作りました。指標は平均に対する差(km/h)です。BMWエンジンが圧倒的な速さで1−2位を占めました。決勝ではブローするなど信頼性に欠けますが、今年BMWがリスクを負ってもチャレンジする姿勢が見られます。メルセデスは重量増になりながらもパワーは確保。フェラーリエンジンユーザではパワーに頼るプロストとそうでないザウバーの差が表れました。ホンダは思ったほど伸びていません。ルノーはフォード3年落ちのミナルディといい勝負で、ベネトン不調はエンジンのせいと思われます。

ドライバー チーム エンジン 指標
1 モントーヤ WIL BMW +7.1
2 R・シューマッハ WIL BMW +6.6
3 クルサード MCL MER +3.1
4 ハッキネン MCL MER +3.0
4 アレジ PRO ACE +3.0
6 フェルスタッペン ARR ASI +1.9
7 M・シューマッハ FER FER +1.5
8 ビルヌーブ BAR HON +1.3
9 マッツァカーネ PRO ACE +1.1
10 ベルノルディ ARR ASI +1.0
11 パニス BAR HON +0.6
11 アーバイン JAG FOR +0.6
13 トゥルーリ JOR HON -0.2
14 バリチェロ FER FER -0.3
15 フレンツェン JOR HON -0.5
16 ブルティ JAG FOR -1.5
17 ライッコネン SAU PET -2.9
18 ハイドフェルド SAU PET -4.0
19 アロンソ MIN EUR -4.2
20 バトン BEN REN -4.5
21 フィジケラ BEN REN -6.1
22 マルケス MIN EUR -6.6

 

 

ラップチャートでわかる速さと遅さ


レースのラップチャートを、最初と最後を除いて10%ごとに平均したものです。ハッキネンは20周目からM・シューマッハとの差が広がりました。これはリタイヤ理由となったサスペンショントラブルのせいではなく、マシン性能の差と思います。このころ、シューマッハのタイムもハッキネン同様、波がありました。ハッキネンはリタイヤ直前に最速ラップ5位を記録しています。サスペンショントラブルはジョイントの突然離脱であり、途中から影響を受けたものではないと思います。

ブリヂストンタイヤはM・シューマッハがピットイン直前に最速ラップ1位を記録するあたり、耐久性は良好でした。一方、ミシュランもモントーヤがリタイヤする直前に最速ラップ4位を記録するなど磨耗は問題ありませんでした。モントーヤは予選11位でラルフより1秒遅かったのですが、リタイヤ時に3位まで上がっていたことにしぶとさを感じます。ミシュランの弱点は序盤数周のグリップ不足で、ラルフ、モントーヤともに順位を落としました。

フレンツェンはバリチェロと接触しなければ3位になれたでしょうか。最速ラップでバリチェロに1秒も遅いため、それはなかったと思います。アレジは途中多くのライバルに抜かれ、ひたすら完走を目指したということがわかります。プロストはやっぱり苦しいようです。